完全食と、現実主義

 ネットのwiredで、アメリカの「ソイレント」という合成食品のニュースを読みました。(→リンクこちら

 たった一つの食品で、すべての栄養をまかなうことを目指して配合された食品です。

■完全栄養食、ソイレント

 栄養食というと、大塚製薬のカロリーメイトを思い出す人が多いと思います。しかしカロリーメイトは脂肪が多く、タンパク質が少ない構成で、食物繊維もほとんど入っていません。これは、お菓子としてのおいしさを追求したためです。

 

 今回話題のソイレントは、カロリーやビタミン、ミネラル、その他多くの栄養素を完全に理想的に合成したもの。本当に、これだけを食べて生きていこうという食品です。

 元々は、貧乏な研究者が、食費を浮かせようとして考えたとのこと。必要な35種類の栄養分をそろえるだけなので、一ヶ月あたりの食費が50ドルになったといいます。

 ちなみに味は、WIREDの記者によると
「水で薄めたホットケーキ生地のような感触で、不快な味とは思わなかった。まずくはない」
 だそうです。

 

■食事は何のためにある?

 開発者は、食事には、二つの目的があると主張します。栄養摂取のための食事と、味やコミュニケーションを楽しむ食事の二種類。
 それは一方に限定する必要はなく、使い分ければ良いというのです。

 また、環境問題を考え、将来的にはこれを植物性の産物だけで作り上げるとも言います。

 ファストフードで欠かせない肉や乳製品は、実は多くの水と穀物を消費します。それをソイレントに置き換えれば、地球環境への影響も少なく、人口が増えても飢餓の可能性を減らせるとしています。

 

■現実的な方法論の提示

 もちろん、この食品を「食文化の破壊」と批判することはできるでしょう。それだけで本当に健康が保てるのかという問題もあります。

 すべての人が健康的な食生活に関心を持ち、お金と時間と手間をかけることが、理想的なのは確かです。しかし、それが現実的に難しいのは、身の回りを見れば、わかりますよね。

 難しいからこそ、ファストフードやジャンクフード、カロリー過多の食生活で、健康を害する人がでてくるわけで。

 人を変えるよりも、方法を変えるほうが簡単です。
 この完全栄養食は、現実主義から生まれた策だと言えます。少なくとも、コンビニ弁当やファストフードだけで暮らすよりは、よほど健康を害する人が減るはず。

 

■治療の世界でも同じ

 これは、私たちのような治療の世界でも同じ。

 腹八分に食べて、適度に運動して、姿勢や体の使い方に気を付ければ、健康を害する可能性は、かなり少なくなります。
 でも、それを世の中の人、全員に意識してもらうのは、無理ですよね?

 

 人によって時間をかけるべき点は異なりますし、健康に関しての知識や技術が不足しているなら、それを別の人間が補う、という方法は、あって良いはずです。
 個人的には、ソイレントはあって良い食品だと思います。 

 

 とりあえず、一回は食べてみたい。続けて食べるのは無理かもしれないけど。