身体の使い方

 身体の使い方は、治療の上でも、本来の力を発揮するためにも重要です。そうした記事を集めました。

2018年

7月

08日

オスグッド病の発生・再発予防のコツは…尻で跳ぶ!

オスグッド病を起こしやすい膝関節の構造

 

 オスグッド病の正式名称は、オスグッド・シュラッター病。スポーツをする十代の少年少女に多く発生する、軟骨の炎症です。

 ちょっと膝の構造を見てみましょう。長い骨を動かすのは、端についた一本の腱だけ。この腱を引っ張って、骨を動かすところを想像してみてください。すごく大きな力が必要な感じがしませんか? 長い棒の一番端っこを持って動かしている感じ。かなり大きな力が必要です。

 その大きな力が、腱と骨の接続部に繰り返しかかることで、成長期の軟骨が損傷し、炎症を起こすのがオスグッド病なのです。

 

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2018年

4月

06日

肩甲骨を上手につかうには、鎖骨を意識するといい

先日、水泳をしている方が、足の治療でいらっしゃいました。
足の方は関節リリースで治療したのですが、その際、水泳で肩甲骨をうまく使えないとおっしゃいます。

■肩甲骨の動きは、鎖骨で意識する。

肩甲骨は肩にある平たく大きな骨です。
上下左右、回転運動を行って、腕の動きを補助しますので、上手に使えるかどうかで腕の可動範囲は大きく変わってきます。とはいえ、見えにくい場所にあるため動きを意識しにくい骨でもあります。

そこで、鎖骨。肩甲骨は鎖骨によって胴体につながっているので、鎖骨を意識すれば、肩甲骨の動きをイメージしやすいのです。

例えば、右の肩甲骨を動かすとしましょうか。
首のすぐ下にある骨のへこみ。これが鎖骨の始まりです。その部分に左手の親指を当て、人差し指で右側の鎖骨に触れます。これで、指先で鎖骨の動きを感じることができます。
そのまま、右肩を上下や前後に動かしてみましょう。鎖骨が動いているのがわかると思います。

■鎖骨から先が、腕だと考えてみる

鎖骨の動きがわかったら、次は腕を動かします。ただし、腕と一緒に鎖骨が動くように意識してみてください。腕と鎖骨が一緒にうごくことで、腕の動く範囲が大きく広がっているのがわかると思います。
もっと言えば、鎖骨から先が腕だと思ってください。始まりの場所が首の下だ、と思うだけで腕の動きが変わってくるはずです。

 …というようなことを、お客様に語って、動かしていただくと
「そうですね、ほんとに大きく動きますよ!」
 と喜んでいただけました。

「そうでしょう、そうでしょう」
 と言いながら、自分でもやってみたら、私の腕も、いつもより大きく動きます。偉そうに言っていながら、私も肩甲骨が使えていなかったようです。
 思ったより使えていないのが、肩甲骨。一度試してみてください。

2018年

3月

18日

腰痛を防ぐ椅子の選び方

 座っているのは、意外に腰に負担がかかります。立っているよりも二倍、負担がかかるという研究もあるほど。そこで、腰痛の予防になるように、腰に楽な椅子の選び方をアドバイスします。

■仕事には、前下がりの椅子を!
 猫背になると、背骨にも筋肉にも負担がかかります。腰痛を防ぐには、腰が適度に反っていることが必要なのです。

 そのために重要なのは、膝とお尻の高さです。膝の方が低いと、身体は前に傾きますね? すると腰に自然な反りが生まれます。
 膝が低くなるよう、座面が前下がりになった椅子が、腰痛の予防には最適なのです。

 とはいえ、会社などの備品の場合には、自分で選ぶことはできませんね。後ろ下がりになっている椅子で作業をする場合には、座り方を変えましょう。座面をやや高くして、浅く腰かけると、膝が下がって腰に自然なカーブが生まれます。

■後ろ下がりの椅子は、背もたれを使う
 座面が後ろ下がりになっている椅子は、たいてい背もたれがついていますね。こうした椅子は、寄りかることを前提として作られています。
 背もたれの位置が、意外に重要です。
やはり、腰に自然なカーブがあることが重要なので、寄りかかった状態で腰が軽く反るものを選んでください。 

 

2016年

10月

23日

治療と「感じる力」②

 アニメ監督の宮崎駿氏が、若いアニメーターを評して、
「アニメばっかり見てきたから、アニメが作れない!」
 と嘆いているのを見たことがあります。

 アニメ慣れしてるとアニメを作れない、と言うのは面白い言葉です。

 

■体験がないものは感じられない

 ここで、宮崎氏が言っているのは「実感の不足」です。

 例えば、アニメで木登りをするシーンがあったとします。手足を木に引っ掛けて身体を引き上げるのですが、そこで手足だけが動く絵を描いたら、間違いなのです。

 手に強い力を入れるときには、それを支える肩や背中の筋肉も動きます。また、枝の傾きや、手がかりとの距離によって、力の大きさや方向も変わってくるのが、自然な動作。

 こういう力の配分は、実際に木登りをしてみないとなかなかわかりません。実体験が不足していると、どこにどれだけの力が入るかの実感が無いので、不自然な映像になってしまうのです。

 

■身体の知識と体験は、車の両輪

 ミラーニューロンがあっても、体験したことがない動作では、外面の形しか写し取ることができません。筋肉や関節の状態を写し取るには、筋肉や関節について、体験的な感覚を持っていることが必要なのです。

 私自身の体験でも、古武術を習いだしてしばらくした頃、肩コリや腰の張りを見る力が伸びた、と感じる時期がありました。

 

 治療には、骨や筋肉の解剖学的知識はもちろん必要です。
 そして身体を使う経験は、知識を実感として理解させてくれます。

 スポーツでも、武道でも、ダンスでもかまわないのですが、自分の身体と向かい合い、筋肉や関節についての感覚を育てること。

 治療を上達させる方法の一つとして、有効だといえます。

2016年

10月

20日

治療と「感じる力」①

 治療の後はいつも、患者さんに
「動いてみて下さい」
 とお願いします。

 肩をぐるぐる。腰を曲げる。足踏みをする。
 そうした動きを見て、不自然な動きが残っていないかを確認。残っていれば、

「肩の上に、もう少し貼り付きが残ってますね」

 と、仕上げの施術をします。

 

 そんなとき、患者さんに、
「なんで見てるだけで、悪いところが分かるんですか?」
 と尋ねられることがあります。

 慣れもありますが、キーになっているのは、誰でも持っている、ある能力です。

■他人の動作を感じる、ミラーニューロン

 脳科学の発展は急速で、毎年のように新しい発見が続いています。
 近年の発見の一つが、ミラーニューロン。他人の行動を見るだけで、まるで自分が動いているかのように活動する脳細胞です。

 例えば私が、手を挙げている人を見たとします。
 すると、ただ見ているだけの私の脳で、手を上げているかのようにミラーニューロンが活動するのです。

 他人の動作を、鏡に写すように脳で再現しているところが、ミラーニューロンと呼ばれるゆえんです。

 

 ミラーニューロンが何に役立っているのかについては、諸説あります。有力な候補の一つは、共感能力。

 たとえば仲間の体調が悪い時、疲れているな、調子が悪いなといったことを、あたかも自分のことのように感じることで、助け合うことができると考えられています。

 

■動作の共感で、感じ取る

 知っている人がだるそうにしてたら、
「疲れているのかな、しんどいのかな」
 と思って、声をかけますね。

 私たち治療家も、やっていることは同じ。
 患者さんの動作を見て、それを脳内で再現することによって、どこに力が入っているのか、どこが不自然なのか、自分の感覚を通して実感できるわけです。
(治療家によっては、患者さんの痛みを見ているうちに、自分の身体の同じところが痛くなってくることもあるそうですが…)

 そんなわけでミラーニューロンは、誰でも持っている「感じ取る」能力です。人によって精度が高かったり低かったりするだけ。

 

 ただし、精度高く感じ取るためには、ある条件が必要です。
 その条件については、次回。

2016年

10月

06日

「指が痛い!」の予防と治療

 同じ仕事をしている知人から、親指のTAM治療を頼まれました。じっとしていると痛みがないが、力を入れると痛むということ。見たところ、腱鞘炎のような腫れもありません。

 これは関節かな、と親指を軽く牽引しながらチョイチョイと動かしていると、
「ギュッ」
 と音を立てて、関節が回りました。動かしてみると、痛みが取れています。指の関節が捻れた形で癒着していたのです。

■指は、横からの力に弱い

 彼がマッサージしているところを見ると、時々、親指を横にして使っているときがありました。

 指の関節は、握ったり開いたりという動きに合わせてできています。ものをギュッと握れるよう、前後に強い構造なのですが、横の力や、ねじれの力には弱いのです。

 そのため、指に横からの力がかかると、関節がわずかにズレます。もちろん、普通ならすぐに戻ってしまう程度のズレですが、あまり頻繁にズレると、関節に癒着が起きて、ズレたままになってしまうのです。

 

 

 意外なところでは、パソコンの操作。親指でスペースキーを押すときには、大抵の人が横から押しますね。キーボードを強く叩きすぎるクセがあると、親指を傷めがちです。

 防ぐ方法は、横から強い力がかからないように使うこと。できるだけ指の正面から力がかかるように、持ち方、手の置き方を工夫して下さい。

■治療は、軽く、軽く

 治療は、関節部の癒着をとり、動きを回復すること。
 軽く牽引しつつ、曲げ伸ばししながら癒着を取ってゆきます。

 ご自分で治療を試す時には、軽く軽く、気長に行って下さい。指の関節は繊細なのです。
 それでも難しい時には、ご相談下さい。

2016年

9月

25日

筋膜で運動する…ナチュラルボーン・ヒーローズ

 ダイエットがらみで遠回りしましたが、ようやくまた「ナチュラルボーン・ヒーローズ」の読後感想に戻ってきました。

■筋膜で運動する

 この本では一章を割いて、筋膜を運動に活かすことについて書いています。

 筋膜は、筋肉を包む膜。実際には筋肉だけではなく、皮下組織や靭帯も含め、何重にもなって全身を覆っている弾力性の膜です。

 私達が身体を動かすときには、筋肉の力で骨格を動かすのが普通ですが、この本では筋膜の弾力を活かす方法を紹介しています。

 

 例えば、縄跳びをしているときなど、慣れた人はあまり力を使わず、軽く跳んでいるように見えます。これは、筋膜の弾力の助けを借りているので、エネルギーのロスが少ないといいます。

 また、指先を強く広げるようにすると、腕の筋膜が緊張します。その状態で腕立て伏せをすると、筋膜がバネとして働くので、楽に腕立て伏せができるといいます。

 

■ここからは八起堂の感想

 八起堂の治療でも、筋膜や靭帯を扱います。くっついたり、縮んだりした筋膜や靭帯を伸ばすことで、身体の構造そのものを変えることができるので、非常に有効な治療法。

 

 ただ、運動に関する考え方では「ナチュラルボーン・ヒーローズ」とは少し異なります。

 「ナチュラルボーン・ヒーローズ」では、筋膜の弾力が強調されています。いわば、バネやゴムのような扱い。

 私自身はむしろ、力を伝達するロープや歯車のように感じています。ある場所で発生した力を、別の場所に伝える役目です。

 

 古武術の世界では「手をもってせず、足をもってせず」などと言われます。体幹部の筋力や、体重という強力な力を有効に活用する意味です。

 例えば刀を振るとき。腕の力で振るのではなく、体幹部で腕を動かすようにすると、軽く使えたりします。

 歩くときにも、足の筋肉で蹴る力を主にするのではなく、わざとバランスを崩すようにして進む技法があります。

 中国拳法などでは、重力を打撃力に変換する技法があるとか。それも筋膜を通して手足まで力を導いているのではないでしょうか。

 

 筋膜は、全身を覆う多層構造です。

 どの筋膜を張り、どの筋膜をゆるめるかの操作に熟達すれば、筋力とはまた別の可能性が見えます。それを研究するのも楽しいものです。

 

2016年

9月

13日

大阪人は「粉もん」を食べても太らない?

 前回、低炭水化物ダイエットの話を書きました。

 確かに、炭水化物は肥満の要因の一つではありますが、食べたら必ず太る、というわけではありません。

炭水化物が好きでも、太っていない人はたくさんいるのです。

 

■大阪人は、「粉もん」を食べて、なぜ太らない?

 大阪といえば、たこ焼き、お好み焼きなどの「粉もん」。うどんも好きで、うどんに白飯を添えた「うどん定食」が存在します。

「大阪人にヨウ素液を掛けたら青紫色になる」
 と笑いのネタにされるほど、炭水化物好きの大阪人。だから太っている人の比率が高いと思ったのですが…違いました。

 

 肥満が多いのは、まず沖縄。それから、東北と九州の県。
 大阪は中間グループで、思ったほど高くはありません(厚生労働省「都道府県別の肥満及び主な生活習慣の状況」より)。

 

 粉もんを好んで食べるのに、なぜそれほど肥満者が増えないのでしょうか? 食生活からヒントを探してみます。

 

■野菜で炭水化物の吸収を防いでいる?

 炭水化物が脂肪になるのは、血糖値が急速に高くなったときです。

 炭水化物(ブドウ糖)が一気に吸収されると血糖値が急上昇。これを「血糖値スパイク」といいます。
 膵臓からインシュリンが分泌されて、多すぎる糖分を脂肪細胞に取り込みます。
 逆にブドウ糖の吸収がゆっくりだと、すぐに消費されるので、血糖値が上がらず太りにくくなります。(糖質スローオン)

 

 この原理を利用したのが「野菜を先に食べるダイエット」。食物繊維が多い野菜を先に食べ、あとから炭水化物を食べることで、消化吸収を遅らせる方法です。
 一時期流行した「低GIダイエット」も、ほぼ同じ原理。

 

 粉もんを食べながら太らない大阪人は、食物繊維をたくさん摂っているはず…! と思って調べたら、野菜の摂取量は最下位に近いところでした。食物繊維説、大失敗。

 

 ほかに何かヒントはないかと統計をパラパラ見ていたら、調味料の項目に目が留まりました。大阪は、砂糖と塩の消費量が、どちらも最下位グループなのです。

 

■料理の砂糖がキー?

 関西は薄味文化。塩分を控えめに、ダシの旨味で料理の味を調えます。この場合、砂糖はそれほど必要ありません。

 逆に、塩分の多い味付けをする地方では、味のバランスをとるために砂糖を大量に入れなくてはなりません。
 砂糖のような糖分、しかも水溶液は吸収されるのが早く、血糖値を上げやすいのです。

 

 料理に大量の砂糖が使われていると、まず砂糖から吸収され、血糖値を上げます。そこにご飯が消化されたブドウ糖がやってくるのですから、血糖値はさらに上昇。血糖値スパイクが起きて、脂肪に変わる量が増えるわけです。
 ファストフードと甘いソフトドリンクの組み合わせが太るのと同じ原理ですね。

 

  ということで、大阪で肥満がそれほど増えないのは、砂糖の少ない薄味によるものだと考えられます…確証はありませんけど。

 炭水化物が大好きな人(私もそう!)は、ダイエットが必要になったら、まず食事から砂糖を減らして薄味にするところから始めるのはどうでしょうか?

2016年

9月

07日

低炭水化物ダイエットで痩せるわけ

 前回、低炭水化物食とアスリートの関係を書きました。

 身体に蓄えられるエネルギーの量で言うと、脂肪は炭水化物の70倍。低炭水化物状態に慣れ、「脂肪を使う能力」を高くすれば、長距離をバテず走れる、という話でした。

 こういう話が出ると、どうしても低炭水化物ダイエットに触れないわけにはいきませんね。

 安全性に対する疑問など諸説ありますが、脂肪を使う能力に着目すると、けっこう合理的なダイエットかもしれません。

 

■低炭水化物で、燃料を切り替える

 身体にとって、炭水化物は非常に使いやすい燃料です。
 それに比べると、脂肪は分解に手間がかかる分だけ、使いにくい燃料。

 

 脂肪と炭水化物の両方があれば、身体は炭水化物を優先的に使います。
 仮に、脂肪を使う能力が低いまま炭水化物をとると、炭水化物ばかり使って、脂肪は少ししか使われません。

 もともと少ない炭水化物を使い切ったところで空腹感が出るので、食欲が出ます。そこで大量に炭水化物をとると、余った炭水化物は、脂肪に変換(以上、繰り返し)。

 

 低炭水化物食を続けると、グルカゴンや、リパーゼがよく働くようになり、脂肪を使う能力が上がってくると考えられます。

 血糖値の上下が小さいので、極端な空腹感が出にくいのと、ストレートに脂肪を使える分だけ、体重の落ちが早くなると考えられるのです。

 

■低炭水化物の方が、健康に良い?

 この、脂肪を分解する能力というのは、意外に大事なんじゃないかと思い始めました。

 

 悪玉コレステロールの量は、脂肪を食べる量よりも、炭水化物の量に比例するという説があります(根拠は未確認)。

 以前は「脂肪を食うから脂肪が増えるんだろ!」と思っていたのですが「脂肪を使う能力」を考えるようになってから、考えが変わりました。

 

 体内の脂肪を減らすには、使い切るしかありません(実際には、食物繊維で腸から出す方法もありますが、それは次回)。
 だったら、脂肪を使う能力が高い人の方が、ちょっとした減食で血管や内臓の脂肪を減らすことができるはず。

 低炭水化物食は、結果として内臓脂肪や血管の脂肪も減らせることになります。

 

■多すぎれば、なんでもダメになる

  私は低炭水化物ダイエットには否定的だったのですが、今回書いたようなことを考えた結果、場合によってはアリだなと思うようになりました。

 

 ただ、ダイエットの原則はあくまで「食べた量よりも、使う量が増えると、痩せる」というもの。 

 低炭水化物ダイエットが「炭水化物だけ抜けば、何をいくら食べても大丈夫」と誤解されることがありますが、さすがにそんなことはありません。あくまで減食が基本です。

 脂肪を使う能力が上がったところで減食すれば、効率よく痩せるというくらいに考えておくとよいでしょう。

 

 ただし、前回も書いたように、長期的な安全性は確認されていません。実行する際には、そのことも考えて注意してください。

2016年

9月

02日

炭水化物と脂肪。どっちが走れる?

 前回書いた通り、「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ」の感想から。

 現在、長距離を走るアスリートは、炭水化物を中心にしたエネルギーで走るのが主流です。
 しかしこの本の主張は違います。長距離を走るアスリートは、脂肪を使って走るべきではないか、というのです。

 その論拠となるのは、体内の量。
 炭水化物は身体に蓄えられる量が限られているので、ある程度走ると使い切ってしまいます。そこでドリンクなどの補給が必要になるのですが、脂肪として蓄えられるエネルギーは、炭水化物に比べると、莫大といっていいほどの大きさ。

「君の身体には、活用できるエネルギーが16万キロカロリーある。約2千が糖質から、2万5千がタンパク質から、そして14万、実に87%が脂肪からだ」(p.362)

 著者のマクドゥーガルは、このアドバイスにしたがって、炭水化物抜きで本当に走れるようになるか、実験をしました。

 最初の数日は、半マイル(800メートル)も行かないうちに低血糖でフラフラになっていましたが、しばらくすると身体が慣れてきて、元気に走れるようになっていたとのこと。

 著者以外にも、何人ものスポーツ選手が、炭水化物抜きの食事によって好成績を出した、と書いています。 

 

・・・ここからは、八起堂の感想です。・・・

 

■炭水化物を使う方が走れる?

 上に書いた通り、現在のアスリートは、炭水化物を使って走るのが主流です。それは、炭水化物がきわめて使いやすい燃料だから。
 体内に吸収された炭水化物(糖)は、そのまま筋肉などで使えます。

 脂肪は大量に蓄えられますが、そのまま燃やすことはできません。膵臓からのグルカゴン(脂肪の分解を促すホルモン)、脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼ(脂肪分解酵素)などを使って、脂肪酸に分解しなくてはならないのです。

 炭水化物と脂肪を使って走る比較も行われていますが、いくつもの実験が炭水化物の方がよく走れるという結論を出しています。

  でも確かに、脂質を中心に長距離を走る人がいる…。
 それをどう考えるか…?

 

■脂肪を燃焼させるには準備がいる

 私は、この結果の差は「身体の準備」によるものだと考えています。

 上に書いたように、マクドゥーガル氏が炭水化物抜きの生活を始めたとき、最初の数日はすぐに低血糖で動けなくなっていました。しかし、慣れると走れるようになり、二週間するとかなり動ける身体になっていました。

 

 脂肪を使う前に分解が必要なのは、上に書いた通り。分解の速度が運動量に追い付かないと、エネルギー切れを起こします。

 しかし、意図的に低血糖の状態を続けることで、グルカゴンやリパーゼの働きを高めていたとしたら? 次々と脂肪を分解して燃やし、効率よく走れます。

 つまり、ある程度の時間を使って身体を変えていれば、脂肪を使って好成績を出せるというわけです。

 

■補給ができる条件かどうか

 ただ、必ず脂肪の方が良く走れるということもありません。
 炭水化物は体内に蓄えられないのが欠点ですが、補給さえあれば、その欠点は補えます。

 古い話では、明治期、日本にやってきたベルツ博士の体験談。
 博士が出会った人力車夫は、米、芋、麦など炭水化物中心の食事で110キロを14時間半で走っていたとのこと(ちなみに肉を食べればもっとスタミナがつくかと肉を食べさせたら、身体が重くて走れなかったそうです)。

 当時の主要な街道には、十数キロごとに宿場町があり、その間にも茶屋などがあったので、カロリー補給ができたんですね。

 現在も、ドリンクなどで補給できることを考えれば、かならずしも脂肪に切り替える必要はないように思われます。 

 

■積極的には勧めない。でも、試してみる価値も…

 脂肪を使って効率よく走る。長距離ランナーにとって、魅力的な話です。ただ、危険があるという説にも耳を傾ける必要があります。

 

 低炭水化物食は、心臓や肝臓を特殊な状態に置くので、長期的には健康に悪いという説もあるのです。脳が低血糖状態に置かれるので、落ち着かなくなったり、イライラしたりするという説も。
 また、脂肪が多すぎる食事は、膵炎の原因にもなります。

 個人的には、食べられる食品群が限られることで、栄養素の偏りが心配です。

 

 もう少ししたらはっきりしたデータも出そろうと思うのですが、現時点では、積極的におすすめはできません。

 ただ、短期間なら危険がないことはわかっています。長距離を走るスポーツ選手なら、一度試してみる価値はありそうですね。

 

2016年

8月

31日

「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ」読了

 ここしばらく読んでいた本が面白かったので、その紹介です。

 第二次世界大戦中、イギリス軍は対ドイツ戦の一環として、ナチス将軍の誘拐を計画しました。舞台はギリシャのクレタ島。地元レジスタンスの協力を得て、ナチスを出し抜き、道無き道を逃げ切る…。

 その実話を軸に、筋膜による運動、炭水化物を排除した食事、ナチュラルムーブメントなどの、身体理論が解説される本です。

 

 正直に言って、読みやすい本ではありません。

 文章自体は平易なのですが、第二次大戦中の誘拐劇と、その逃走ルートをたどる現代の視点、関係する身体理論のドキュメンタリーと、3つの視点が秩序なく入り混じって、注意深く読まないと、振り回されます。

 

 ただ、本の内容は非常に面白いものでした。とくに、身体理論に関してはいろいろと考えさせられることも多かったので、次回から何回かに分けて感想を書きます。


 

2016年

8月

10日

歳を取るほど眠れなくなるわけ

昔から不思議に思っていたことがあります。それは
「年齢が上がるごとに、睡眠時間が短くてすむ」
 という説です。

 しかし実際は、歳をとるほど、疲れが取れにくいという方が多いです。疲れが取れないのなら、かえって睡眠時間は長くなければおかしいですよね。

 疲れているのに睡眠時間が短いのだとしたら、それは「眠れない」のではないでしょうか?

 

■歳をとるほど眠れない理由

 眠れなくなる理由の一つは緊張です。

 遠足や、受験の前の日。なかなか眠れなかった経験を持つ人は多いと思います。緊張しすぎると、脳の活動が下がらないために、なかなか睡眠に入れないのです。

 これは、精神的な緊張だけでなく、肉体的な緊張でも同じです。

 筋肉は、運動神経や感覚神経を通して、脳と情報を交換していますが、緊張が強くなるほど情報交換の量は増えます。つまり、身体が緊張するほど、脳は休めなくなるわけ。

 

 大人は、日常の生活で、身体のあちこちに習慣的な緊張を抱えています(肩コリや腰痛も、その一つ)。癒着もあり、子供ほど身体が柔らかくなくなってしまうので、子供のように眠れないわけです。

 逆に言えば、ゆるめれば、眠れるわけです。

 

■ゆるめれば、健康寿命が伸びる

 マッサージ中、肩コリなどがある程度ゆるんでくると、患者さんが眠ってしまうことが少なくありません。帰り際に、
「これで、帰ってぐっすり眠れる…」
とおっしゃる方も少なくありません。

 これは、身体の緊張と睡眠の関係を証明するものと言えるでしょう。

 

 ゆっくり眠れるようになると、疲れがとれ、身体が回復してきます。高血圧、心臓疾患などは、疲れを原因とすることが多いので、健康寿命を延ばすにも役立つでしょう。

 

 緊張をゆるめるには、マッサージを受けるのも良い方法です。
 それに加えて、自分自身で身体をゆるめる練習を、生活に取り入れたいところ。

 簡単な方法としては、横になり、目を閉じて自分の身体の状態を感じる方法があります。力が入っていると感じられると、自然にゆるんできます。

 

 体系だてて知りたい方は「自律神経訓練法」で検索すると、いろんな方が解説してくださっています。

2016年

8月

05日

コラム「子供にバレエをさせるなら…」

治療院検索サイトの「ヘルモア」さんに、新しいコラムをのせてます。

「子供にバレエをさせるなら…知っておきたい三つのこと」

これまでの治療で、何人ものバレリーナの足を見てきました。

膝が痛い方、三角骨の痛みなど、いろんな痛みがありましたが、よく見ると、ほとんどの原因が、たった三つの原因に集約されていました。
それは「足は股関節から開く」「トゥシューズを履くのは12歳以降」「ねんざの後遺症」。

この三つに気を付けるだけで、防げるケガはかなり多いのです。子供にバレエをさせるなら、必ず見ていただきたいと思います。

ねんざ後遺症が気になる場合は、ご相談ください。

2016年

6月

22日

力の感覚は、アテにならない

 

 技術のあるスポーツ選手の動作は、私たち素人と比べて、軽々としていて、力みがありませんね。

 素人の私たちが早く動こうとすると、つい身体に力が入ってしまうものです。
 ここ一番の時に固くなってしまったり、ケガをしてしまったり。

 なぜ、固くなってしまうのでしょうか?

 

■「折れない腕」の原理

 合気道の初心者が最初に習う技(?)に「折れない腕」というものがあります。

 初心者は腕を伸ばし、先輩が肘と手首を持ちます。先輩が肘を曲げようとするのに対し、初心者は抵抗するという練習です。
 最初は、どんなに力を入れても、簡単に曲げられてしまいます。

 次に、初心者は自分の腕をホースだとイメージします。そのホースの中を、勢い良く水が流れているとイメージすると、先輩が頑張ってもなかなか曲げられません。

 

 この技が成立するのは、腕を曲げる「屈筋」と、腕を伸ばす「伸筋」の感覚の違いにあります。

 実は、私たちが「力が入っている」と感じるのは、屈筋が働いている時。伸筋だけが働いている時には、力の実感がないのです。

 初心者が「力を入れよう」と頑張るほど、腕を曲げる屈筋が働いてしまいます。だから、簡単に曲げられてしまうのですね。

 そこで、イメージによって伸筋だけを働かせると、曲げられなくなるというのが、この技の原理。

 

■力ではなく、位置や加速度の感覚をアテにする

 「力を入れる」感覚は屈筋の状態を表しているだけ。伸筋の状態を教えてくれません。これは、他のスポーツでも同じです。

 素人が「早く動こう」と考えるときには、つい「強い力」を出そうとします。すると、屈筋の働きが強く出てバランスが崩れ、上手く動けなくなってしまうのです。これが、身体が固くなる理由。

 

 優秀な運動選手は、身体感覚が鋭いことが知られています。目を閉じていても自分の姿勢や手足の位置、状態を、正確に把握できるとのこと。

 その身体感覚を基準に「強い力」を出すのではなく「強い力を出せる動き」を出しているので、固くならずに高度なプレーができるのです。

 昔から「基本を繰り返して正しい形を作れ」と言われるのは、力を入れなくていい(実戦のように、急いで間に合わせなくていい)状態で、身体感覚を鍛える意味もあったのでしょう。

2016年

6月

14日

人間にとって「自然な動き」とは何か

 先日いらしたお客さんと、肩こりや腰痛の原因について話している時に、

「人間にとって、本当に自然な動きは、どんなものだろう」

 という話になりました。

 スポーツ選手が、無理なフォームでプレーして身体を壊したり、悪い姿勢で腰痛や肩こりを起こしたりしますが、自然な動きができれば、防げるのではないか、というのが、その話。

 人間にとって、身体の方から出てくるような「自然な動き」があるのでしょうか。人間と動物を比較すると、可能性は薄いように思われます。


■本能は、便利だが不自由

 自然な動きといえば、動物。

 泳いだことのない犬を、いきなり水に放り込んでも溺れることはまずありません。本能の中に、犬かきの泳ぎ方が入っていて、練習しなくても泳げるのです。 
 その一方で、犬かき以外の泳ぎをする犬は、見たことがありませんね。


 本能というのは、反射のようなもの。
 鼻をくすぐるとクシャミをするとか、眠くなったらあくびが出るのと同じで、自動的に働きます。


 犬は、水に入った瞬間に「犬かきのスイッチ」が入ってしまいます。
 そのスイッチを自分でコントロールすることができないので、別の泳ぎを覚えることができないのです。


■人間にとっての自然は、本能ではない

 たとえて言うなら、犬の本能は、家電製品のようなもの。スイッチを入れた瞬間に使えるようになりますが、設計された時の目的以外のことはできません。


 比べれば、人間の方はパソコンです。最初からできることはほとんどありませんが、ソフト(今はアプリの方がわかりやすい?)を入れることで、幅広い仕事に対応できます。


 そう考えると、人間にとっての自然な動きは、本能から出てくるものではないと言えます。その人の環境や目的に合わせて、学習されたものが、その人にとっての「自然な動き」になってくるのでしょう。

 

…でも、「自然」なはずなのに、身体を壊す人がいるのは、どうしてでしょうか?

 書きたいことがまだあるので、この話、次回に続きます。

2016年

5月

27日

努力いらず!姿勢よく座るコツ

 デスクワーク時の猫背は、腰痛や肩こりのもと。そんな猫背を防ぐ、努力のいらない工夫を2つ、ご紹介します。

■パソコン画面の位置と角度を変える

 私達がパソコン作業をするとき、無意識のうちにディスプレイを正面から見ようとします。ディスプレイが上向きなら顔を上に持っていきますし、下向きにすると画面をのぞき込むために顔を下に動かすわけですね。

 そこで、ディスプレイの角度を少し高めにすると、自然に背筋が伸びます。正しい姿勢での顔の位置か、ほんの少し高めがおすすめです。

 ノートパソコンを膝において作業する方もいらっしゃいますね。身体に近いところにディスプレイがあると、どんなに努力しても顔が下向きになり、首に負担が。

 やむをえない場合を除いて、机などに置いて作業するように心がけましょう。

■椅子の後ろにクッション

 背筋を伸ばすには、骨盤を立て、腰が軽く反るようにする必要があります。

 実は、骨盤の角度を決めるのは、膝の高さです。膝がお尻より高い位置にあると、殿筋に引っ張られて骨盤が後ろに傾き、猫背になります。なぜか事務用の椅子は後ろに向かって傾斜していることが多く、猫背になりがち。

 そこで椅子の後ろ半分にクッションを入れると、膝が少し下がって、自然に背筋が伸びます。
 クッションがない場合には、椅子に浅く腰かける方法もありますね。

 どちらの工夫もすぐできて、努力もいらない優れもの。一度、お試しください。

2016年

2月

23日

子供の身体も固くなる …ストレス編

 前回は、子供の身体で癒着が生じて固くなることについてお話しました。しかし、固くなる原因は他にもあります。むしろ、こちらのほうが深刻かもしれません。

■ストレスが身体を固くする

 子供の頃、声の大きな先生が怒ると、緊張して体が固くなったりしませんでしたか? また、失敗してはいけない状況で、肩に力が入ったり。恐怖や、プレッシャーのかかる状況になると、筋肉に力が入ってしまうものです。

 ストレスがかかるのが短時間だと、すぐに筋肉が緩んで解消します。しかし、長時間ストレスが続くと、力が入っているのが習慣になって、戻りません。大人の肩こりや腰痛と同じです。

■固いと実力が出せない

 緊張した子供の動きは固く、ぎこちなくなります。
 別のところにも書きましたが、コーチが怒鳴りちらす人だったため、けが人だらけだった野球チームを見たことがあります。成績も振るわないままでした。

 強いストレスは、一時的には気持ちを引き締める効果があるかもしれません。しかし、気持ちだけではなく筋肉も引き締まって、固くなってしまいます。長期的に見れば、ケガが増えます。

 また、後ろから追い立てられるようなストレス下では、自分で考えて工夫する余裕がありません。優秀な選手にマイペースな人が多い理由は、こんなところにあるのでしょう。

 子供の身体が固い、動きがぎこちない時には、何かストレスがかかっていないかを考えてみても良いかもしれません。

2016年

2月

14日

子供の身体も固くなる -癒着編-

 小3の娘は、なかなか眠らない子供です。赤ちゃんの頃から、ほとんど寝落ちしたことがないという本格派。
 あまりにも寝付きが悪い時には、緊張を解く施術で、寝付かせることがあります。先日も背中を軽くなでてやったら、
「あー、気持ちいい」
 って、仕事疲れのOLか!

 ついでにTAMの要領で肩を動かしてみたら、意外にもパリパリ音がして、軽く動くようになりました。ということは、子供の関節でもすでに軽い癒着が生じているということ。

 関節で癒着が生じる原因は、繊維タンパク質の沈着によるもの。この原理は、大人でも子供でも変わりないので、癒着が生じてもおかしくいないわけです。

 というよりも大人になるにつれて身体が固くなってゆく要因の一つは、こうして使わない部分に沈着してゆくタンパク質によって構造が完成してゆくからではないかとも思われます(もう一つは、筋肉の使い方が決まって動く範囲が決まってくるから)。
 ときどき癒着をとってやることは、子供の成長の上で役に立つと思われます。

 …ただ、人によるとは思います。

 私が子供の頃は身体がバリバリに固くて、前かがみで指先が床につきませんでした。今の方が柔らかいくらい。
 身体の使い方次第で、リカバリーもきくのです。

2016年

1月

17日

首と頭の境目はどこ? 首のコリをとる運動

 首のコリ、それも頭と首の境目のコリで、悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。苦しいし、頭痛を起こすこともありますし。

 

■首と頭の境目は、どこ?

 私たちは、自分の身体を動かすとき、どう動いているかというイメージを持っています。このイメージにズレがあると、コリや痛みの原因になることがあります。

 たとえば、首と頭の境目はどこにあるでしょうか?

 いろんな人に聞いてみると、アゴの高さよりも少し上くらいをイメージする人が多いのです。しかし、実際の境目は、もっと上!

 耳の下を触ると、少し出っ張った骨があるのがわかりますね。実は、その高さが首と頭の境目。ついでに言うと、前後の位置も、この左右の骨の間。思ったより前にあるな、と思いませんか?

この部分、靭帯や筋肉の層が厚く、あまり動くイメージがありません。しかし、実際には首を左右に回すなどの動きで、重要な働きをします。


 首を左右に回すのも、前後に曲げるのも、この位置から動かせると思うと、動き方がかわります。
 左右の耳の下に手を当てながら、境目を意識して首を動かしてみましょう。普通の時よりも大きく動かせませんか? 

 

 ■動かすだけで、コリは減る

 首と頭の境目のイメージを変えると、動きが増えて緊張がとけます。
 先日いらした、患者さんでは、この動きを少し練習していただくだけで、みるみるうちに首が柔らかくなってゆくのが分かったほど。

 とはいうものの、この部分は、靭帯が厚く、筋肉層の重なりも多いので、組織の部分が貼りつきやすいところでもあります。とくに第一頚椎周辺は、固くなりやすい傾向がありますね。

 何度か試して、それでもコリや痛みが残る場合には、頚椎が貼り付いたまま、固まっていることがあります。

 首の後をなでてみて、骨の凸凹が不揃いな場合は、頚椎の関節か、周りの筋肉が固まって、動かなくなっている可能性があります。そこを中心として首のコリが発生するので、癒着をとる治療をしたほうが良いでしょう。お気軽にご相談ください。 

 

※関連記事 「ストレートネックを自分で治す方法②」

 

2015年

9月

20日

「格闘技の筋肉は、マシンを使って鍛えてはならない」?

 上記のセリフは、昔のマンガで読んだもの。

 その当時は、単なる根性論かと思っていたのですが、今になってみれば、納得できる部分があります。

■筋トレと、実際の運動は違う

 筋トレは、筋肉に負荷をかけて鍛えるのが目的。目的の筋肉以外の部分は動かないようにして、狙う筋肉に負荷をかけてゆきます。

 ところが、格闘技にせよ他のスポーツにせよ、実際の運動でそんな筋肉の使い方をするものはありません。いくつもの筋肉の連動で負荷を分担し、全体として大きな速度や力を出せるようにしています。

 ベストコンディションの選手が「身体が軽い!」というのは筋肉のコンディションがいいというだけではなく、負荷の少ない動きができていることを示しているのでしょう。

■重く使う筋トレ、軽く使う練習

 以前、武術の師匠に「同じ動作がより軽く、負担少なく動けるように考えなければならない」と言われたものでした。

 筋肉が力を出しやすいポジションを利用するとか、関節の連動で動き出しの負担を減らすというような技術を重ねて、効率のいい動きのプログラムを作るのです。

 筋トレの機械は、効率よく狙った部分に筋肉をつけるのには、適しています。その一方で、動きのプログラムを作ることは、目的になっていません。
 いわば、動きの要素の半分です。もう半分を、意識的に補ってゆく必要はありそうです。

「マシンを使ってはいけない」は言い過ぎとしても、そうした配慮は必要になってくるでしょう。

お知らせ

今年はお盆休みを取らず、カレンダー通りの営業をします。

院長 池浦誠

1969年生まれ。
2003年に鍼灸師・マッサージ師の国家資格取得。
2005年に開業。同年関節リリース技法、TAM手技療法を発表。
2017年に技術指導DVD、「関節リリース5テクニック」を上梓、指導にあたっている。

八起堂連絡先

奈良市西大寺新池町3-10
電話 080-3112-8738
hakkidou.tam@gmail.com

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ブログ最新記事

2018年

7月

25日

AIから見る上達論

 少し前、NHKで「人間って何だ?」というAI(人工知能)関連の番組をやっていました。その中で出てきた「過学習」の概念が面白かったんですよ。

 AIに学習させるときにはディープラーニングという方法が用いられます。これは、AIに大量のデータを読み込ませ、分析させることで、学習をさせる方法。複雑な状況から結論を引き出すのが得意で、ものによっては人間以上の能力を発揮することもあります。

 例えばAIに「イヌとは何か」を認識させるためには、たくさんの犬の写真を読み込ませ、判断させます。それに対して正解・間違いのフィードバック(結果を見ての修正)を何百万回も繰り返すうち、AIは自分で必要な条件を覚え、犬の画像を見分けられるようになります。

・過学習…丸覚えは使えない
 AIに学習させる上で問題になるのが「過学習」です。わかりやすく言うと、データを丸暗記しすぎて、応用力がなくなること。

 例えば、データの中に黒い柴犬の画像があったとします。AIはその画像を分析し、「毛が生えている」とか「牙がある」といった犬の判断に重要な特徴を読み込みます。しかし同時に「色が黒い」とか「耳が立っている」というような、重要でない特徴をも読み込むでしょう。

 もしAIが、重要でない情報まですべて使って判断したら、ゴールデンレトリバーは、黒くない、耳が立っていない、という理由で「犬ではない」と判断されてしまいます。

 ディープラーニングを成功させるには、どの情報が重要で、どの情報が重要でないか、AIがわかるようにプログラムすることが必要。研究者は、その対策に頭を絞るのだそうです。

・正解率を高める試行錯誤
 では、どうやって重要性を認識させるか。代表的な方法の一つが「ドロップアウト」です。大まかに言うと、判断に使っている特徴のうち、いくつかをわざと使わなくすること。

 たとえばA、B、C、Dという4つの特徴を判定に使っているとします。Aを使うのをやめて、B、C、Dだけで判断を行い、それでも正解率が高ければ、Aは重要ではないとわかります。逆にAを使わずに判断を行って正解率が下がれば、Aが重要だとわかりますね。

 こうして使う情報、使わない情報をランダムに入れ替えながら試行錯誤することで、より正確な判断ができるようになってくるというわけです。

・上達のための試行錯誤とフィードバック
 ディープラーニングは人間の学習をもとにしたものですから、こうした原則は人間でも同じです。丸覚えルーチンワークでは、何年繰り返しても上達しませんし、試行錯誤していても、結果が出るまでの間隔が長ければ、学びは遅くなります。
 これは技術側の問題でもあって、技術を要素分解しやすい技術ほど、またフィードバックが早い技術ほど、学びやすいことを示しています。

 ちなみに、TAM関節リリースは、要素の分解が明確で、結果がすぐ出る技術です。…と最後に我田引水(笑)

2018年

7月

08日

オスグッド病の発生・再発予防のコツは…尻で跳ぶ!

オスグッド病を起こしやすい膝関節の構造

 

 オスグッド病の正式名称は、オスグッド・シュラッター病。スポーツをする十代の少年少女に多く発生する、軟骨の炎症です。

 ちょっと膝の構造を見てみましょう。長い骨を動かすのは、端についた一本の腱だけ。この腱を引っ張って、骨を動かすところを想像してみてください。すごく大きな力が必要な感じがしませんか? 長い棒の一番端っこを持って動かしている感じ。かなり大きな力が必要です。

 その大きな力が、腱と骨の接続部に繰り返しかかることで、成長期の軟骨が損傷し、炎症を起こすのがオスグッド病なのです。

 

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2018年

4月

06日

肩甲骨を上手につかうには、鎖骨を意識するといい

先日、水泳をしている方が、足の治療でいらっしゃいました。
足の方は関節リリースで治療したのですが、その際、水泳で肩甲骨をうまく使えないとおっしゃいます。

■肩甲骨の動きは、鎖骨で意識する。

肩甲骨は肩にある平たく大きな骨です。
上下左右、回転運動を行って、腕の動きを補助しますので、上手に使えるかどうかで腕の可動範囲は大きく変わってきます。とはいえ、見えにくい場所にあるため動きを意識しにくい骨でもあります。

そこで、鎖骨。肩甲骨は鎖骨によって胴体につながっているので、鎖骨を意識すれば、肩甲骨の動きをイメージしやすいのです。

例えば、右の肩甲骨を動かすとしましょうか。
首のすぐ下にある骨のへこみ。これが鎖骨の始まりです。その部分に左手の親指を当て、人差し指で右側の鎖骨に触れます。これで、指先で鎖骨の動きを感じることができます。
そのまま、右肩を上下や前後に動かしてみましょう。鎖骨が動いているのがわかると思います。

■鎖骨から先が、腕だと考えてみる

鎖骨の動きがわかったら、次は腕を動かします。ただし、腕と一緒に鎖骨が動くように意識してみてください。腕と鎖骨が一緒にうごくことで、腕の動く範囲が大きく広がっているのがわかると思います。
もっと言えば、鎖骨から先が腕だと思ってください。始まりの場所が首の下だ、と思うだけで腕の動きが変わってくるはずです。

 …というようなことを、お客様に語って、動かしていただくと
「そうですね、ほんとに大きく動きますよ!」
 と喜んでいただけました。

「そうでしょう、そうでしょう」
 と言いながら、自分でもやってみたら、私の腕も、いつもより大きく動きます。偉そうに言っていながら、私も肩甲骨が使えていなかったようです。
 思ったより使えていないのが、肩甲骨。一度試してみてください。