なぜ、痛みや不調は連鎖するのか(2)

 前回の続きです。

④筋膜、皮下組織の動きによる連鎖
 このところメディアでも注目の筋膜。
 人間の全身には、筋膜という膜状の組織があります。筋肉一本一本を包む個別の筋膜から、全身を包む、全身タイツのような筋膜まで。
 また、皮膚・皮下組織も全身を包んでいます。

 この筋膜や皮膚は、身体の動きに合わせて伸びたり動いたりします。例えば肘を曲げると、腕の外側の皮膚や筋膜は、曲がった分だけ伸びたり動いたりしなくてはなりません。

 そこで、一箇所の動きが悪くなると、その部分とつながっているところは動きにくくなるのです。

⑤神経の走行による連鎖
 前回も書いたとおり、神経は脳から全身の末端までを結んでいます。その途中のどこかで神経に障害が発生すれば、その部分から先の全部が影響を受けます。

 当然ですが、この影響は中枢から末端に向かい、その逆はありません。

⑥自律神経を通した連鎖
 これは、厳密には連鎖とは少し違いますが…。

 前述したとおり、AKA(関節運動学的アプローチ)は、仙腸関節を非常に重視しており、この部分を調整することで、全身の痛みや動きに改善が見られるとしています。

 私自身も見たことがありますが、確かに仙腸関節の調整だけで別個所の痛みが減少し、可動性が改善するケースがあります。

 その一方で、痛みは減少しても、その場所の癒着などは残っていました。構造にまでは作用していないようです。

 とすれば、考えられるのは神経の作用。仙腸関節の痛みや緊張の緩和が自律神経に働き、全身の筋緊張を下げている、または痛みの閾値を上げている(知覚過敏を抑えている)のではないかという推論ができます。

 自律神経の作用なら、キーは仙腸関節だけではないはず。どこの治療であれ、痛みや歪みが消えれば、効果は全身に波及することになります。
 例えば、八起堂では足の調整であちこちの痛みを減らすことをやります。自分では①の「積み木の原理」のつもりですが、この自律神経の問題もいくらかは作用しているのかもしれません。

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 こうして二回にわたって書いてきましたが、関連を追求するにも、いろんな方法があるわけです。

 私がいつも意識しているのは①、②、④。ときどき利用するのが③と⑤で、⑥を意識して使うことはありません。この辺りは、治療する人の感覚や方針、価値観によります。

 治療の選択肢は多彩で、自由度があります。あの手この手を使って、より効果の高い治療を模索するのも、治療家の楽しみの一つですね。

お知らせ

休みなどは、ここでお知らせします。

八起堂連絡先

奈良市西大寺新池町3-10
電話 080-3112-8738
hakkidou.tam@gmail.com

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院長 池浦誠

厚生労働大臣認定マッサージ師、鍼灸師。
2005年、AKAなどの関節治療技術を研究し、TAM関節リリース法を創始。
2017年に技術指導DVD「関節リリース5テクニック」を上梓、治療と指導にあたっている。

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2019年

5月

13日

鍼治療による筋膜リリース

 八起堂は手技中心の治療院ですが、状況によっては鍼を使います。
 いわゆる東洋医学の鍼ではなく、靭帯・筋膜を対象とした鍼です。

 筋膜や靭帯が貼り付いて、動きが悪くなった部分。そうした部分に鍼を打つと、動きを改善することができます。筋膜が自由に動くようになることで、動きやすさが変わり、不調の回復に繋がります。

 以前はトリガーポイント(コリの中心)に鍼を打って緊張を緩める方法を使っていましたが、私にはこの筋膜リリース鍼の方が、感覚的に使いやすいです。八起堂の治療は、関節、筋膜などの動きを良くする手技が中心ですので、その施術と併用しやすいので、より効果的な治療ができるようになったと思います。

 ついでに言えば、トリガーポイント周辺には、癒着によって動きの悪い部分があることが多いように感じます。そうした部分に鍼を打つことでトリガーポイントの解消が見られることも多いので、トリガーポイントそのものが、組織の癒着と関連している可能性も考えられます。これから確認してゆくべきところですが…。

 癒着リリース鍼は、打つポイント(ツボ)を見つけるのが簡単で、効果の検証も容易です。鍼灸師の方で、興味のある方には、お伝えしてゆきたいと思っています。

 

2019年

4月

18日

スケート選手が引退してゆくわけ

 フィギュアスケート。氷の上で、回転、ジャンプと人間業とは思えないような演技をこなす、ウインタースポーツの花形です。

 私は仕事柄、選手の足を見ることが多いのですが、多くの選手を見ているうちに気づいたことがあります。

 どの選手も、デビューしてすぐの頃は、足のバランスがいいのです。とくに、印象に残っているのは、浅田真央選手。
 体幹からスケートのエッジの先まで、重心の線が一本に通っていて、無理な力がかかっていません。着地が少しズレても、柔らかい足首でスッと修正して、無理なく受け止めます。この正確さと、柔らかさがあってこその、神がかった演技だったと思います。

 しかし引退直前の演技では、普通に滑っているだけでも、足に力が入っているのがわかりました。足にダメージが蓄積し、ズレた重心線を、筋力で抑え込んでいたのです。

 これは他の選手も同様で、年月を経るに従って、重心線のズレを力で押さえ込むようになり、やがて限界を迎えて引退してゆきます。

・足へのダメージ蓄積を防ぐ方法は
 足の不調は、蓄積します。
 使いすぎの炎症、捻挫などのケガによる炎症が、足首の関節に癒着を発生させます。癒着は、きちんと解消しない限り残り続け、関節を固く、動きにくくしてゆくのです。

 予防には、まず炎症を防ぐこと。
 練習などのあと、熱を持っていたらアイシング。炎症の拡大を防ぐことが、癒着の予防になります。
 捻挫などのケガは、きちんと休んで炎症を拡大させない。治ったら、リハビリをきちんとして、動く範囲を回復させること。

 そして、定期的に足の関節をメンテナンスして、動きを妨げる癒着を解消するのが重要だと思います。

 もし、彼ら彼女らの足が固くならずに動き続けていたなら、もっと長く現役で活躍できたのではないかと思うと、残念に思います。

2019年

4月

04日

膝に溜まった水は、抜くべき?

膝を痛めたときに起こりがちな症状の一つが、関節に貯まる水。

 膝のお皿(膝蓋骨)の周りが膨れてくることで気が付きます。

「この水は、抜かない方がいいですか?」と、患者さんに聞かれることがありますが、結論から言うと「どちらでもいい」です。

・膝に貯まる水は「結果」
 膝の水は、炎症によって関節内に液体が貯まるものです。いわば炎症の「結果」であって、何かの作用をするわけではありません。
 水があるからといって悪化することはありませんし、逆に抜いたことで悪化することもありません。

「水を抜きはじめると、癖になるっていうから」と、処置を敬遠する方もいらっしゃいますが、もちろん、癖になることもありません。
 実際、お医者さんでも「どうしますか?」と患者さんの意思を確認するケースがほとんど。

 水の有無よりも、どういった理由で炎症が起きているかを知り、対策を取ることのほうが大事です。体重の増加や筋力不足が原因と考えられるなら、その対策をとる必要があります。

・膝の痛みは、足首から治す
 臨床的には、足首が固く、傾いているために膝を痛めるケースが多いと感じています。とくに、つま先を上げたときに、極端に外側に向かう場合は、歩くたびに足がねじれるので、膝の負担が大きくなります。
 足関節の動きを改善することで、膝の痛みが減る方は多いのです。