筋膜で運動する…ナチュラルボーン・ヒーローズ

 ダイエットがらみで遠回りしましたが、ようやくまた「ナチュラルボーン・ヒーローズ」の読後感想に戻ってきました。

■筋膜で運動する

 この本では一章を割いて、筋膜を運動に活かすことについて書いています。

 筋膜は、筋肉を包む膜。実際には筋肉だけではなく、皮下組織や靭帯も含め、何重にもなって全身を覆っている弾力性の膜です。

 私達が身体を動かすときには、筋肉の力で骨格を動かすのが普通ですが、この本では筋膜の弾力を活かす方法を紹介しています。

 

 例えば、縄跳びをしているときなど、慣れた人はあまり力を使わず、軽く跳んでいるように見えます。これは、筋膜の弾力の助けを借りているので、エネルギーのロスが少ないといいます。

 また、指先を強く広げるようにすると、腕の筋膜が緊張します。その状態で腕立て伏せをすると、筋膜がバネとして働くので、楽に腕立て伏せができるといいます。

 

■ここからは八起堂の感想

 八起堂の治療でも、筋膜や靭帯を扱います。くっついたり、縮んだりした筋膜や靭帯を伸ばすことで、身体の構造そのものを変えることができるので、非常に有効な治療法。

 

 ただ、運動に関する考え方では「ナチュラルボーン・ヒーローズ」とは少し異なります。

 「ナチュラルボーン・ヒーローズ」では、筋膜の弾力が強調されています。いわば、バネやゴムのような扱い。

 私自身はむしろ、力を伝達するロープや歯車のように感じています。ある場所で発生した力を、別の場所に伝える役目です。

 

 古武術の世界では「手をもってせず、足をもってせず」などと言われます。体幹部の筋力や、体重という強力な力を有効に活用する意味です。

 例えば刀を振るとき。腕の力で振るのではなく、体幹部で腕を動かすようにすると、軽く使えたりします。

 歩くときにも、足の筋肉で蹴る力を主にするのではなく、わざとバランスを崩すようにして進む技法があります。

 中国拳法などでは、重力を打撃力に変換する技法があるとか。それも筋膜を通して手足まで力を導いているのではないでしょうか。

 

 筋膜は、全身を覆う多層構造です。

 どの筋膜を張り、どの筋膜をゆるめるかの操作に熟達すれば、筋力とはまた別の可能性が見えます。それを研究するのも楽しいものです。

 

お知らせ

院長 池浦誠

1969年生まれ。
2003年に鍼灸師・マッサージ師の国家資格取得。
2005年に開業。同年関節リリース技法、TAM手技療法を発表。
2017年に技術指導DVD、「関節リリース5テクニック」を上梓、指導にあたっている。

八起堂連絡先

奈良市西大寺新池町3-10
電話 080-3112-8738
hakkidou.tam@gmail.com

こちらからの返信メールが、
迷惑メールフィルタに引っかかってしまうケースがあります。(特に、ケータイのメール)

一日待っても返信がない場合は、改めて電話でご連絡下さいますよう、お願い致します。

ブログ最新記事

2018年

11月

15日

古武術技法⑨ 円の動きがうまくいかない時は

 初心者が円の動きをしようとして失敗する時は、たいてい、自分の関節を中心とした円を描こうとしているときです。
 失敗するのは、関節を中心とした円運動が「弱い円運動」であり、「読まれやすい運動」だから。

 車のハンドルを回す時、まわりを持って回すと軽く回りますが、中心近くを持つと、重くて回しにくいですよね。
 自分の関節を中心とした円では、自分の関節が円の中心です。テコの原理と同じで、中心から遠い相手の力が強く、中心の自分が圧倒的に不利になってしまいます。円の中心をコントロールしつつ、自分自身が円周で力を出せるのが、強い円の条件。

 また、関節を中心とした円では、相手にとって見慣れた動きなので、比較的予想しやすく、対応しやすいのです。関係のない空間に中心を置いた円は、そうした基準が見えないため、相手は対応しにくくなります。

 そんなわけで、円の動きの円は、何もない空間に仮定された円が有効。
 ただ、こうして円を想定するのはあくまで、最初にイメージしやすいようにするため。慣れて、回転と移動を共存させる感覚がわかってくると、もっと自在に動けるようになります。

 

2018年

11月

13日

古武術技法⑧ 円の動きとは

合気道などで言われる「円の動き」。相手の力とぶつからず、動きを導く技術です。

 しかし、単に回ったり、丸く動けばいいというわけでもなく、イメージがしづらいところがあります。

 今回は、治療を通して学んだ「相手とぶつからない円の動き」について、書いてみます。

・回転しながら動く円
 私が実感している円の動きは、相手の力を円周に受けて、回転しながら動いてゆく円です。

 合気上げを例に取ると、前から押さえられる力で、前腕を仮想の円に沿って回します。と同時に、体の動きで円そのものを前に押し出してゆくと、前腕は相手とぶつかることなく、前に出ているというわけです(図)。

 ちなみに、ここではわかりやすい大きさの円を描きましたが、実際には腕の幅に収まってしまうような小さな円だったり、全身の動きで使うような大きな円(円周が、かなり直線に近くなってくる)だったりします。球のような3Dの円だったり、大きさが変化する円だったりすることも。

・円の動きの本質は、動きの共存
 なぜ、円の動きは有効なのでしょうか。
 一つには、直線的な力のぶつかり合いを、回転と移動という、種類の違う力に変換してしまうこと。この2つは共存できるので、直接的なぶつかりあいがなくなります。

 例えば「右に行きながら、左に行く」はできませんよね。同じ種類の力だから、ぶつかってしまいます。
 しかし「右回りしながら、左に行く」なら、簡単にできます。どちらの力も独立したまま共存できる。それが円の動きです。

 ぶっちゃけて言えば、混じらないなら、円である必要ですらないのかもしれません。

2018年

11月

12日

なぜ、クジャクの羽根は大きいのか?

急に雑談になりますが…。

進化論の原則は、適者生存のはず。それなのに、明らかに生き残るのに不利な性質を持った生き物がいますよね。

 例えばクジャクのオス。なぜあれほど尾羽根が大きいのか? 
 理由は、メスが羽根の大きい雄を選ぶからです。生き残る確率は低くても、子孫を残せる確率が上がるので、羽根の大きさが受け継がれるとされています。

 しかし、ここで問題が。メスはどうして、生き残るのに難しい条件を持ったオスを相手に選ぶのでしょうか。

・ハンディキャップ理論?
 今、主流は「ハンディキャップ理論」だそうです。
 尾の長いクジャクのオスは、生き残るのに不利なはず。それでも生きているからには、ハンディキャップを補ってあまりあるだけの筋力や瞬発力をそなえていると考えられます。そこでメスは、尾の長いオスが優秀と考えて選ぶ、という理論です。

 この理論、変だと思うんですよね。
 理論通りなら、クジャクのメスは「長い尾が不利だ」という知識を持ち、さらに「不利なのに生きているのは能力が高いからだ」と推論していることになります。こんな論理的判断力がクジャクにあるかどうか。
 クジャクならまだしも、シュモクバエ(画像検索してみてください。すごい顔をしています!)のような昆虫に、そんな判断力はありません。
 もっと、単純な基準で判断をしていると見るべきです。

・大きさを図るルールの問題?
 多くの動物では、身体の大きなオスが選ばれる傾向があります。身体の大きさは餌を得る能力や戦闘力を直接的に示すので、妥当な方法です。しかし野生動物は、オスの大きさを図るハカリも物差しも持っていません。
 個人的には、この大きさの基準が問題だったのではないかと考えています。

 たとえばクジャクのメスが、正面から見た身体の大きさでオスの大きさを測っているとしたらどうでしょうか。羽根でもなんでも広げて、面積を稼いだオスが有利になります。
 体の長さで測っているとしたら、尾羽根だけを伸ばして長く見せかけるのが有利(サンコウチョウ)。
 両目の間隔で測っているとしたら、目だけ左右に伸ばすのが有利ですね(シュモクバエ)。

 スポーツのルールが変わると、選手のプレイスタイルが変わるように、一定のルールのもとで有利な方向に進化したのが、今の不思議な形ではないかと考えます。

・ランナウェイ理論、復権して!
 ハンディキャップ理論の前には、ランナウェイ理論(ランナウェイは暴走の意味)という理論がありました。これは「多くのメスがたまたま好きになった形質が進化に影響する」という説。しかし、不合理な好みが進化の過程で生き残れるのか、という批判があり、ハンディキャップ理論にとって変わられたという経緯があります。

 しかし、メスの好みに明確な理由があれば、ハンディキャップ理論よりも、ランナウェイ理論の方が納得しやすいと思うのは、私だけでしょうか?