現場の力…TAM講習会の話

 トヨタ自動車は、トヨタ方式と言われる生産管理法で有名です。

 そのトヨタ方式の生みの親、大野耐一氏が、工場で生産ラインの配置変えを指示した時のこと。指示通りにてきぱきと配置変えした部下たちを、大野氏は叱りつけました。
「なんで俺のいう通りにするんだ!」

 別に、矛盾することを言っているわけではないのです。
「現場の人間は、自分よりも現場のことを知っている。俺の指示に現場の知識を加えれば、もっと良いラインになるはずだ」
 というのが、大野氏の意図。

 TAM手技療法の講座をやっているときに、この話を思い出すことがあります。 

 TAMの治療で大事なのは、テンションとモーションによる癒着の解消です。治療すべき個所に適切に力がかかりさえすれば、どんな持ち方をしようが、動かし方をしようが構いません。
 しかし真面目な受講者さんほど、私のやるとおりにやろうとして一所懸命に苦労しています。

 そこでいつも、
「TAMの、癒着解消についてのイメージをもってください。そして、立つ位置とか、持ち方などは真似しないで、臨機応変に」
 と、繰り返しお伝えしています。

 先ほどの話で言えば、術者それぞれの状況が、現場にあたります。手の大きさや、患者さんの体格、重点を置く治療箇所などに合わせて、有効な施術方法は変わるはず。

 教えられることはすべて教えますし、質問にもできる限り応えます。でも治療家は、最後はみんな「一人一流」。いずれは改善を重ねて、自分だけの方法を持つようになってほしいのです。

 それをお手伝いするTAM講座でありたいと思っています。