少し前、精神科医の香山リカ氏がかわいい絵柄の女の子のキャラクター、いわゆる「萌えキャラ」が、性犯罪につながるのではないかと発言して、問題になっていました。この手の意見は、一定期間ごとに繰り返し出てきますね。もっとも、とくに根拠はないようですが。
私自身は萌えキャラについて、逆の感覚を持っています。むしろ、青少年の草食化を表しているのではないかと思うのです。
■物語の形が変わった
マンガにせよ、小説にせよ、男性向けの物語であれば、魅力的な女性が描かれるのが普通です。以前は、それに合わせて男性がでてくるのが普通でした。男性読者は、そのキャラクターの行動に感情移入して、登場人物たちの関わりを楽しんだものです。
ところが最近、そうした形式に当てはまらない物語が増えてきました。明らかに男性を対象にした作品なのに、かわいい女の子たちが出てくるだけで、男性が全く出てこないものがあります。
実は、女性にも同じ流れがあります(むしろ、こちらのほうが先かもしれません)。いわゆるBL(ボーイズラブ)ものです。
BLで描かれるのは男性同士の恋愛。女性を対象とする作品でありながら、女性はほとんど出てきません。
■「私」はどこにいるのか?
ファンの人たちは作品への愛を熱く語っているのですが、その世界には「私」を託す登場人物がいません。「私」抜きで、作品の外から見ることに特化した愛情。
これをどう考えるかは難しい問題です。単に視聴者が成熟して、工芸品のような「作品」として、物語を眺めるようになったせいかもしれませんから。
しかしそれが、感情移入を避け、恋愛や人生との関わりを薄くする態度の現れだとしたら、草食化の流れはまだ止まらないのかも…。
考えすぎでしょうか?