炭水化物と脂肪。どっちが走れる?

 前回書いた通り、「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ」の感想から。

 現在、長距離を走るアスリートは、炭水化物を中心にしたエネルギーで走るのが主流です。
 しかしこの本の主張は違います。長距離を走るアスリートは、脂肪を使って走るべきではないか、というのです。

 その論拠となるのは、体内の量。
 炭水化物は身体に蓄えられる量が限られているので、ある程度走ると使い切ってしまいます。そこでドリンクなどの補給が必要になるのですが、脂肪として蓄えられるエネルギーは、炭水化物に比べると、莫大といっていいほどの大きさ。

「君の身体には、活用できるエネルギーが16万キロカロリーある。約2千が糖質から、2万5千がタンパク質から、そして14万、実に87%が脂肪からだ」(p.362)

 著者のマクドゥーガルは、このアドバイスにしたがって、炭水化物抜きで本当に走れるようになるか、実験をしました。

 最初の数日は、半マイル(800メートル)も行かないうちに低血糖でフラフラになっていましたが、しばらくすると身体が慣れてきて、元気に走れるようになっていたとのこと。

 著者以外にも、何人ものスポーツ選手が、炭水化物抜きの食事によって好成績を出した、と書いています。 

 

・・・ここからは、八起堂の感想です。・・・

 

■炭水化物を使う方が走れる?

 上に書いた通り、現在のアスリートは、炭水化物を使って走るのが主流です。それは、炭水化物がきわめて使いやすい燃料だから。
 体内に吸収された炭水化物(糖)は、そのまま筋肉などで使えます。

 脂肪は大量に蓄えられますが、そのまま燃やすことはできません。膵臓からのグルカゴン(脂肪の分解を促すホルモン)、脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼ(脂肪分解酵素)などを使って、脂肪酸に分解しなくてはならないのです。

 炭水化物と脂肪を使って走る比較も行われていますが、いくつもの実験が炭水化物の方がよく走れるという結論を出しています。

  でも確かに、脂質を中心に長距離を走る人がいる…。
 それをどう考えるか…?

 

■脂肪を燃焼させるには準備がいる

 私は、この結果の差は「身体の準備」によるものだと考えています。

 上に書いたように、マクドゥーガル氏が炭水化物抜きの生活を始めたとき、最初の数日はすぐに低血糖で動けなくなっていました。しかし、慣れると走れるようになり、二週間するとかなり動ける身体になっていました。

 

 脂肪を使う前に分解が必要なのは、上に書いた通り。分解の速度が運動量に追い付かないと、エネルギー切れを起こします。

 しかし、意図的に低血糖の状態を続けることで、グルカゴンやリパーゼの働きを高めていたとしたら? 次々と脂肪を分解して燃やし、効率よく走れます。

 つまり、ある程度の時間を使って身体を変えていれば、脂肪を使って好成績を出せるというわけです。

 

■補給ができる条件かどうか

 ただ、必ず脂肪の方が良く走れるということもありません。
 炭水化物は体内に蓄えられないのが欠点ですが、補給さえあれば、その欠点は補えます。

 古い話では、明治期、日本にやってきたベルツ博士の体験談。
 博士が出会った人力車夫は、米、芋、麦など炭水化物中心の食事で110キロを14時間半で走っていたとのこと(ちなみに肉を食べればもっとスタミナがつくかと肉を食べさせたら、身体が重くて走れなかったそうです)。

 当時の主要な街道には、十数キロごとに宿場町があり、その間にも茶屋などがあったので、カロリー補給ができたんですね。

 現在も、ドリンクなどで補給できることを考えれば、かならずしも脂肪に切り替える必要はないように思われます。 

 

■積極的には勧めない。でも、試してみる価値も…

 脂肪を使って効率よく走る。長距離ランナーにとって、魅力的な話です。ただ、危険があるという説にも耳を傾ける必要があります。

 

 低炭水化物食は、心臓や肝臓を特殊な状態に置くので、長期的には健康に悪いという説もあるのです。脳が低血糖状態に置かれるので、落ち着かなくなったり、イライラしたりするという説も。
 また、脂肪が多すぎる食事は、膵炎の原因にもなります。

 個人的には、食べられる食品群が限られることで、栄養素の偏りが心配です。

 

 もう少ししたらはっきりしたデータも出そろうと思うのですが、現時点では、積極的におすすめはできません。

 ただ、短期間なら危険がないことはわかっています。長距離を走るスポーツ選手なら、一度試してみる価値はありそうですね。

 

お知らせ

義足のプロダンサー、大前光市さんのブログで紹介していただきました。

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院長 池浦誠

1969年生まれ。
2003年に鍼灸師・マッサージ師の国家資格取得。
2005年に開業。同年関節リリース技法、TAM手技療法を発表。
2017年に技術指導DVD、「関節リリース5テクニック」を上梓、指導にあたっている。

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2018年

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16日

マンガで身体をねじって抜刀する理由

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 抜き付けが遅くなるだけでなく、刀のコントロールがしにくくなるからです。

・モーメントが邪魔をする
 この抜き方では、刀を左側に大きく抜いて前方へ回す、大きな円のコースを描きますね。
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 また、こうして加速された刀には大きなエネルギー(勢いと思ってください)があるので、相手に当たれば大きなダメージを与えることができます。しかし、狙いを外したときには一転、ピンチに。

 物体には慣性の法則(動いているものは動き続けようとする)が働くので、大きなエネルギーを持った刀は止めるのも、方向を変化させるのも難しくなるからです。

 そこで、実際の居合では、早く、コントロールしやすい方法で抜きます。その詳しい話は次回に回すとして…。

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 では、なぜマンガの中でこうした構図が使われるのか。それは、力強い絵になるからです。
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 静止画で表現しなくてはならないマンガでは、こうした工夫が重ねられて、現在に至っているんだなあ、と感心します。

2018年

10月

15日

義足のプロダンサー、大前光市さんのブログで紹介していただきました

 大前光市さん。

 リオパラリンピックの閉会式や、去年のNHK紅白歌合戦、平井堅さんとの共演で、ご存知の方も多いと思います。
 八起堂治療院に来てくださるようになったのは、去年秋頃から。

 自分の身体感覚に真摯な方なので、施術するこちらも、その熱意に引っ張られるように深く集中します。おかげで、何度も施術をしているうちに私の方がレベルを引き上げていただいたと感じています。

 NHKの番組などでは、厳しい表情が取り上げられることが多いのですが、素顔は楽しい、話好きな方です。とくに、身体の使い方の話などになると熱が入ってきて、治療中でも立ち上がって実演してくださったり。
 最近、私がブログで身体の使い方について書いているのも、お話に触発されて考えることが増えたからなのでした。

 これからも、勉強させていただきたいと思っています。

大前さんのブログは こちら

2018年

10月

14日

原因不明の腹痛は、腰痛を疑ってみる

 しつこく腹痛が続く時、ありますよね。
 もちろん、そんなときはまず病院へ行くべきです。ただ、内視鏡を飲んでも、エコーをかけても、どうしても原因がわからない時もあります。

 病院で、どこにも異常がないと言われて、それでも腹痛が続くときには一度、腰痛を疑ってみるといいです。  

・外の痛みが内にひびく
 鍼灸を科学的に説明する説に、「体壁・内臓反射」があります。平たく言うと、筋肉の緊張が自律神経を通して内臓の調子を狂わせる、というもの(内臓→筋肉の逆コースもあります)。
 腰から始まった痛みが、内臓にひびくわけです。

 人間の身体は、一番痛い場所を意識するようになっていて、二番目はあまり気にしません。そのため、腹に感じる痛みが腰の痛みより強いと、「腹だけが痛い」と感じがち。
 しかし、内臓そのものには原因がないので、内臓を調べても異常が見つかりません。「なんでだろう?」ということになるわけです。

 腰痛持ちが多いことでわかるように、腰は慢性的に緊張しやすい場所。
 普通に腰痛治療をする分には、副作用もなく、リスクもありませんので、原因不明の腹痛が続くなら、試してみて損はないと思います。