健康の話、あれこれ

2016年

11月

27日

なにもないところで、つまづくのはなぜ?

 普通に歩いているだけなのに、つまづくこと、ありませんか? それも、なにもないところで。なぜでしょうか?

 

■原因①足が上がっていない

 お年寄りに多いのが、このタイプです。

 私達が歩く時には、足を持ち上げて前に出しますね。この動作を行っているのが、体幹部にある大腰筋と腸骨筋、合わせて腸腰筋と呼ばれます。

 この筋肉が弱ってくると、思っているよりも足が上がらず、地面(あるいは、小さな障害物でも)に接触してつまづいてしまいます。

 高齢になってからの転倒は、骨折の恐れも高いので、気をつける必要があります。
 予防のためには、膝を高く上げる運動がオススメ。テーブルや壁に手をついて膝を上げる足踏みなら、室内でも手軽に行うことができます。

 

■原因②つま先が上がっていない

 比較的、若い人に多いのがこちらの原因です。
 膝を持ち上げていても、つま先が下がったままなので、地面に接触してつまづいてしまうのです。

 ちょっと試してみましょう。  
 座った状態で、下腿を垂直に立てて、つま先を持ち上げてみて下さい。つま先が、くるぶしよりも高くなるのが正常です。それより低い場合は、なんらかの理由で足首の動く範囲が狭くなっているものと考えられます。

 原因になっている場所は、いわゆるアキレス腱伸ばしの体勢をとると、わかります。

・筋肉が原因の場合
 ふくらはぎにつっぱり感がある時には、そこの筋肉が固くなり、伸びていないことが原因。運動不足の人に起こりがちです。

 この場合には、一日に一回、アキレス腱伸ばしのストレッチ(実際には、伸ばしているのはふくらはぎの筋肉ですが)を行うと、つま先が上がるようになり、つまづきを防げます。

・関節が原因の場合
 足首に固さや違和感がある時には、足首の関節が固くなっています。ねんざの後遺症や、座り仕事での足のむくみが原因になることが多いのです。

 足首を柔らかくする方法としては、このホームページの「足の治療」にある体操が有効です。それでも動きが固い場合には、足関節で強い癒着が起きている事が考えられます。専門的な治療をご検討下さい。

2016年

11月

17日

NHKガッテン 11月16日「NASA直伝 魅惑のアンチエイジング」について

 今回のガッテンは、NASAが発表したという若返り・老化予防の鍵について。面白い内容でしたねえ。

 NASAによると、重力のない宇宙では、筋力低下、骨密度低下、認知機能や免疫力の低下まで、あらゆる老化現象が起こります。

 

 これまでは、そうした影響は、無重力によって骨や筋肉に刺激が加わらないために起こるとされていました。

 ところが最近になって、宇宙での老化には「耳石」が関わっていることがわかってきたというのです。

 

■重力を感知する「耳石」

 耳石は、耳の中にある石のようなもの。その重さを神経で感じ取ることによって、重力の方向を知ることができます。その耳石の反応を元に、人間は姿勢を保つことができるのです。

 つまり、全身の筋肉や自律神経は、耳石から来るデータを元に活動しているということ。

 

 宇宙では、重力がないために、耳石が反応しません。すると、全身の自律神経、筋肉、骨などにデータが行かず、衰えてしまうのと言うのです。

 地上でも、じっと座っているだけで動かない状態が続くと、耳石が反応せず、身体が衰えてしまうとのことでした。

 

 そこで、30分に一度、立ち上がるようにするだけで、中性脂肪や悪玉コレステロールが減った、というのが今回の番組内容でした。

 

■「立つ」ことの健康的意味

 これまでは、立つことの意味は、筋力を鍛え、同時に余分なエネルギーを消費していることによるとされていました。それが、耳石という感覚器官が働いていることによる、というのは面白い発見です。

 

 そうなると、その先が気になってきます。

 自転車やオートバイに乗っている人は、車に乗っている人よりも認知機能が衰えにくいとされているのですが、それはバランスをとるという動作で耳石が働いているためだろうか、とか。

 

 中国の健康法にある站樁(たんとう。樁の字は、椿に似ているが別の字。站椿と書かれることも)。日本では立禅と言われることもあります。

 一つの姿勢で、微妙なバランスを取りながらじっと立ち続ける健康法は、これによるものだろうか、とか。

 実際、站樁には自律神経を整える効果があるとされています。また、私が熱心にやっていた頃には、運動量からいえば不思議なほど、体重が減って、驚いたのを覚えています(ダイエットに最適?)

 いろいろなことがわかってくるのは、本当に面白いですね。

2016年

11月

15日

予約殺到スゴ腕の専門外来SP11月15日

 日本全国の名医を紹介するこの番組。肩こりやヒザ痛、眼瞼下垂などの名医が出ていました。

 今回、興味深かったのは、肩こりの原因として、肩関節の癒着が紹介されていたこと。

 

■肩コリの原因は、関節の癒着

 東京女子医科大学の、神戸克明医師がゲスト。肩こりを、肩甲骨や肩関節の動きを改善する方法で治療をしている方、とのこと。

 テレビ的に新しかったのは、肩こりや、肩関節が動かなくなるフローズンショルダーの原因を、関節内の癒着としていたことです。

 テレビで関節内の癒着に言及していたのは、私が知る限り初めて。これまで関節の癒着を主張してきた八起堂としては、嬉しいかぎり。

 

 テレビでは、癒着をとるための治療として、関節内視鏡の手術を紹介していました。炎症による癒着と、骨の異常な出っ張り(骨棘)を削ると、肩の動きがかなり改善していました。

 

■手術の前に試して欲しい、手技療法

 先生は「手術はかなり重くなってからの治療で、もっと早く相談してもらえば、他の方法もあります」と発言していました。残念ながら番組内では、「他の方法」が何かには言及していませんでしたが、手技療法もその一つではないかと勝手に考えています。

 肩関節の癒着は、手技療法でもとることができます。
 八起堂のTAM手技療法も、その一つ。さすがに骨棘を削ることはできませんが、軽い癒着なら、手技療法だけでも十分に治療可能です。

 しつこい肩こりに悩んでいる方、肩の動きが悪くて困っている方、一度ご相談下さると幸いです。

2016年

11月

15日

11月14日「名医のTHE太鼓判 国民の常識が変わるスペシャル」

 仕事がら、健康番組は一応チェックしています(早回しですけど)。ただチェックするだけではもったいないので、気がついたことなど書いていこうと思います。

 さて、表題の番組ですが、いろいろな健康知識を出して、出席した医師たちに評価してもらう、という番組でした。

 何人もの医師が出るので、全体としてバランスのいい番組でした。常識が変わるスペシャルという題名でしたが、むしろきちんとした常識を踏まえた番組だったと言えるでしょう。

 個人的には「体温が高いほうが健康によいという明確なデータはない」という話が印象的でした。体温が高いほうが、免疫力が高くなりそうな気がしていたのですが。

 少食にすると(つまり、エネルギー消費が少ないと)長生き、という話と共通するのでしょうか?

 

■オリンピック選手も実践 腰痛ストレッチ

 腰痛については、番組の最後にちょっと触れただけでした。

 新聞の番組欄ではストレッチでしたが、腹筋を鍛える方法が中心。
 膝を曲げた状態から腹筋をするという普通の方法で「腹筋によってコルセットを作る」というのがその論旨でした。

 

 昔は、この「筋肉でコルセット」は腰の椎間板を保護すると考えられていました。

 実際には、ほとんどの腰痛は、椎間板に原因がないことがわかっているので、腹筋コルセットは、姿勢の崩れを防いで腰の筋肉の負担を減らすと考えるほうが良さそうです。

 

 ただし、以前も書いたように、腰痛のほとんどは緊張が抜けないことによる痛み。患者さんを治療するときも、まずは腰の緊張を緩めると、かなりの方で痛みが軽減します(もちろん骨盤…仙腸関節の調整もします)。

 鍛えるだけではなく、一度力を入れたら意識的に脱力して、緩ませることも必要です。

2016年

11月

09日

マッサージ後の眠さ、だるさの理由は?

 マッサージを受けたことのある方はご存知だと思いますが、施術の直後からだるくなったり、眠くなったりすることがありますね。

 マッサージで疲れたのか? とお考えの方もいらっしゃると思いますが、心配いりません。

 これは、回復の段階に入ったことを示しています。

 

■眠くなるのは、緊張がとけたから

 肩こりや腰痛は、筋肉の緊張がゆるまない状態です。固くなった筋肉が血管を圧迫するために血行が悪くなり、その痛みがさらに緊張を悪化させます。

 そこで適切なマッサージを受けると、筋肉の緊張が抜け、緩みます。
 筋肉がゆるむと、それまで固かった身体が柔らかくなるので、ぐにゃぐにゃと頼りなく、重く感じます。それが施術後の「だるさ」です。

 

 眠気も、筋肉のゆるみによって生じます。
 筋肉にコリや緊張があると、感覚神経から脳に緊張の信号が送られ、脳も緊張状態になります。「身体が疲れているのに眠れない」というのがこのケースです(緊張は、不眠の原因のひとつ)。

 施術で筋肉がゆるむと、筋肉からの緊張信号がなくなるので、脳は開放され強い眠気を感じるのです。

 

 つまり、マッサージ後の眠い、だるいは筋肉がゆるんできた証拠。血行が戻り、回復のプロセスが始まったことを示しているのです。ほとんどの場合は1~2日で終わりますので心配はいりません。

 

■いわゆる「もみ返し」は注意

 もまれた部分がひどく痛んだり、腫れたりする場合は、ほとんどが無茶な揉み方をされた場合です。

 不慣れなマッサージ師では、コリが固いと、つい力を入れすぎることがあります。そうなると筋肉の組織が潰れて、腫れてくるのです。それが、もみ返し。

 強すぎる揉みは、緊張を解く効果がないだけでなく、繰り返すうちに筋肉組織が繊維組織に置き換わって固くなり、揉んでも治らなくなることも。

 弱く、根気よくマッサージをするように頼むか、施術者を変えることをおすすめします。

2016年

11月

06日

骨粗鬆症対策に! 骨折を防ぐビタミン

 先日、郵便局に行ったら、中で骨密度の測定サービスを行っていて、驚きました。

  「歳をとっての骨折は、寝たきりに直結する!」ということで、骨密度の測定サービスが盛んになっているようです。

 

 測定するのは、骨の中のカルシウムの量。カルシウムが多いほど、骨が強くなり、折れにくくなるというのがその理由です。

 でも、骨を強くする方法は、カルシウムだけではありません。
 骨を強く、しなやかにする簡単な方法をご存知でしょうか?

 

■骨をしなやかにするのは、コラーゲン

 骨というと、カルシウムでできていると考えがちです。しかし、骨の成分でカルシウム(リン酸カルシウム)の割合は、60%程度。残りのほとんどは、水とコラーゲンです。

 コラーゲンは、水分を含み、弾力ある組織を作る性質があります。美肌成分として有名ですね。それが骨でも役立っています。

 

 カルシウムは固いのですが、柔軟性がありません。それを補っているのが、水分とコラーゲン。曲がりやねじれに耐え、衝撃を吸収して、骨折から守ってくれるのです。

 年齢を重ねると、骨のカルシウムが減るだけでなく、コラーゲンが弱ってくることがあります。そんなときに強い力を受けると、骨は衝撃を受けとめ切れず、ポッキリと折れてしまいます。

 骨折を防ぐためには骨のコラーゲン繊維を正常に保つ必要があるのです。

 

■ビタミンB群で骨の強化!

 では、骨のコラーゲンを強くするために何をすればいいのか。実は、その方法は簡単。ビタミンB6、B12、葉酸を摂取するだけです。

 

 これらのビタミンは、コラーゲン繊維を弱くするホモシステインなどの生成を防いで、弾力ある骨にしてくれます。

 外国で行われた実験では、これらのビタミンをつづけて摂取することで、骨折する率が8分の1になったそうです。

 

 しかもこのビタミンは、極めて安価な「ビタミンB群」のサプリメントでとる事ができます。どこの薬局でも二ヶ月分を400~500円程度で買えます。また、危険な副作用もありません。

 骨のために、カルシウムと一緒にいかがでしょうか?

2016年

9月

13日

大阪人は「粉もん」を食べても太らない?

 前回、低炭水化物ダイエットの話を書きました。

 確かに、炭水化物は肥満の要因の一つではありますが、食べたら必ず太る、というわけではありません。

炭水化物が好きでも、太っていない人はたくさんいるのです。

 

■大阪人は、「粉もん」を食べて、なぜ太らない?

 大阪といえば、たこ焼き、お好み焼きなどの「粉もん」。うどんも好きで、うどんに白飯を添えた「うどん定食」が存在します。

「大阪人にヨウ素液を掛けたら青紫色になる」
 と笑いのネタにされるほど、炭水化物好きの大阪人。だから太っている人の比率が高いと思ったのですが…違いました。

 

 肥満が多いのは、まず沖縄。それから、東北と九州の県。
 大阪は中間グループで、思ったほど高くはありません(厚生労働省「都道府県別の肥満及び主な生活習慣の状況」より)。

 

 粉もんを好んで食べるのに、なぜそれほど肥満者が増えないのでしょうか? 食生活からヒントを探してみます。

 

■野菜で炭水化物の吸収を防いでいる?

 炭水化物が脂肪になるのは、血糖値が急速に高くなったときです。

 炭水化物(ブドウ糖)が一気に吸収されると血糖値が急上昇。これを「血糖値スパイク」といいます。
 膵臓からインシュリンが分泌されて、多すぎる糖分を脂肪細胞に取り込みます。
 逆にブドウ糖の吸収がゆっくりだと、すぐに消費されるので、血糖値が上がらず太りにくくなります。(糖質スローオン)

 

 この原理を利用したのが「野菜を先に食べるダイエット」。食物繊維が多い野菜を先に食べ、あとから炭水化物を食べることで、消化吸収を遅らせる方法です。
 一時期流行した「低GIダイエット」も、ほぼ同じ原理。

 

 粉もんを食べながら太らない大阪人は、食物繊維をたくさん摂っているはず…! と思って調べたら、野菜の摂取量は最下位に近いところでした。食物繊維説、大失敗。

 

 ほかに何かヒントはないかと統計をパラパラ見ていたら、調味料の項目に目が留まりました。大阪は、砂糖と塩の消費量が、どちらも最下位グループなのです。

 

■料理の砂糖がキー?

 関西は薄味文化。塩分を控えめに、ダシの旨味で料理の味を調えます。この場合、砂糖はそれほど必要ありません。

 逆に、塩分の多い味付けをする地方では、味のバランスをとるために砂糖を大量に入れなくてはなりません。
 砂糖のような糖分、しかも水溶液は吸収されるのが早く、血糖値を上げやすいのです。

 

 料理に大量の砂糖が使われていると、まず砂糖から吸収され、血糖値を上げます。そこにご飯が消化されたブドウ糖がやってくるのですから、血糖値はさらに上昇。血糖値スパイクが起きて、脂肪に変わる量が増えるわけです。
 ファストフードと甘いソフトドリンクの組み合わせが太るのと同じ原理ですね。

 

  ということで、大阪で肥満がそれほど増えないのは、砂糖の少ない薄味によるものだと考えられます…確証はありませんけど。

 炭水化物が大好きな人(私もそう!)は、ダイエットが必要になったら、まず食事から砂糖を減らして薄味にするところから始めるのはどうでしょうか?

2016年

9月

07日

低炭水化物ダイエットで痩せるわけ

 前回、低炭水化物食とアスリートの関係を書きました。

 身体に蓄えられるエネルギーの量で言うと、脂肪は炭水化物の70倍。低炭水化物状態に慣れ、「脂肪を使う能力」を高くすれば、長距離をバテず走れる、という話でした。

 こういう話が出ると、どうしても低炭水化物ダイエットに触れないわけにはいきませんね。

 安全性に対する疑問など諸説ありますが、脂肪を使う能力に着目すると、けっこう合理的なダイエットかもしれません。

 

■低炭水化物で、燃料を切り替える

 身体にとって、炭水化物は非常に使いやすい燃料です。
 それに比べると、脂肪は分解に手間がかかる分だけ、使いにくい燃料。

 

 脂肪と炭水化物の両方があれば、身体は炭水化物を優先的に使います。
 仮に、脂肪を使う能力が低いまま炭水化物をとると、炭水化物ばかり使って、脂肪は少ししか使われません。

 もともと少ない炭水化物を使い切ったところで空腹感が出るので、食欲が出ます。そこで大量に炭水化物をとると、余った炭水化物は、脂肪に変換(以上、繰り返し)。

 

 低炭水化物食を続けると、グルカゴンや、リパーゼがよく働くようになり、脂肪を使う能力が上がってくると考えられます。

 血糖値の上下が小さいので、極端な空腹感が出にくいのと、ストレートに脂肪を使える分だけ、体重の落ちが早くなると考えられるのです。

 

■低炭水化物の方が、健康に良い?

 この、脂肪を分解する能力というのは、意外に大事なんじゃないかと思い始めました。

 

 悪玉コレステロールの量は、脂肪を食べる量よりも、炭水化物の量に比例するという説があります(根拠は未確認)。

 以前は「脂肪を食うから脂肪が増えるんだろ!」と思っていたのですが「脂肪を使う能力」を考えるようになってから、考えが変わりました。

 

 体内の脂肪を減らすには、使い切るしかありません(実際には、食物繊維で腸から出す方法もありますが、それは次回)。
 だったら、脂肪を使う能力が高い人の方が、ちょっとした減食で血管や内臓の脂肪を減らすことができるはず。

 低炭水化物食は、結果として内臓脂肪や血管の脂肪も減らせることになります。

 

■多すぎれば、なんでもダメになる

  私は低炭水化物ダイエットには否定的だったのですが、今回書いたようなことを考えた結果、場合によってはアリだなと思うようになりました。

 

 ただ、ダイエットの原則はあくまで「食べた量よりも、使う量が増えると、痩せる」というもの。 

 低炭水化物ダイエットが「炭水化物だけ抜けば、何をいくら食べても大丈夫」と誤解されることがありますが、さすがにそんなことはありません。あくまで減食が基本です。

 脂肪を使う能力が上がったところで減食すれば、効率よく痩せるというくらいに考えておくとよいでしょう。

 

 ただし、前回も書いたように、長期的な安全性は確認されていません。実行する際には、そのことも考えて注意してください。

2016年

9月

02日

炭水化物と脂肪。どっちが走れる?

 前回書いた通り、「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ」の感想から。

 現在、長距離を走るアスリートは、炭水化物を中心にしたエネルギーで走るのが主流です。
 しかしこの本の主張は違います。長距離を走るアスリートは、脂肪を使って走るべきではないか、というのです。

 その論拠となるのは、体内の量。
 炭水化物は身体に蓄えられる量が限られているので、ある程度走ると使い切ってしまいます。そこでドリンクなどの補給が必要になるのですが、脂肪として蓄えられるエネルギーは、炭水化物に比べると、莫大といっていいほどの大きさ。

「君の身体には、活用できるエネルギーが16万キロカロリーある。約2千が糖質から、2万5千がタンパク質から、そして14万、実に87%が脂肪からだ」(p.362)

 著者のマクドゥーガルは、このアドバイスにしたがって、炭水化物抜きで本当に走れるようになるか、実験をしました。

 最初の数日は、半マイル(800メートル)も行かないうちに低血糖でフラフラになっていましたが、しばらくすると身体が慣れてきて、元気に走れるようになっていたとのこと。

 著者以外にも、何人ものスポーツ選手が、炭水化物抜きの食事によって好成績を出した、と書いています。 

 

・・・ここからは、八起堂の感想です。・・・

 

■炭水化物を使う方が走れる?

 上に書いた通り、現在のアスリートは、炭水化物を使って走るのが主流です。それは、炭水化物がきわめて使いやすい燃料だから。
 体内に吸収された炭水化物(糖)は、そのまま筋肉などで使えます。

 脂肪は大量に蓄えられますが、そのまま燃やすことはできません。膵臓からのグルカゴン(脂肪の分解を促すホルモン)、脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼ(脂肪分解酵素)などを使って、脂肪酸に分解しなくてはならないのです。

 炭水化物と脂肪を使って走る比較も行われていますが、いくつもの実験が炭水化物の方がよく走れるという結論を出しています。

  でも確かに、脂質を中心に長距離を走る人がいる…。
 それをどう考えるか…?

 

■脂肪を燃焼させるには準備がいる

 私は、この結果の差は「身体の準備」によるものだと考えています。

 上に書いたように、マクドゥーガル氏が炭水化物抜きの生活を始めたとき、最初の数日はすぐに低血糖で動けなくなっていました。しかし、慣れると走れるようになり、二週間するとかなり動ける身体になっていました。

 

 脂肪を使う前に分解が必要なのは、上に書いた通り。分解の速度が運動量に追い付かないと、エネルギー切れを起こします。

 しかし、意図的に低血糖の状態を続けることで、グルカゴンやリパーゼの働きを高めていたとしたら? 次々と脂肪を分解して燃やし、効率よく走れます。

 つまり、ある程度の時間を使って身体を変えていれば、脂肪を使って好成績を出せるというわけです。

 

■補給ができる条件かどうか

 ただ、必ず脂肪の方が良く走れるということもありません。
 炭水化物は体内に蓄えられないのが欠点ですが、補給さえあれば、その欠点は補えます。

 古い話では、明治期、日本にやってきたベルツ博士の体験談。
 博士が出会った人力車夫は、米、芋、麦など炭水化物中心の食事で110キロを14時間半で走っていたとのこと(ちなみに肉を食べればもっとスタミナがつくかと肉を食べさせたら、身体が重くて走れなかったそうです)。

 当時の主要な街道には、十数キロごとに宿場町があり、その間にも茶屋などがあったので、カロリー補給ができたんですね。

 現在も、ドリンクなどで補給できることを考えれば、かならずしも脂肪に切り替える必要はないように思われます。 

 

■積極的には勧めない。でも、試してみる価値も…

 脂肪を使って効率よく走る。長距離ランナーにとって、魅力的な話です。ただ、危険があるという説にも耳を傾ける必要があります。

 

 低炭水化物食は、心臓や肝臓を特殊な状態に置くので、長期的には健康に悪いという説もあるのです。脳が低血糖状態に置かれるので、落ち着かなくなったり、イライラしたりするという説も。
 また、脂肪が多すぎる食事は、膵炎の原因にもなります。

 個人的には、食べられる食品群が限られることで、栄養素の偏りが心配です。

 

 もう少ししたらはっきりしたデータも出そろうと思うのですが、現時点では、積極的におすすめはできません。

 ただ、短期間なら危険がないことはわかっています。長距離を走るスポーツ選手なら、一度試してみる価値はありそうですね。

 

2016年

8月

31日

「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ」読了

 ここしばらく読んでいた本が面白かったので、その紹介です。

 第二次世界大戦中、イギリス軍は対ドイツ戦の一環として、ナチス将軍の誘拐を計画しました。舞台はギリシャのクレタ島。地元レジスタンスの協力を得て、ナチスを出し抜き、道無き道を逃げ切る…。

 その実話を軸に、筋膜による運動、炭水化物を排除した食事、ナチュラルムーブメントなどの、身体理論が解説される本です。

 

 正直に言って、読みやすい本ではありません。

 文章自体は平易なのですが、第二次大戦中の誘拐劇と、その逃走ルートをたどる現代の視点、関係する身体理論のドキュメンタリーと、3つの視点が秩序なく入り混じって、注意深く読まないと、振り回されます。

 

 ただ、本の内容は非常に面白いものでした。とくに、身体理論に関してはいろいろと考えさせられることも多かったので、次回から何回かに分けて感想を書きます。


 

2016年

7月

11日

完全食と、現実主義

 ネットのwiredで、アメリカの「ソイレント」という合成食品のニュースを読みました。(→リンクこちら

 たった一つの食品で、すべての栄養をまかなうことを目指して配合された食品です。

■完全栄養食、ソイレント

 栄養食というと、大塚製薬のカロリーメイトを思い出す人が多いと思います。しかしカロリーメイトは脂肪が多く、タンパク質が少ない構成で、食物繊維もほとんど入っていません。これは、お菓子としてのおいしさを追求したためです。

 

 今回話題のソイレントは、カロリーやビタミン、ミネラル、その他多くの栄養素を完全に理想的に合成したもの。本当に、これだけを食べて生きていこうという食品です。

 元々は、貧乏な研究者が、食費を浮かせようとして考えたとのこと。必要な35種類の栄養分をそろえるだけなので、一ヶ月あたりの食費が50ドルになったといいます。

 ちなみに味は、WIREDの記者によると
「水で薄めたホットケーキ生地のような感触で、不快な味とは思わなかった。まずくはない」
 だそうです。

 

■食事は何のためにある?

 開発者は、食事には、二つの目的があると主張します。栄養摂取のための食事と、味やコミュニケーションを楽しむ食事の二種類。
 それは一方に限定する必要はなく、使い分ければ良いというのです。

 また、環境問題を考え、将来的にはこれを植物性の産物だけで作り上げるとも言います。

 ファストフードで欠かせない肉や乳製品は、実は多くの水と穀物を消費します。それをソイレントに置き換えれば、地球環境への影響も少なく、人口が増えても飢餓の可能性を減らせるとしています。

 

■現実的な方法論の提示

 もちろん、この食品を「食文化の破壊」と批判することはできるでしょう。それだけで本当に健康が保てるのかという問題もあります。

 すべての人が健康的な食生活に関心を持ち、お金と時間と手間をかけることが、理想的なのは確かです。しかし、それが現実的に難しいのは、身の回りを見れば、わかりますよね。

 難しいからこそ、ファストフードやジャンクフード、カロリー過多の食生活で、健康を害する人がでてくるわけで。

 人を変えるよりも、方法を変えるほうが簡単です。
 この完全栄養食は、現実主義から生まれた策だと言えます。少なくとも、コンビニ弁当やファストフードだけで暮らすよりは、よほど健康を害する人が減るはず。

 

■治療の世界でも同じ

 これは、私たちのような治療の世界でも同じ。

 腹八分に食べて、適度に運動して、姿勢や体の使い方に気を付ければ、健康を害する可能性は、かなり少なくなります。
 でも、それを世の中の人、全員に意識してもらうのは、無理ですよね?

 

 人によって時間をかけるべき点は異なりますし、健康に関しての知識や技術が不足しているなら、それを別の人間が補う、という方法は、あって良いはずです。
 個人的には、ソイレントはあって良い食品だと思います。 

 

 とりあえず、一回は食べてみたい。続けて食べるのは無理かもしれないけど。

2016年

6月

18日

肩こり腰痛は、体幹のイメージから

 人間には本能的な動作は少なく、環境や意思によって後天的に得る動作のほうが多い、というのが、前回の話でした。

 今回は、後天的な環境に合わせたはずの動きが、なぜ腰痛や肩こりを起こすのかについて。

■肩こり、腰痛の原因は、体幹が動かないこと

 人類の歴史をみると、採集や狩猟で、一日歩き続ける生活を続けてきたようです。立ち続けたり、座り続けたりという現代人の生活は、そもそも不自然で、それが健康をそこなう元になっているわけです。

 デスクワークでも立ち仕事でも、使うのは主に肩から先だけですし、足は立っているだけ。体幹部は、手足の土台として動かさないことが多いのです。
 動かないままの体幹部は、緊張が解けず痛み出す…これが、肩こり腰痛です。

 重労働をしない生活では、体幹部の力を使わなくても、手足を動かすだけで事足りてしまいます。後天的な生活の中で、体幹部を使う方法を身につける機会がないのですね。

■急に話は飛びますが

 「站椿(たんとう。別名、立禅)」という稽古があります。もとは中国の武術・健康法ですが、少し膝を曲げ、手はものを抱えるような形にして立ち続け、身体の感覚と向き合う練習です。 

 練習中、体幹をゆるめ柔らかく保つと、バランスをとる小さな動きの繰り返しで体温が上がり、早足歩きくらいに呼吸が上がってきます。

 体幹部が動いて、これだけのエネルギーを使うのが、本来の姿というわけです(余談ですが、この揺れる站椿を毎日続けると、はっきり体重が落ちます)。

 「体幹部は動く」というイメージがはっきりしてくると、肩も背中もやわらかくなってくるようです。

■そこで最近の治療では

 癒着をとるだけではなく、固まった筋肉に動きをつけてやる操作をしています。

 痛みの改善率が上がるだけでなく、何回か通ってくださった方では「腰痛が起こらなくなった」とおっしゃってくださることが増えました。
 筋肉が柔らかさを思い出すのでしょうか。

 こり、腰痛でお悩みの方。
 立ち仕事、座り仕事は減らせないかもしれませんが、体操でもなんでもやってみて、体幹部の動きを思い出すのはいかがでしょうか?

2016年

6月

14日

人間にとって「自然な動き」とは何か

 先日いらしたお客さんと、肩こりや腰痛の原因について話している時に、

「人間にとって、本当に自然な動きは、どんなものだろう」

 という話になりました。

 スポーツ選手が、無理なフォームでプレーして身体を壊したり、悪い姿勢で腰痛や肩こりを起こしたりしますが、自然な動きができれば、防げるのではないか、というのが、その話。

 人間にとって、身体の方から出てくるような「自然な動き」があるのでしょうか。人間と動物を比較すると、可能性は薄いように思われます。


■本能は、便利だが不自由

 自然な動きといえば、動物。

 泳いだことのない犬を、いきなり水に放り込んでも溺れることはまずありません。本能の中に、犬かきの泳ぎ方が入っていて、練習しなくても泳げるのです。 
 その一方で、犬かき以外の泳ぎをする犬は、見たことがありませんね。


 本能というのは、反射のようなもの。
 鼻をくすぐるとクシャミをするとか、眠くなったらあくびが出るのと同じで、自動的に働きます。


 犬は、水に入った瞬間に「犬かきのスイッチ」が入ってしまいます。
 そのスイッチを自分でコントロールすることができないので、別の泳ぎを覚えることができないのです。


■人間にとっての自然は、本能ではない

 たとえて言うなら、犬の本能は、家電製品のようなもの。スイッチを入れた瞬間に使えるようになりますが、設計された時の目的以外のことはできません。


 比べれば、人間の方はパソコンです。最初からできることはほとんどありませんが、ソフト(今はアプリの方がわかりやすい?)を入れることで、幅広い仕事に対応できます。


 そう考えると、人間にとっての自然な動きは、本能から出てくるものではないと言えます。その人の環境や目的に合わせて、学習されたものが、その人にとっての「自然な動き」になってくるのでしょう。

 

…でも、「自然」なはずなのに、身体を壊す人がいるのは、どうしてでしょうか?

 書きたいことがまだあるので、この話、次回に続きます。

2016年

5月

22日

一日一分で姿勢が良くなる、意外な部分のストレッチ

 「年齢は背中に出る」と言われています。

 姿勢が悪いと、肩こりや腰痛の原因になるだけでなく、老けて見えます。逆に、背筋がスッと伸びた立ち姿は若々しく見えるもの。

 しかし頑張って背中を伸ばそうとしても、すぐ元通りになってしまう、という人は多いはず。

■背中が丸くなる原因は「かかと体重」

 実は、立ち姿は体重の位置で決まります。

 背中が丸くなる人は、足のかかとで立っていることが多いのです。かかとに体重がかかると、後ろに倒れるのを防ぐために自然に上半身を前に倒してしまいます。その結果が猫背です。

 逆に、つま先側に体重がかかると、上半身は反り、スッと背中が伸びた姿勢になります。

 以前も書きましたが、この原理を応用しているのが、女性を美しく見せるというハイヒール。かかとが高くなることで体重が足先にかかり、背筋が伸びるのです。

 とはいえ、いつもハイヒールを履いているわけにはいきませんね。男性ならばなおのこと。

■ふくらはぎを伸ばせ!

 ハイヒールよりももっと簡単に、体重の位置を変える方法が、ふくらはぎのストレッチ(筋膜リリース)。
 ふくらはぎにある腓腹筋、ヒラメ筋が伸びると、足首が深く曲がるようになります。すると体重のかかる位置が前に移動し、背中が伸びてくるのです。

 ストレッチ方法は、いわゆる「アキレス腱伸ばし」のポーズです。伸ばした状態を保ったまま、30秒静止、左右で合わせて一分間。

 直後から立ち方の変化が実感できます。もちろん、一回だけでは時間とともに戻ってしまいますが、一日に1,2回のストレッチで変化を保つことができます。

 なお、しばらく続けても足首が深く曲がらない時は、足関節が固くなっている可能性があります。「足の治療について」で紹介している足首回しを試してみてください。

 何回やってもうまくいかない時は…TAMで癒着を開放する方法も。
 どうぞ、ご相談下さい。

2016年

5月

18日

ウチの子供も固くなってきたなあ

 先日、小学生の娘の身体が固くなってきたのではないかと妻に言われ、治療しました。大きくなって身体がしっかりした分、固さも増えたように見えます。

 幼いころはむやみに柔らかく、くてっとしていたのを思い出しました。
 あんなに小さかったのに、いつのまにやら、大きくなったものです…。

 …感慨にふけっている場合ではないですね。

 2月くらいにも書きましたが、関節の癒着は、動きの少ないところで起こります。その機能は、大人でも子供でも変わらないはず。

 使わない機能が退化するという法則に従えば、大きく身体を動かす機会が多いほどに、柔らかさは持続できるはずです。確かに、身体の柔らかい子供は、むやみやたらに動いているものです。
 しかし、大人は合理的な生き物。無駄な動きや、不合理な動きをするのがイヤになってきます。ラジオ体操を一日に一回行うだけでも、身体の癒着はかなり防ぐことができます。

 TAM手技療法による治療は、患者さんの身体をいろいろな方向、角度で動かすことで、癒着をとる方法。運動を代わりにやっていると言って良いでしょう。 

 そうそう。娘も小さいころ、むやみに走り回ったり、よくわからない踊りをニコニコしながら踊っていたり、動き続けていたものでした。
 あんなに小さかったのに、いつのまにやら、大きくなったものです…。

 …あ、つい…。

2016年

5月

07日

治療院の浮気歓迎!

 先日、久しぶりにいらした患者さんが、
「他の治療院に、浮気してませんから」
 とおっしゃってくださったのですが…。

 良いんじゃないでしょうか。治療院を浮気しても。

■「何にでも効く治療」は、無い!

 昔から、「万能薬は何にも効かない」と言われています。

 治療家というのは、一人一流と言われています。それくらい、治療家によって持っている技術は違いますし、得意分野も違います。そして、一つの技術を追求すればするほど、専門的になります。

 例えば八起堂は、八起堂の得意分野は筋膜や関節の癒着リリース。肩こりや腰痛、足からの身体バランスの改善などで、かなり高度な治療ができると自負してます。
 とくに、足のねんざ後遺症に関しては、足根骨の一つ一つまで分解するように調整し、動きを改善することができます。

 その一方、リンパマッサージでは、ごく一般的な技術しか持っていません。むくみをとるなら、八起堂より優れた治療院はたくさんあります。
 さらに言えば、東洋医学は完全に専門外。「気の流れを整えて下さい!」と言われても、期待には応えられません。

 

■治療院は使い分けましょう!

 病院に行くとき、目が悪い時は眼科、鼻が悪い時は耳鼻科に行きますね。治療院も同じように、
「この痛みにはこの治療院、この不調はあっちの治療院」
 と使い分けて良いのです。

 だから、治療院は大いに浮気して下さい。ちょっと通って、合わなければやめてもいいし、気が向いたら戻っても構いません。治療院の側もそれはわかっていますから、しばらく通わなかった人が来ても、気を悪くしたりしません(逆に、それで怒るような治療院なら、お山の大将です)。

 ただ、一つだけ避けてほしいのが、力任せに揉む店。
 コリが強いからと言って、強く押しても、効きません。筋肉は、防御反応でかえって固くなってしまうからです。それでも押し込むと、筋肉がつぶれ、挫滅して繊維化を起こしてしまいます。

 使い分けていい。でも、信頼できる治療院を選んでほしい。

 それが、お願いしたいことです。

2016年

4月

19日

ハイヒールを履いても外反母趾にならない方法

 ハイヒールが外反母趾を起こすのは、足先の締め付けによるものとされています。親指が、外側に向かって押しつけられるからです。しかし実際には、もう少し複雑なメカニズムがあります。

■指の筋力が、関節を変形させる

 足の親指を曲げる筋肉は、主に足の裏にあります。この筋肉が、腱を引っ張り、その先にある指を曲げるのです。
 この腱は、正常な状態では、指の真下を通っていて、まっすぐに指を曲げます。

 さて、ここで先のとがったハイヒールを履くとどうなるか。

 足の親指は、根本から大きく外側に曲げられ、腱の付着部も外側にズレます。こうなると、指を曲げるはずの筋肉の力は、ズレた腱によって指を内側に向けて引っ張ることになります。

 とくにハイヒールは、普通の靴にくらべて指先の加重が大きくなっています。普段より強い力が、足指を外側に曲げるために使われるのです。外側に引っ張る力は、曲がれば曲がるほど大きくなるので、外反がある程度まで進むと、一気に進行します。

■外反母趾を防ぐ歩き方

 それでも、ハイヒールを履きたいという方は、いくつかのことに気をつければ予防することができます。

 まずは、できるだけ先の丸い靴にして、つま先が締め付けられないようにすること。これは絶対。

 もう一つは、歩き方です。
 つま先を少し外に向け、足の内側を押し出すように一直線上を歩きます
 足の親指は、全ての指の中で、もっとも強く体重を支える指です。そのため、体重のかかる場所を支えるように動きます。

 つま先を外に向けた状態では、体重はかかとから足の親指側に抜けてゆきます。親指は、地面を強く蹴り出すために内側に向かって(指を開く方向へ)踏ん張る力が働きます。この力は、外反母趾を防ぐ方向に働くので、予防に効果的です。

 この歩き方の効用は、それだけではありません。つま先を少し外に向ける歩き方は、ハイヒールを履いた足を、最も美しく見せる歩き方とされているのです。

 キレイに見えて、しかも健康。この歩き方、練習して損はありませんよ。

 

2016年

4月

14日

ハイヒールを履くとキレイに見えるワケ

 女性の足元を綺麗に魅せるアイテムの一つ、ハイヒール。これを履くと、足がすっと伸びて、スタイルがよく見えると言われています。

 スタイルよく見える理由の一つは、足が伸びて見えること。これはわかりますね。踵(かかと)の高さ分、腰の位置が高くなるからです。
 そしてもう一つの理由は、姿勢が良くなることです。

■ハイヒールは、姿勢を変える

 立っている時の姿勢は、足裏のどこに体重がかかるかで変わってきます。

 例えば、踵(足の後ろ側)に体重がかかっていると、後ろに倒れそうになりますね。すると、バランスを保つために上体が前にでて、背中が丸くなるのです。

 ハイヒールを履くと、踵が高くなるので、自然に体重が足の前側にかかります。上体を前に倒す必要がなくなるので、腰や背中が伸びて、キレイに立つことができるというわけ。

 ハイヒールとまではいかなくても、少し踵の高い靴を履くと、姿勢が良くなります。これは、男性でも使える方法。

■足首の調整でも同じ効果が

 現代人は、昔の人に比べて、踵の側に体重がかかっていると言われます。つまり、姿勢が悪くなりやすいということ。
 原因は、歩くことが少なくなったためだと言われています。

 治療をしていても、足首が固いために体重を前にかけられない人がいます。そんな方の足首を調整して深く曲げられるようにすると、体重の位置が変わって姿勢が良くなります。
「立ち方が変わった!」
 と治療後におっしゃる患者さんもいます。

 姿勢が悪いと気にしていらっしゃる方、実際には、こんなところが原因のこともあります。頑張って背中を伸ばすよりも、こうした方法でキレイな姿勢を手に入れるのはいかがでしょうか?

 ところで、ハイヒールと言えば、外反母趾との関係が気になるところ。次回は、そのお話を。

2016年

3月

18日

強く押しても、効かないです

 確定申告も終わって、ようやく一息つきました。忙しいのと重なって、ブログ更新が遅れてしまいました。来年は早く始めようと思います…と毎年言っていますが、毎年こんな調子ですね。

 さて。
 街のリラクゼーションマッサージなどで、事故が多い、というニュースがネットで出ています。多いのは、骨折と頚椎損傷。
 こうした事故の原因は、ひとえに「強すぎる」ことにあります。

■「強さ」の誘惑

 施術をしていて、うまく効果が出ない時、施術者は「もっと強くしたら効くのではないか?」と、つい考えてしまいます。ここで、強さの誘惑にのってしまうと、事故を起こします。

 効果が出ないときには、力を強くするのではなく、別の方法を試すことです。
 例えば指圧なら、押している場所や方向、速度、持続時間などを変えます。それでダメならリンパマッサージや、筋膜リリース、鍼灸、あるいはTAM(笑)にと、施術方法を変更する。それでもダメなら施術をやめて病院などを紹介することも。

 大事なのは、多くの選択肢を持っていることです。一つの症状をさまざまな面から見られることは、治療をする上でも、事故を避けるためにも必要。

 施術中の事故が、リラクゼーションやボディケアなどで多いのは、アルバイトスタッフが「一つの技術しか教えられていない」からではないかと考えられます。選択肢がないので、強くする以外の方法を思いつかず、事故に至ってしまう可能性が高くなるのでしょう。

■重要なのは「選択肢をもっていること」

 ここまで書いてきて、ふと思ったのですが、児童虐待もこれと同じ構図ではないでしょうか。

 虐待をした親の多くが「しつけのつもりだった」と言います。
 しつけにも、褒めたり、ルールを作ったり、ノせたりと、いろいろな方法があります。また、ある程度は理解して諦めることもあるはず。

 ところが、怒鳴る、叩くなどの罰を与える方法しか知らないと、子供が思い通りに動かないときに、罰を強くすることしか思いつけなくなります。エスカレートした罰は、やがて虐待に至ります。

 選択肢を複数持っていることは、とても重要なのです。

2016年

2月

28日

浅い鍼の効果をどう考えようか…

 八起堂治療院でも、鍼治療は行います。

 メインになるのはトリガーポイント鍼治療。筋肉の中にできるコリの固まりに鍼を打ち、緩める治療です。
 腰痛の患者さんなどには極めて有効で、あっという間に痛みを減少させることができます。

 トリガーポイント鍼治療では、筋肉の中にあるポイントに鍼を届かせる必要があるので、3~5センチと深く鍼を打ちます。そうでなければ、効きません。

■鍼は浅く打っても効く

 しかし、場所によっては、鍼を浅く打つこともあります。それも、切皮という2~3ミリしか刺さない打ち方。

 狙うのは、皮膚に違和感を感じるところ。緊張しているというか、動きが少ないというか、他とはちょっと違う感触の場所に浅く打つと、周辺の筋肉が緩みます。

 痛みもリスクもほとんどないので、主に上半身で便利に使っていますが、困っていることが一つ。こんな浅い鍼がなぜ効くのか、理論がわからないのです。

■体壁内臓反射という説

 3ミリといえば、皮下組織を通っているかどうかの浅さです。筋肉には全く届いていないのに、筋肉に作用する不思議。トリガーポイントの理論では説明できません。

「体壁内臓反射」と言われる説があります。
 神経は脳から手足の末端まで、枝分かれしながらつながっています。近い神経枝との間で混線が起こると、内臓の異常が皮膚に伝わったり、皮膚の刺激が内臓に伝わったりするというのが、体壁内臓反射説のあらまし。鍼灸や指圧を現代医学的に考える際に、使われる理論の一つです。

 私の見ている皮膚の感触も、筋肉の緊張が皮膚に伝わり、立毛筋などを緊張させて異常な感触を生じると考えれば、納得がいきますね。

■説明不足!

 ただしこの説には、致命的な欠陥があります。
 内臓(筋肉)の緊張が皮膚に伝わるところまではわかります。皮膚の刺激が内臓に伝わることも理解できます。しかし、鍼の刺激がプラスに作用する理由がわかりません。
 普通に考えれば、より緊張しても良さそうなものではありませんか?

 そんなわけで、なぜこの鍼が効くのかは今でもわからないまま。はっきりすれば、さらに効果的に使えると思うのですが…。

2016年

2月

23日

子供の身体も固くなる …ストレス編

 前回は、子供の身体で癒着が生じて固くなることについてお話しました。しかし、固くなる原因は他にもあります。むしろ、こちらのほうが深刻かもしれません。

■ストレスが身体を固くする

 子供の頃、声の大きな先生が怒ると、緊張して体が固くなったりしませんでしたか? また、失敗してはいけない状況で、肩に力が入ったり。恐怖や、プレッシャーのかかる状況になると、筋肉に力が入ってしまうものです。

 ストレスがかかるのが短時間だと、すぐに筋肉が緩んで解消します。しかし、長時間ストレスが続くと、力が入っているのが習慣になって、戻りません。大人の肩こりや腰痛と同じです。

■固いと実力が出せない

 緊張した子供の動きは固く、ぎこちなくなります。
 別のところにも書きましたが、コーチが怒鳴りちらす人だったため、けが人だらけだった野球チームを見たことがあります。成績も振るわないままでした。

 強いストレスは、一時的には気持ちを引き締める効果があるかもしれません。しかし、気持ちだけではなく筋肉も引き締まって、固くなってしまいます。長期的に見れば、ケガが増えます。

 また、後ろから追い立てられるようなストレス下では、自分で考えて工夫する余裕がありません。優秀な選手にマイペースな人が多い理由は、こんなところにあるのでしょう。

 子供の身体が固い、動きがぎこちない時には、何かストレスがかかっていないかを考えてみても良いかもしれません。

2016年

2月

14日

子供の身体も固くなる -癒着編-

 小3の娘は、なかなか眠らない子供です。赤ちゃんの頃から、ほとんど寝落ちしたことがないという本格派。
 あまりにも寝付きが悪い時には、緊張を解く施術で、寝付かせることがあります。先日も背中を軽くなでてやったら、
「あー、気持ちいい」
 って、仕事疲れのOLか!

 ついでにTAMの要領で肩を動かしてみたら、意外にもパリパリ音がして、軽く動くようになりました。ということは、子供の関節でもすでに軽い癒着が生じているということ。

 関節で癒着が生じる原因は、繊維タンパク質の沈着によるもの。この原理は、大人でも子供でも変わりないので、癒着が生じてもおかしくいないわけです。

 というよりも大人になるにつれて身体が固くなってゆく要因の一つは、こうして使わない部分に沈着してゆくタンパク質によって構造が完成してゆくからではないかとも思われます(もう一つは、筋肉の使い方が決まって動く範囲が決まってくるから)。
 ときどき癒着をとってやることは、子供の成長の上で役に立つと思われます。

 …ただ、人によるとは思います。

 私が子供の頃は身体がバリバリに固くて、前かがみで指先が床につきませんでした。今の方が柔らかいくらい。
 身体の使い方次第で、リカバリーもきくのです。

2016年

2月

10日

マッサージでデトックス?

 少し前に「マッサージでダイエットできるか?」という一般公募実験をしまして、何人かの勇者が名乗りを上げてくださいました。

 生活は何も変えないという条件で、週一回、三回マッサージする実験の結果は、増えたり減ったり。個人差があって、効果があるとはいえませんでした(筋膜リリ-スを毎日10分、6ヶ月で10キロ痩せた、という報告があるので、回数が少なかったのかも。しかし半年間、毎日施術は無理!)。

 しかしその中でお一人、面白い体験をした方がいらっしゃいました。
 マッサージを受けるたびに、トイレで出るもの(大小とも)の色、匂いが、いつもとぜんぜん違ったというのです。三回ともそうだったというので、偶然ではなさそう。
「毒が出た感じがする!」
 というのが、感想でした。

 マッサージで、「小」が増えるのはよくあることです。リンパ液の流れが良くなるので、筋肉の間や皮下組織に溜まっていた水分が出てくるのです。また、組織間にあった老廃物が動かされ、一度に排出されるため、尿の色が変わることもあります。

 「大」の方は、短時間のマッサージで成分が変わることは考えにくいです。しいて言えば、マッサージにより自律神経が刺激され、腸が活発に動き出したため、普段と状態が変わった可能性がありますね。
 構造に働きかけるマッサージは、血液や神経の状態を変え、不要なものの排出を促す可能性があります。

 とはいえ、ここまで極端に反応するのは稀なケース。めったに起こることではないので、その点ご了承下さい。

2016年

2月

07日

筋膜治療の話

 このところ健康番組などで話題なのが、筋膜リリースなどの筋膜治療。筋膜とは、筋肉の表面を覆っている膜です。

■筋膜とは?

 筋肉は、筋繊維と言われる細長い細胞で出来ています。たくさんの筋繊維のまとまりを包んでいる膜が、筋膜。フィルムで包んだソーセージを想像してもらうと、わかりやすいかもしれません。

 筋肉を包んでいる筋膜の他に、内臓を包んでいる胸膜や腹膜、皮膚の下で、ひとつながりに全身を包んでいる皮下組織の膜も、まとめて筋膜と呼ばれます。

 さてこの筋膜、状況によっては縮んで固くなったり、膜どうしがくっついたりします。そうなると姿勢を歪めたり、動きを妨げて痛みや疲れの原因になります。
 こうした筋膜を正常に戻そうとするのが、現在言われる筋膜治療なのです。

■筋膜の治療法は?

 筋膜の治療にも、いろいろな方法があります。

 ・のばす
 最もメジャーな方法で、いわゆる筋膜リリースの中心となる技術です。縮んだ筋膜に連続的な力をかけてストレッチします。

 ・分離する
 筋膜どうしがくっついているときに、隙間を開いたり、ずらすように動かすことで分離し、自由に動けるようにします。

 ・その他
 鍼で刺し、壊して新しく再生させる方法や、お灸の熱で血行を増やし、伸ばしてゆくという方法をとる人も。

 八起堂の筋膜治療は、TAM手技療法でくっついた筋膜を分離する方法が中心。あとは要所要所をピンポイントで伸ばす方法を併用します。ごくまれに、鍼を使ってほぐす場合もありますね。

 筋膜治療は、一見簡単そうに見えます。しかし、深部の筋膜や、関節の周辺の筋膜などは、人体の構造を知らなければ施術を届かせることができず、癒着や短縮が残ってしまいます。入りやすく、奥が深い治療法だといえます。

 以前は病院でも治療院でも、筋肉や骨、神経だけが治療対象とされ、筋膜・靭帯はほとんど無視される存在でした。筋膜治療が一般に行われるようになって選択肢が広がり、これまで治らなかった不調も治せるようになってきています。

 これまで何年も筋膜や靭帯の癒着を治療してきた者としては、世間の認知度が広がってくれて、ようやく肩身が狭い時代が終わった気分です(笑)。

2016年

2月

03日

深呼吸の効用② 肩こりを治す!

 呼吸は胸式呼吸と腹式呼吸に分けられます。腹部を動かすのが腹式呼吸で、肋骨を動かして呼吸するのが胸式呼吸。
 今回の話では、肋骨を動かす胸式呼吸がポイント。

■姿勢と肩こり

 筋肉や筋膜は、使わないと短縮して固くなります。それは、肋骨を取り巻く筋肉も同じ。筋肉が固くなると肋骨の間が広がりにくくなります。

 呼吸がしにくくなるのはもちろんですが、胸が膨らまないので、姿勢が前かがみになり、背中が丸くなってしまいます。 

 肩こりにも影響します。首の筋肉には、肋骨から始まる筋肉が何本もありますし、肩甲骨を動かす筋肉も、肋骨についています。肋骨の動きが固くなると、首や肩甲骨を動かす筋肉も緊張しがち。肩・首がコリやすくなります。

■深呼吸で美しく、楽に!

 ではどうするかというと、一番簡単な方法が深呼吸。
 背中をそらすように大きく息を吸い込んで、10秒くらい止めます。止めるのは、筋肉にストレッチの時間を与えるため。

 TAMの理論で言えば、胸の筋肉などにテンションを掛けた方が効果が上がるので、両肘を後方に引くようにした状態で、深呼吸します。

 首、肩コリを感じた時に、試してみてください。緊張した筋肉が緩み、胸が広がるのがわかります。首のコリも軽減しますよ。

付記
 名古屋の治療家C先生から、背中が丸くなった高齢の方でも、深呼吸が有効だったというご連絡を頂きました。
 脊椎の可動性改善と脊柱起立筋マッサージの後、両腕を後ろに引き胸を広げる形で深呼吸を深く行うことで、丸くなった背中に改善が見られ、体幹のバランスがよくなったとのことです。
 他にも使ってみた方がおられましたら、ご感想などをいただけると幸いです。

 

2016年

1月

31日

深呼吸の効用① 冷え性に

 前回書いた「世界一寒さに強い男」ヴィム・ホフさんの、寒さ対策の秘訣は、精神のコントロールと呼吸法だとのことでした。

 その呼吸法は、ゆっくり大きな深呼吸を15回、素早い深呼吸を30回、大きく吸って息を止めるのを2回(詳しく知りたい方は、「ヴィム・ホフ」で検索してみてください)。

 試しにやってみると、すぐに足先の温かさを感じました。ヴィムさんの言うような精神のコントロールはできてないので、深呼吸の作用だと思われます。考えられる可能性は三つ。

 ひとつは、深呼吸で十分に酸素を取り込んだことで、発熱が起こっている可能性。それにしては少し早すぎる気がしましたが…。

 ふたつ目は、深呼吸でリラックスしたことで、手足の血管が開いた可能性。手足の毛細血管は自律神経にコントロールされていて、リラックスすると血流量が増えます。

 三つめの可能性は、深呼吸で内臓が大きく動いて、その圧力変化で血液が手足に送り出された可能性。
 深呼吸は別名「内臓のマッサージ」と言われています。圧力の変化でも血流が増えますし、とくに腹式呼吸では大きく上下することで位置も変わります。
 ヨガ、太極拳、気功など、呼吸を大事にする健康法が多いのは、この内臓マッサージ効果もあると考えられます。

 どれが理由であるかはわかりませんが、少なくとも深呼吸をして悪い理由はありません。おすすめです。

 なお、深呼吸にはもう一つ効果があることがわかったので、それは次回に。

2016年

1月

30日

カロリー消費の話あれこれ雑談

 前回、身体は、カロリー消費を減らす方向へ進化してきたという話を書きました。その関連で雑談をいろいろ。

■寒さダイエット

 南極越冬隊の消費カロリーは、一日4000キロカロリー。常人の二倍という話は前回書いたとおりです。寒いと、寒さに耐える発熱で、カロリーを消費します。

 ということで「寒さを我慢して痩せよう」というダイエットがあるそうです。理論的には効果があるはずですね。ただし、食欲という問題があります。

 南極越冬隊や冬山登山では、極端に脂肪の多い食料を持ってゆくことがあります。普通なら気分が悪くなりそうな脂量でも、寒さで味覚が変わり美味しく食べられるとのこと。つまり、寒いほど高カロリーのものを食べたくなるというのが本能なのです。その食欲に耐えきれれば、結果を出せるかもしれません。

 なお、低温を我慢すると血圧が上がりやすいので、血圧や心臓に問題のある方は注意して下さい。

■寒くても平気な人

 生まれつきなのか、訓練なのか。寒くてもしもやけにも凍傷にもならない人がいます。

 オランダ人のヴィム・ホフさんは、世界一寒さに強い男として、ギネスブックの記録をいくつも持っています。氷の中に1時間以上座っていたり、パンツ一丁で冬のキリマンジャロに登ったりと、寒さ冷たさに影響を受けない特技の持ち主です。 

 「呼吸法と精神のコントロールで体温を上げることができる」と言うのが、ヴィム・ホフさんの主張。

 科学者が調べた所、褐色脂肪細胞という細胞が、普通の人よりも活発に働いて熱をつくっているということがわかっています。呼吸法による酸素の取り込みが、発熱を可能にしているのでしょうか。いずれにせよ、発熱には燃料が必要。どれだけ食べるのか、気になります。

■太りやすさは、生まれる前に決まる?

 太りやすい人の身体では、エネルギー消費を節約する倹約遺伝子が作用しています。を作用させるためのスイッチが、飢餓状態です。極端なダイエットなどで飢餓状態になるとこの遺伝子にスイッチが入り、エネルギーを節約。リバウンドを起こしやすくなります。

 実はこのスイッチ、生まれる前から入ることがあります。
 生まれた時の体重と、その後の健康状態を長期間観察したところ、母親が食事制限をして生まれた低体重児(2500グラム以下)は太りやすく、生活習慣病を発症しやすいことがわかってきました。
 胎児の時に飢餓状態を感じて、倹約遺伝子のスイッチが入るらしいのです。

 少し前まで、妊婦に関しては徹底した体重管理が行われていました。難産や、妊娠中毒症を防ぐためです。しかし、この研究を受けて、体重管理の基準が変わってきたようです。 

2016年

1月

27日

しもやけは、進化の結果

 先週からしばらく、今年一番の冷え込みと言われましたが、奈良はそれほど冷えませんでした。足の小指がしもやけになってしまったのが唯一の被害。まだ少し腫れています。

■しもやけとは

 しもやけは、難しい言葉で言うと「凍瘡」。冷えて血行が悪くなることで、組織が腫れたものです(いわゆる凍傷は、組織が凍ったことによるもので、別物)。

 私達の身体は、寒くなると脳や内臓を冷やさないため、身体の中央に血液を集めるようになっています。その結果、手足の先に血液が行き渡らず、しもやけになるのです。

■しもやけの原因は、人類の生き残り戦略!

 現代人の感覚からすれば、しもやけにならないようにどんどん体温を上げて血液を送ればいいのに、と考える所。しかし、これは厳しい自然環境の中、生き残りをかけて獲得したメカニズムだそうです。 

 体温を上げるには、大量のカロリーが必要です。例えば、南極越冬隊では普通の大人の二倍のカロリーを食べているとのこと。
 食料が乏しい冬、どんどん体温をあげたら、しもやけにならない代わりに餓死してしまいます。死ぬよりは手足をしもやけにするほうがマシ、という方向に人類は進化してきたのです。

■人体は、いまでも飢餓に備えている

 生き残るためには、カロリーを節約しなくてはならない。人体は、この命題を再優先にしています。それは、体温だけの話ではありません。

 例えば、一日寝て過ごすと、筋力が5%低下します。筋肉は存在するだけでカロリーを消費しますので、必要がない状況ではすぐに分解されてしまうというわけ。

 脳も同じ。頭を使わないと、脳の萎縮が早くなることが知られています。脳は全身で使われるエネルギーの20%を消費するほどの大食漢。使わないなら脳も減らしたい、と人体のメカニズムは考えるでしょう。


 個人的には、身体が固くなるのも、ムダに大きい動きを減らそうというメカニズムの働きではないかと考えています。
 進化の過程で出来上がったシステム。それに抵抗して、いかに機能を取り戻すか、柔軟に自由に動けるようにするか。それが、私たち治療家の仕事なのです。

2015年

12月

29日

夜に食べないほうがいい理由

「健康を考えるなら、寝る前にはモノを食べないほうがいい」というのは、昔からよく言われること。この根拠として、寝ているときは内臓も休ませる方が良い、というのですが、私はあまり納得していませんでいた。

 もし、寝ている時に内臓を休ませるべきなら、食べた後で眠くなったり、空腹で眠れなくなったりするはずがないじゃないか、というのが私の考え。そんなわけで、私はけっこう時間無視で食べてすぐに寝たり、ということをやっていました。

 ところが先日NHKの番組「カラダのヒミツ」を見ていたら、寝ている時に食べないほうが良いという説の、根拠になる話が出てきました。

 それは、胃から出るグレリンというホルモン。
 胃が空になり、エネルギーが足りない状態になると、胃からこのグレリンが出て脳に空腹を伝え、食欲を起こさせる働きをもっているそうです。 

 このホルモン、空腹感にだけ関わっているわけではありません。実はグレリンが出ると、成長ホルモンが分泌されるという働きも。

 成長ホルモンは、言わずと知れた成長に関わるホルモン。子供の場合には身長を伸ばすなど成長に関わりますが、大人の場合には新陳代謝を促進し、回復させる働きをするのです。

 一日のうちで、もっとも身体を回復させようとするのは、寝ている時。つまり、寝ている時に空腹であるほうが、成長ホルモンが多くでて、疲れが取れるという考えが成り立つわけです。

 ということで、寝ている間に十分に回復するには空腹のほうが都合がいい。
 だからって、夜に食べるものの美味しさが変わるわけではないのですが…。

2015年

11月

13日

アインシュタインに学ぶ、治療院の選び方

 かのアインシュタインは言ったそうです。
「同じことを繰り返しながら、違う結果を求める。これが狂気だ」

 同じことをやれば、同じ結果が出る。一度やってみてダメだったことは繰り返さず、どこが悪かったのかを考えて試行錯誤すべき、という意味です。

 なんでこんなことを言ったかというと、時々患者さんからこんな話を聞くからです。
「◯◯の治療に、週3回、1ヶ月通ったけど、何の変化もなかった。でも、根気よく通って下さいと言われた」

 …よく我慢されたと思います。

 適切な治療なら一回目、遅くとも三回目までには、何らかの効果が出るものです。三回やっても全く効果が見られない場合は、その治療を続けても治る可能性はきわめて低い。だから本気で治療をする人間は、自分の持っている限りの技術を尽くして、有効な方法を見つけ出そうとするものです。

 逆に言えば、漫然と同じ治療をしながら治るのを待っているだけ(時間がたてば、勝手に治る症状もあるから)の治療院なら、治療を受ける価値はありません。効果がないまま、同じ治療が何回か続いたら、その時点で遠慮なく見切りをつけるべきです。

 長く通い続けて欲しいというのは、治療院の営業上の問題。患者がそれに付き合う必要はないのです。

付記
 冒頭の言葉は、アインシュタインの言葉ではないという説もあるようです。残念ながら、どちらとも確認はできませんでしたので、そのままアインシュタインにしておきます。

2015年

11月

01日

加工肉の発ガン性に負けない

 先日の、WHOの発表
「一日に50グラムの加工肉は、大腸ガンの可能性を18%増やす」
 は、あちこちで波紋を呼んでいますね。「もうソーセージやベーコンを食べられなくなる!」と嘆く人もいるとか。

 肉食の過多がガンを増やすことは、昔から知られている事実です。今回の統計も、おそらく事実でしょう。
 事実ですが、それほど気にしなくてもいいと、私は思っています。

■肉食が増えて寿命が伸びている?

 例えば、日本人の食生活は、戦後一貫して肉食が増えてきています。その一方で、寿命はどんどん伸びている…。おかしいですよね? これは、人間の死因はガンだけではないからです。

 江戸時代や明治、大正時代、ハシカやインフルエンザが流行すると、万単位の死者が出たものでした。それほど怖い病気だったのです。

 ところが、高度経済成長の頃から、ハシカやインフルエンザで死ぬ人は、急に少なくなりました。

 もちろん、予防接種や薬の進歩もあるでしょう。しかし一番の要因は、タンパク質の摂取量が増加して免疫力が上がったことによるものだと言われています。食生活に肉が増えるに従い、病気で死亡する率が下がったのです。

 また、タンパク質は筋肉の元でもあります。不足すれば当然体力が下がり、寝たきりのリスクが増えます。現在でも、肉の摂取量が多い高齢者の方が活動性が高く、衰えにくいことが知られています。

 つまり寿命への影響を全体的に見ると、手軽なタンパク質の摂取源である加工肉が、リスクばかりでないことがわかります。

■それでもリスクを減らすなら、他の方法で!

 もちろん、同じだけのタンパク質を魚や大豆で摂るほうが、全体としてガンのリスクは下がるはず。でも簡単ではありませんよね。
 それなら、他の方法でリスクを下げればいいのです。

 例えば、野菜や食物繊維を多く摂ることで、ガン全体の発生率が下がることはよく知られています。合わせて塩分を減らせば、ガンだけでなく、高血圧も減らせます。
 また、日常的に軽い運動をしているとガン・高血圧だけでなく、糖尿病のリスクや認知症のリスクまで減らせることがわかっているのです。

 こうした方法を1つか2つ始めるだけで、充分に加工肉のリスクを打ち消すことができるでしょう。

 あれを避ける、これを避けるよりも、こうした方法で、トータルのリスクを管理する方が、結果として楽しみが多く、元気で長生きできるのではないでしょうか。

イラストは「かわいいフリー素材集いらすとや」から

2015年

10月

18日

耳に水が入った時には

 お風呂や水泳の時、耳に水が入ったらどうしますか? 昔は、水が入った方の耳を下にして、ジャンプしろなどと言われていました。この方法、手間がかかるわりに、効果はイマイチ。

 ところが先日、そんな耳の水を簡単にとる方法を知りました。
 それによると、耳に入った水が抜けないのは、少ない量の水が、表面張力で張り付いているからだというのです。つまり、ある程度以上の量になれば、簡単に流れ出してくるとのこと。

 シャンプー時に、耳に水が入ったのでためしてみました。
 水音がする方の耳を上にして、お湯を流し込む。いっぱいになったら、下に向けて、水を流し出す…と、見事に水が抜けました!
 あまりにも簡単なので、嬉しくてわざと何度も水を入れては抜きを繰り返したくらい。
 本当に便利です。

 さて、その数日後、妻が
「耳に水が入った…」
 と言い出しました。私は先日の話を大威張りで語って聞かせ、すぐに治してやると豪語しました。水道から汲んできた水を耳に…すると
「うわっ、めまい、めまいがする!」(@_@)
 と慌てる妻。

 おかしい。おかしいけど、どこかでこんな話を聞いたような気が…。

「そういえば、耳に冷水を入れると、めまいがするって、学校で習ったな」
「それを先に言ってよ!(怒)」
 怒られてしまいました。 (^^ゞ

 ちなみにこの検査、温度刺激検査と言います。耳に冷水を入れて、内耳の機能を調べる検査で、強いめまいが出るほうが正常(継続時間は二分以内)。

 みなさんは、お湯でどうぞ。

お知らせ

年末は12月30日まで営業、年始は1月8日から営業します。

八起堂の独自技術、TAM手技療法の基礎技術を収録した、教材用DVDが発売。

初歩講座の前・後編と、足の技法の3講習分が入っています。主演は院長です。

製作・販売
医療情報研究所

詳しくは→こちら  

八起堂連絡先

奈良市西大寺新池町3-10
電話 080-3112-8738
hakkidou.tam@gmail.com

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ブログ最新記事

2017年

12月

11日

「琵琶湖の水、止めたろか!」のために

ときどき、どうでもいいことが気になることってありませんか?

 関西に住んでいると、よく聞くネタの一つが、
「京都め、滋賀をなめとったら琵琶湖の水止めるぞ!」
 なわけです。

  京都の水道の水源は、琵琶湖。そこで、
「水止めたら、水がなくなって暮らせへんやろ!」
 というのが滋賀県民の言い分ですが、実際に琵琶湖の水を止めると、行き場を失った水が溜まって、やがて滋賀の町が水没。京都よりも困るはずです。

 

  滋賀の人が「止めたろか」を言うためには、琵琶湖の水をどうにかしなくてはなりません。そこで考えました。

 福井までトンネルを掘ればいいのでは?!

 

 福井に向かってトンネルを掘るなら、琵琶湖最北端から敦賀に抜けるコースが最短です。
 琵琶湖の水面は、だいたい標高85メートルなので、それより低いところを出口にすれば、水は日本海に流れてゆきます。

  標高を教えてくれるホームページで調べてみましょう。
  地理院地図 電子国土web

  標高85メートル以下になるのは、北陸本線の新疋田駅付近(リンク先地図の、中心付近)で、琵琶湖からだいたい11キロメートルの距離です。
 ここまでトンネルを掘れば、もう水を止めても大丈夫!

 

  気になる予算ですが、だいたい同じ長さの飛騨トンネル(東海北陸自動車道)の工事費が1000億円くらいだそうです。

 滋賀県の年間予算が、一般会計、特別会計あわせて約7000億円。その1%、70億円を毎年工事に使えば、15年でトンネルが開通する計算になります。 

 どうですか、滋賀県の方!
 京都に「水止めたろか!」を言うために、掘ってみませんか?

2017年

12月

04日

鍼による筋膜リリース、関節リリース

 筋膜リリースといえば、普通は手技です。筋膜を伸ばしたり、剥がしたりして正常な運動性とバランスを回復するわけですが、時として、鍼で同様の効果が出る場合があります。

 皮膚を動かして、動きの悪いところがあった場合、そこに浅く(切皮程度)の鍼を打つだけで、動きが改善するケースが多いのです。
 深い筋膜では、動きの確認も、鍼で当てるのも難しくなりますが、うまく当てれば、やはり動きを回復させられます。

 これは関節のリリースでも有効で、私も足関節などの強い関節の改善に多用しています。

 

●なぜ、効くのか?

 なぜ、鍼を打つだけで筋膜や関節の動きが回復するのかについては、よくわかりません。

 筋膜の構成を変えるほどの物理的な力を与えているわけではありませんし、鍼の小さな穴一つで、何かの成分が移動しているとも思えません。

 可能性としては、筋膜の表面の神経に刺激が加わることで細胞膜のチャネルが開くとか、癒着の一部が動かされることで、はがれるきっかけができるのかもしれないとか、考えることはできます。

 何にしても、まだ仮説も立てられない状態です。

 

●鍼治療の新しいアプローチになるか?

 現代医学的な鍼は、これまでトリガーポイントアプローチを中心として発展してきました。これは過緊張によって変質し、痛みを出す筋肉(トリガーポイント)を鍼によって改善するものです。

 今回の方法では、全体のバランスを崩している筋膜の緊張や、ズレを修正できる可能性があります。

 トリガーポイントと合わせて使うことで、現代医学的な鍼治療の可能性をさらに広げることができるのではないでしょうか。

 また、面白い発見があれば、お伝えしたいと思います。

2017年

11月

27日

腫れのない膝関節痛は、筋肉・靭帯から治す

 膝が痛むとき、まず最初に疑うのは「変形性膝関節症」。膝関節の軟骨がすり減って炎症を起こし、腫れて痛む症状です。

 ところが、軟骨に損傷がなく、腫れも無いのに痛みがある場合もあります。
 こうした場合、軟骨ではなく、筋肉や靭帯から治療した方が、痛みがなくなることもあります。

 今回は、そのような「腫れのない膝関節痛」の対策をお伝えします。

 

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