先日いらした患者さん。
肘の屈伸で痛みが出ます。
肘関節そのものの治療では一時的な効果しかなく、より根本的な原因を探して観察しました。
肘内側から手首の橈側にかけての筋肉に強い張りがあることから、手首に問題があると判断。
手首は、手根骨全体がが橈骨に対して掌側にズレた形となっていました。手根骨の貼り付きをTAMで処理、位置を正常にしました。
その後、肘関節を調整したところ痛みが大幅に減少したとのこと。次回に経過を観察予定。
「不調は先→元」という法則は、ここでも健在でした。
足腰の調子を崩した患者さんから
「私の歩き方が悪いからでしょうか?」
と聞かれることがありますが、そんなことはまずありません。
・正しい歩き方なんて、ない
ぶっちゃけて言えば、正しい歩き方なんて、存在しません。目的によって、最適な歩き方が違うからです。
例えば、ダイエットをする人にとっては大きく腕を振って、大股で歩く「エネルギー消費が多い歩き方」が正しい歩き方になりますね。
外回りの仕事で、長距離を歩く人にとっては、足への負担が少なく、長距離を歩いて疲れない歩き方が適しています。身体があまり左右に振れず、やや狭い歩幅の歩きかたです。
ただ、足を開きすぎたり、無理な力をかけたりと、歩き方が崩れてしまっている人がいるのも事実。
正しく歩けないときには、その原因があります。
・歩き方よりも、骨格の正しさ
歩き方が崩れる人は、ほとんどの場合、「歩き方が悪い」のではなく「悪くなってしまっている」のです。
足が深く曲がらない、まっすぐに体重がかけられない、足が傾く…。こうした症状があると、どんなに「正しく歩こう」と意識しても、歩けるものではありません。
例えば足首が固いと、歩くときに前に体重をかけられず、腰が引けたようになります。
内くるぶしのまわりが固いと、蹴り出しのとき足先が内側を向くので、膝がねじれるようになることもあります。
逆に、足がきちんと動きさえすれば、意識しなくても無理なく歩けるものです。
歩き方が正しいか、よりも「足の動きが正しいか」の方が、ずっと大事なのです。
スポーツをしている人で、足の裏が痛む場合、多いのが足底腱膜炎です。足のアーチを支えている腱の膜(そのままですね)が、使われすぎてダメージを受け、痛む症状です。
そうした人たちを見ていると、やはり足首が固い人が多いです。とくに、背屈が固い(つま先が上がらない)方が多い。
・衝撃を受け止める、ふくらはぎと腱膜
ランニングをする時、接地の瞬間にかかる衝撃は、体重の三倍以上と言われています。足の腱は、それを支える役目を持っています。
正常な人の場合では、その衝撃はふくらはぎの筋肉と、アキレス腱、そして足底腱膜の弾力によって分散・吸収されています。
例えて言うなら、魚釣りの釣り竿のようなもの。柔らかく曲がることで糸(足底腱膜)にかかる衝撃を吸収し、切れるのを防いでいます。
ところが、足首の固い人の場合には、接地した足が沈み込んだところで、関節が止まってしまいます。筋肉もアキレス腱も働くことができなくなるので、足底腱膜だけで衝撃を受け止めなくてはなりません。それが繰り返されることで腱膜が傷つき、炎症を起こしてしまうのです。
・つま先の高さで固さを確認する
つま先の上がりの目安ですが、だいたい20度とされています。
個人差はありますが、大体の目安は「つま先をあげた時、親指の付け根がくるぶしの高さまでくる」ところです。
これより固い場合は、足関節が固く、それが足底腱膜に負担をかけている可能性があります。
もちろん、足底腱膜炎の原因はそればかりではありませんが、何度も繰り返してしまうようなら、試してみて下さい。
前回、関節で音が鳴るのは危険ではないという話を書きました。
危険なのは、音を出そうとして無理に強い力をかけることであって、音そのものは問題ない」という内容です。
そこから一歩進めて「鳴らさない方が、身体に悪い」という説明をしたいと思います。
・音の原因は気泡。では気泡の原因は?
関節の音が、気泡によるものであることは、動画レントゲンですでに確認されていますね。しかし、気泡というだけでは音の原因を説明したことに鳴りません。「なぜ気泡ができるのか」を、全く説明していないからです。
動画レントゲンで見るかぎり、この気泡は一瞬で生まれて消えます。こうした気泡は、急激な圧力の減少で生じるもの。その圧力変化の原因を説明していないのでは、やはり説明が足りないと言えます。
・気泡は「貼り付き」がとれるときに出る
八起堂では、関節内の貼り付きが気泡の原因であると考えています。靭帯、関節包などの軽い貼り付きが、動かされたときに瞬間的にはがれ、気泡が発生して音が出ているのです。
その根拠は2つの事実。
①指の関節で確かめるとよく分かるのですが、関節が鳴ると同時に、曲がりが深くなりますね。つまり、音とともに関節の可動域が広がっています。
②関節が一度鳴ったら、しばらくの間は動かしても鳴りません。
①は、関節の貼り付きによる運動制限が取れることを示していますし、②は、ある程度の時間がたって軽い貼り付きができるまで、音がしないことを示しています。
・動かさないことのデメリット
音を鳴らさないように注意するのは、この軽い貼り付きを放置することになるので、長い目てみて、間接の可動域を狭めてしまう可能性があります。
それよりも困るのが、音を出さないように注意するという行動そのもの。筋肉を緊張したまま保つことになるので、肩こりや腰痛を引き起こす可能性が高いのです。
繰り返しますが、危険なのは「強い力で音を出そうとする」こと。
自然に動いていて、音が出ることには問題がありませんし、ストレッチや、ゆっくりとした運動で、関節が鳴るのは、むしろ必要なことであるとお伝えしたいです。
フィギュアスケート。氷の上で、回転、ジャンプと人間業とは思えないような演技をこなす、ウインタースポーツの花形です。
私は仕事柄、選手の足を見ることが多いのですが、多くの選手を見ているうちに気づいたことがあります。
どの選手も、デビューしてすぐの頃は、足のバランスがいいのです。とくに、印象に残っているのは、浅田真央選手。
体幹からスケートのエッジの先まで、重心の線が一本に通っていて、無理な力がかかっていません。着地が少しズレても、柔らかい足首でスッと修正して、無理なく受け止めます。この正確さと、柔らかさがあってこその、神がかった演技だったと思います。
しかし引退直前の演技では、普通に滑っているだけでも、足に力が入っているのがわかりました。足にダメージが蓄積し、ズレた重心線を、筋力で抑え込んでいたのです。
これは他の選手も同様で、年月を経るに従って、重心線のズレを力で押さえ込むようになり、やがて限界を迎えて引退してゆきます。
・足へのダメージ蓄積を防ぐ方法は
足の不調は、蓄積します。
使いすぎの炎症、捻挫などのケガによる炎症が、足首の関節に癒着を発生させます。癒着は、きちんと解消しない限り残り続け、関節を固く、動きにくくしてゆくのです。
予防には、まず炎症を防ぐこと。
練習などのあと、熱を持っていたらアイシング。炎症の拡大を防ぐことが、癒着の予防になります。
捻挫などのケガは、きちんと休んで炎症を拡大させない。治ったら、リハビリをきちんとして、動く範囲を回復させること。
そして、定期的に足の関節をメンテナンスして、動きを妨げる癒着を解消するのが重要だと思います。
もし、彼ら彼女らの足が固くならずに動き続けていたなら、もっと長く現役で活躍できたのではないかと思うと、残念に思います。
先日から、二人続けて、似た症状の方を拝見しました。
お二人ともランナー。困っているのは、膝を曲げたときに、膝頭が内側に入ってしまうため、膝や股関節が痛くなって困っているとのことでした。
拝見したところ、お二人とも、同じ原因でした。
足首の内側、くるぶしのまわりが固くなると、その部分だけ動く範囲が狭くなります。
足が地面に着地すると、足首は深く曲がりますね(背屈)。この時、内側があまり動かず、外側だけが大きく動くので、つま先が外側に向くことになります。
といっても、足の裏は接地しているので、固定されています。そこで、かわりに脛の骨が内側にねじられ、膝が内側に入ってしまうというわけです。
この場合の治療は、足首の正しい動きを取り戻すこと。関節リリースの技法でくるぶしまわりの組織をほぐし、内外の動きが揃うようにしてやります。
幸い、お二人とも初回の治療で大幅に動きが改善し、膝が内に入るのを減らせました。あとは、仕上げをするだけです。
足首まわり、とくに内側は、固くなりやすい部分です。
もし、走ったり屈伸したりするときに膝が内側に入る場合は、一度関節リリースをお試しください。
施術のあと
「ここの施術は、揉みおこしがでないのね」
と言われることがあります。
揉みおこしとは、あん摩・マッサージのあと、筋肉が腫れて痛むこと。これ、実は危ない現象なのです。
私たちの筋肉は、水分を含んだ細胞です。例えるなら、スーパーで売っている鶏肉と、さほど差はありません。あの肉を、ぐっと押したら潰れますよね。
私たちの筋肉も同じ。強く押せば細胞が潰れてしまいます。
揉みおこしと言われているのは、強すぎる揉みで筋肉が潰れ、腫れている状態。打撲傷と同じようなものなのです。
コリを治すはずが、筋肉を潰してしまう。しかも、何度も繰り返すと筋肉細胞ではなく、繊維質が増える「線維化」が進行して、組織そのものが硬化してしまう恐れもあります。
それなのになぜ、揉みおこしを起こすような揉み方・押し方がなされているかというと、「固いものには、強い力で」と、本能的に考えてしまうからです。
治療に必要なのは、本能よりも、正しい技術。
もしどこかで施術を受けられたあと、揉まれたところが熱を持って痛むようなら、揉み方を変えてもらう方がいいでしょう。
インピンジメントとは、衝突のこと。
関節を動かすときに、ひっかかったり、ぶつかったような痛みが出る症状を言います。
骨に原因があるタイプと、靭帯やスジに原因があるタイプがあり、この2つはレントゲンの診断で判別できます。
レントゲンで骨に異常がなければ、靭帯やスジに原因があるタイプ。このタイプは、関節リリースで改善が期待できます。
靭帯は、使いすぎの炎症や、捻挫による炎症の腫れが繰り返されると、貼り付きが起こる性質があります。関節を動かした時、貼り付いて固くなった部分が引きつれたり、ぶつかったりするので痛むわけですね。
関節リリースでは、角度を変えながら関節を動かす操作で、靭帯の貼り付きをとるので、改善が期待できるわけです。
関節を動かしていて、急に動きが止まったり、固い手応えで、動かすと痛いという患者さんは、よくいらっしゃいます。たいていは、貼り付きが取れると可動域が広がって、症状の改善が見られます。
インピンジメント症候群になったら、安静や筋力強化も重要ですが、もし骨に異常がないタイプでしたら、ぜひ一度、関節リリースをお試し下さい。
しつこく腹痛が続く時、ありますよね。
もちろん、そんなときはまず病院へ行くべきです。ただ、内視鏡を飲んでも、エコーをかけても、どうしても原因がわからない時もあります。
病院で、どこにも異常がないと言われて、それでも腹痛が続くときには一度、腰痛を疑ってみるといいです。
・外の痛みが内にひびく
鍼灸を科学的に説明する説に、「体壁・内臓反射」があります。平たく言うと、筋肉の緊張が自律神経を通して内臓の調子を狂わせる、というもの(内臓→筋肉の逆コースもあります)。
腰から始まった痛みが、内臓にひびくわけです。
人間の身体は、一番痛い場所を意識するようになっていて、二番目はあまり気にしません。そのため、腹に感じる痛みが腰の痛みより強いと、「腹だけが痛い」と感じがち。
しかし、内臓そのものには原因がないので、内臓を調べても異常が見つかりません。「なんでだろう?」ということになるわけです。
腰痛持ちが多いことでわかるように、腰は慢性的に緊張しやすい場所。
普通に腰痛治療をする分には、副作用もなく、リスクもありませんので、原因不明の腹痛が続くなら、試してみて損はないと思います。
少し前、NHKで「人間って何だ?」というAI(人工知能)関連の番組をやっていました。その中で出てきた「過学習」の概念が面白かったんですよ。
AIに学習させるときにはディープラーニングという方法が用いられます。これは、AIに大量のデータを読み込ませ、分析させることで、学習をさせる方法。複雑な状況から結論を引き出すのが得意で、ものによっては人間以上の能力を発揮することもあります。
例えばAIに「イヌとは何か」を認識させるためには、たくさんの犬の写真を読み込ませ、判断させます。それに対して正解・間違いのフィードバック(結果を見ての修正)を何百万回も繰り返すうち、AIは自分で必要な条件を覚え、犬の画像を見分けられるようになります。
・過学習…丸覚えは使えない
AIに学習させる上で問題になるのが「過学習」です。わかりやすく言うと、データを丸暗記しすぎて、応用力がなくなること。
例えば、データの中に黒い柴犬の画像があったとします。AIはその画像を分析し、「毛が生えている」とか「牙がある」といった犬の判断に重要な特徴を読み込みます。しかし同時に「色が黒い」とか「耳が立っている」というような、重要でない特徴をも読み込むでしょう。
もしAIが、重要でない情報まですべて使って判断したら、ゴールデンレトリバーは、黒くない、耳が立っていない、という理由で「犬ではない」と判断されてしまいます。
ディープラーニングを成功させるには、どの情報が重要で、どの情報が重要でないか、AIがわかるようにプログラムすることが必要。研究者は、その対策に頭を絞るのだそうです。
・正解率を高める試行錯誤
では、どうやって重要性を認識させるか。代表的な方法の一つが「ドロップアウト」です。大まかに言うと、判断に使っている特徴のうち、いくつかをわざと使わなくすること。
たとえばA、B、C、Dという4つの特徴を判定に使っているとします。Aを使うのをやめて、B、C、Dだけで判断を行い、それでも正解率が高ければ、Aは重要ではないとわかります。逆にAを使わずに判断を行って正解率が下がれば、Aが重要だとわかりますね。
こうして使う情報、使わない情報をランダムに入れ替えながら試行錯誤することで、より正確な判断ができるようになってくるというわけです。
・上達のための試行錯誤とフィードバック
ディープラーニングは人間の学習をもとにしたものですから、こうした原則は人間でも同じです。丸覚えルーチンワークでは、何年繰り返しても上達しませんし、試行錯誤していても、結果が出るまでの間隔が長ければ、学びは遅くなります。
これは技術側の問題でもあって、技術を要素分解しやすい技術ほど、またフィードバックが早い技術ほど、学びやすいことを示しています。
ちなみに、TAM関節リリースは、要素の分解が明確で、結果がすぐ出る技術です。…と最後に我田引水(笑)
膝の痛みで悩む人は多いです。一般的には変形性膝関節症(関節軟骨のすり減り)が原因と言われることが多いですね。
しかし、すり減りによる腫れも摩擦音もないのに、膝が痛む方が少なくありません。そんな場合は膝の「ズレ」「ねじれ」をチェックすることをお勧めします。
■多いのは、外向きのねじれ
ズレ・ねじれがはっきりするのは、膝を深く曲げたとき。
膝の内側靭帯の動きが悪いために、脛骨(すねの骨)が、わずかに外側を向くケースが多いです。
関節の向きが変わることで、靭帯が本来なら引っ張られないはずの方向へ引っ張られて、痛みを発するのです。
また、私達の身体は、わずかなズレにも敏感です。そうしたズレを、筋肉に力を入れてカバーしようとするので、膝周辺(特に大腿部)の筋肉を緊張させ、筋肉の緊張痛や、トリガーポイントによる痛みを発生させるのです。
このようなズレを放置しておくと、靭帯や関節軟骨に負担をかけ、本当に変形を起こす原因になることも。
■膝を調整。同時に足関節の調整も必要
こうした場合、膝の内側の靭帯・関節包を解いて、まっすぐに曲がるようにしてやる必要があります。
また、膝のねじれが足関節の歪みから起きていることもありますので、足の調整も行うと、効果が長持ちすることが多いですね。
筋膜リリースといえば、普通は手技です。筋膜を伸ばしたり、剥がしたりして正常な運動性とバランスを回復するわけですが、時として、鍼で同様の効果が出る場合があります。
皮膚を動かして、動きの悪いところがあった場合、そこに浅く(切皮程度)の鍼を打つだけで、動きが改善するケースが多いのです。
深い筋膜では、動きの確認も、鍼で当てるのも難しくなりますが、うまく当てれば、やはり動きを回復させられます。
これは関節のリリースでも有効で、私も足関節などの強い関節の改善に多用しています。
●なぜ、効くのか?
なぜ、鍼を打つだけで筋膜や関節の動きが回復するのかについては、よくわかりません。
筋膜の構成を変えるほどの物理的な力を与えているわけではありませんし、鍼の小さな穴一つで、何かの成分が移動しているとも思えません。
可能性としては、筋膜の表面の神経に刺激が加わることで細胞膜のチャネルが開くとか、癒着の一部が動かされることで、はがれるきっかけができるのかもしれないとか、考えることはできます。
何にしても、まだ仮説も立てられない状態です。
●鍼治療の新しいアプローチになるか?
現代医学的な鍼は、これまでトリガーポイントアプローチを中心として発展してきました。これは過緊張によって変質し、痛みを出す筋肉(トリガーポイント)を鍼によって改善するものです。
今回の方法では、全体のバランスを崩している筋膜の緊張や、ズレを修正できる可能性があります。
トリガーポイントと合わせて使うことで、現代医学的な鍼治療の可能性をさらに広げることができるのではないでしょうか。
また、面白い発見があれば、お伝えしたいと思います。
膝が痛むとき、まず最初に疑うのは「変形性膝関節症」。膝関節の軟骨がすり減って炎症を起こし、腫れて痛む症状です。
ところが、軟骨に損傷がなく、腫れも無いのに痛みがある場合もあります。
こうした場合、軟骨ではなく、靭帯が原因になっている可能性があります。
膝が痛むという方に、足を持ち上げた状態で(つまり体重をかけずに)屈伸してもらうと、膝の下側、脛骨のでっぱりがわずかに外に向いていることがあります。これが膝の「ねじれ」です。
原因は、足関節の歪みなどで、下肢が外に向けてねじられること。特に、つま先が内側に向かう「かま足」の方に多いです。
また、バレエをやっている方では、膝から下を外にねじる動作が原因になっていることもあります。
こうした場合、靭帯が本来の位置と違うところに貼りつきを生じているので、関節の動きが不十分になり、引っ張られて痛んだりするのです。
治療は、膝関節の方向を調節しつつ、テンションをかけて動かし関節靭帯の癒着を取ることです。
痛みが出てしまっているときには、専門的な治療が必要です。
予防には、ときどき膝関節の靭帯をリリースしてやることが有効。
方法は、高めの椅子に座り、他の人に足首をもって下に引っ張ってもらうこと。引っ張ったまま30秒待ちます。
時間をかけて引き延ばすことで、固くなった靭帯に余裕ができます。
また、膝痛が起きる場合、ほとんどの方で足首の固さ・歪みが見られます。膝痛を何度も繰り返す場合には、必ず足関節の治療が必要です。
演奏家さんの手を治療した時のことです。
手根骨(手首のあたりの、こまかい骨の集まり)のいくつかが動きにくくなっていたのでそれをほぐし、親指の付け根のねじれを治すと、ぎこちなかった指が楽に動くようになりました。
治療後、動きやすくなったのを確認しながら、こうおっしゃいました。
「ここで治療を受けるまで、指が動かないのは、自分の練習が足りないからだと思ってたんですよ」
つまり、悪い癖がついているから動かせないのではないか、と思っていたそうです。
実際には、「正しい動きをしていない」ではなく、「正しい動きができない状態だった」わけですが。
■正しく動くには、動ける骨格・関節が必要
膝などの痛みでいらした方から、
「歩き方が悪いから、足が痛くなるの?」
と、尋ねられることがあります。
もちろん、そういうケースも無いわけではありません。
しかし実際には「足の歪みで、正しく歩きたくても歩けない」ことの方が、ずっと多いのです。
足底が傾いていれば、まっすぐ歩いていても体重が外側にかかってしまったりしますし、足首が固いだけで体重移動がまっすぐいかなかったりします。
そうした方が、関節や筋肉の状態を整えるだけで、歩き方が変わることは多いのです。
努力よりも、努力が生かせる環境を作るのが大事。
ほかのことでも言えることかもしれませんが。
八起堂治療院は、ねんざ後遺症の治療を得意としていますので、捻挫についての問い合わせをたびたび頂きます。
その中でも多いのが、
「ねんざのあと、何ヶ月たっても腫れが引かなくて、気がついたら関節の動きが悪くなっていたんです…」
という、長引いたねんざの後遺症です。
ねんざとは関節の靭帯が傷ついた状態です。
靭帯は、繊維タンパク質でできた帯。イメージとしては、テーピングのテープに似ています。
関節の周りにあって、正しい方向に動くためのガイドになったり、動きすぎを防いだりしています。
ねんざは、強く引っ張られることで、靭帯の一部が引きちぎれた状態です(全部切れると、靭帯断裂)。
腫れるのは、壊れた部分を修復するために血液が集まる反応。
逆に言うと、腫れている間は、まだ靭帯が修復されていないということです。
切り傷が治りかけのとき、無理に動かすと傷口が開いてしまうことがありますね。
ねんざも同じで、治りかけのときに「なんだ、ねんざくらい!」と動かすと、弱い繊維がまた切れて、修復は最初からやり直し。
冒頭の問い合わせ「ねんざの腫れが引かない」という場合、もっとも多いのは、無理をして動かしたために、靭帯が再び傷ついてしまうケースです。
スポーツやバレエをしている人は、休むのが怖くて、つい無理をしがち。治りかけのところでまた腫れることが続くと、靭帯が再生するときに太くなったり、ひどいときは変形したりします。
正しく治すため、ぐっとこらえて休むようにして下さい。
リンパ液が患部に滞留するのを防ぐため、足を高く上げたり、軽くリンパマッサージをするのはおすすめです。
膝が痛むという方は、少なくありません。
こんなとき、病院ではまず、膝軟骨の状態を見ます。軟骨がすり減っていれば、変形性膝関節症という診断がつきます。
ところが、軟骨に変形がないのに痛みが出ることもあり、原因がわからないこともあります。そんなときは、膝や足の歪みが原因かもしれません。
これは、膝関節を作る上下の骨が、正しい位置からズレているものです。
バレエダンサーなどに多いのが、下の骨(脛骨)が、外向きにねじれている場合。
バレエでは、両足のつま先を外に向けるポーズを多用します。本来は、股関節から外に向けるのですが、初心者などでは、形を整えようとして、足先だけを外に向けてしまうことがあります。その形が残って、膝を歪め、痛みが生じます。
スポーツをしている方で多いのは、上の骨に対して下の骨が前後にズレている場合です。膝が曲がるときには、脛の骨はヒザ裏に向かってぐるっと滑ってゆきます。ところが、膝の周辺で癒着がおきて、途中で滑りが止まり、曲がりきらなかったり、伸び切らなかったりしてしまうのです。
どちらの場合も、膝関節の動きを確認しながら、周辺の癒着をとって正常な動きに戻してゆきます。
以前も書きましたが、足関節の歪みも膝に影響します。
足が左右に傾いていると、膝の内側、外側のどちらかにだけ大きな荷重がかかり、痛みが出ます。踵の位置や、足首の曲がりを修正することで治療ができます。 足首の歪みを放っておくと、一方の軟骨だけがすり減って変形を起こすことがあるので、早めの治療をおすすめします。
意外なところでは、つま先が上がらないことによって膝が痛むこともあります。つま先が上がらない分を、膝で補おうとして、膝を強く伸ばすために、膝関節に負担がかかるのです。
人体は、全体が関わり合って出来ているもの。痛いところだけが原因とは限らないのです。
イラストは、メディカルイラスト図鑑のフリーイラストから
前回、毎日歩いている人が腰痛になりにくいのは筋肉を緊張させないからだ、と書きました。
実は、歩くことが腰痛の予防になる理由がもう一つあります。
仙腸関節は、骨盤と背骨の継ぎ目にある関節です。
この関節、上半身の体重を支えつつ、衝撃を下半身に伝える重要な関節なのですが、ズレたり、引っかかったりすると腰の動きが阻害され、腰痛を始めとする不調の原因になります。
AKA(関節運動学的アプローチ)は、その仙腸関節を調整することで有名ですし、もちろん八起堂治療院のTAMでも、仙腸関節の調整は基本の治療となっています。
この関節のズレ、引っかかりをとると、腰の負担が減り、慢性の腰痛に有効です。
実は、この仙腸関節を支えるのが足の筋肉なのです。
右の図を御覧ください。
背骨を支えるのは、骨盤の真ん中(仙骨)。
足が支えるのは、骨盤の両側。
骨盤の真ん中は、常に体重で押し下げられています。
その押し下げを受けて、支えているのは、骨盤から足につながっている筋肉。骨盤の両側を引くことで仙骨を押し上げています。このバランスが保たれているとき、仙腸関節は健康に働いています。
ところが、足の筋肉が弱ると、骨盤の真ん中が下がりやすくなり、仙骨が落ち込んだり、引っかかったりしやすくなるのです。
これが腰痛の原因の一つ。
また、仙骨が下がった状態では、骨盤の下側が開くので、内蔵を支える力が弱くなるとも言われています。足腰の健康を保つためにも、内臓の健康を保つためにも、足の筋肉は重要。
腰痛は、人間に特有の症状。
そのため
「腰痛は、二足歩行で腰に負担がかかるようになったからだ」
と言われることがあります。
本当にそうでしょうか?
以前、NHKの腰痛特集で、アフリカの狩猟採集民にインタビューしているのを見ました。
毎日、数十キロを歩き足腰を酷使する生活。さぞや腰痛が多いだろうとインタビューしたところ、帰ってきた答えは
「腰痛って、なに?」
でした。そもそも、腰痛の人がいなかったのです。
なぜ、ずっと歩いていても、腰痛にならないのか。答えは筋肉の性質にあります。
筋肉はじっとしているのが苦手です。一つの姿勢でじっとしていると血管が圧迫され、血行不良を起こして痛み始めます。
これが、肩こりや腰痛の原因。
人間は進化の過程で、狩猟採集の生活に適応してきました。その基本は、長い距離を歩いて食べ物を探すことです。その習慣が、このような筋肉の性質を作り上げました。
歩行などの軽い運動は、血行を改善してくれます。酸素や栄養分も十分に補給されるため、筋肉にとっては楽な状態なのです。
現代の私たちは、じっと立ったり、じっと座っていたりと、動かない生活をすることが多くなっています。
腰痛は、じっと立っていたり、座っていたりしなくてはならない、私達の文化が生み出した文明病なのです。
先日、TAM手技療法の受講者の方から、質問がありました。
脊柱菅狭窄症で手術を受けた方、とくに脊椎固定のプレートが入っている方の、痛みやしびれは、どのように治療するか、とのことでした。
■脊柱管狭窄症 手術後も痛むのはなぜ?
脊椎管狭窄症とは、文字通り、神経が通っている脊柱の管が狭くなる症状です。神経が圧迫されて、痛みやしびれなどが生じます。
手術は、脊椎の骨を切って管を拡げたり、プレートと言われる金属を入れて、脊椎の並びを整えたりするのが主流。それによって神経の圧迫をとるのですが、手術後も痛みが残ってしまう方が少なくないのです。
手術で神経の圧迫は取れているのに、どうして痛みが出るのでしょうか。
■筋肉から出てくる痛み
実は、身体の痛みには、筋肉が大きく関わっています。
筋肉は、緊張が長く続くと疲労し、血行不良を起こして痛みはじめます。緊張の原因は、身体の歪みや炎症、一つの姿勢で長くいることなど様々。
中でも代表的なのが、関節や皮膚などの動きが悪い場合です。筋肉は、動かない部分を動かそうと、無理な緊張をして、痛むようになってしまうのです。
脊柱菅狭窄症の手術後、とくにプレートが入っている場合には、腰椎の一部が動かなくなっているため、筋肉は無理な緊張を強いられます。
少なくとも痛みの何割かは、こうして緊張し固くなった筋肉によるものだと考えられます。
■痛みを減らすには?
この場合、プレートを取ることはできませんので、脊椎の固定にアプローチすることはできません。しかし、筋肉および皮膚・皮下組織の癒着をとり、可動域を回復することはできます。
重なっている筋肉層、皮下組織を動かして癒着をとり、動きを回復することで、痛みの減少が期待できます。とくに手術のあとなら傷跡の癒着、短縮があるので、その部分の施術は有効でしょう。
一見、原因不明の痛みでも、対策のある場合は多いもの。お気軽にご相談くだされば、幸いです。
テニス肘、野球肘と、スポーツ選手の肘が痛むことは珍しくありません。
■基本的には安静と、フォームの点検ですが…
一般的な肘の痛みは、肘関節や腱の炎症によるもの。安静を保って、痛みが引くのを待ちます。
また、フォームの確認も重要です。
肘に負担がかかりすぎないよう、フォームを見直すことで、再発を防ぐことができます(とくに少年野球では、肘を高く上げたオーバースローを徹底することで、野球肘の予防ができるとされています)。
問題は、それでも痛みが長引くとき。
少し前、肘の痛みで来院された患者さん。
病院ではテニス肘と診断されたそうですが、安静を保っても、なかなか痛みが引かず、もしかして関節の癒着か? ということで、いらっしゃいました。
■肘の痛みが手首で治る
まず、腕の動きを確かめました。
前腕を回外(外にねじる)した時に、はねかえされるような抵抗感があります。肘にも確かに癒着がありましたが、それほど強いものではありません。
抵抗のあるところを調べて、発見したのは手首でした。手首の根元には、手根骨という小さな骨が集まっています。その骨どうしが貼り付いたようになり、動きにくくなっていたのです。
そこでTAM手技で手首の骨を柔らかく動くようにしたところ、腕のねじりが軽くなり、肘の痛みも減りました。
■肘と手首の深い関係
私たちの手は、肘から先の二本の骨(橈骨と尺骨といいます)が、交差することで、内外に捻ることができます。
この回転運動は、肘と手首の両方で起こっていますが、とくに動きが悪くなりやすいのは、手首側。手根骨の動きが悪くなることで、ねじるときに抵抗が生じます。
肘の方ではより大きく動かざるを得ず、負担がかかって痛むようです。そんなときは、手首の治療で肘の負担が減り、効果が得られます。
肘の痛みは、基本的には安静とフォームの見直し。
それでも長引く痛みがあれば、お気軽にご相談下さい。
普通に歩いているだけなのに、つまづくこと、ありませんか? それも、なにもないところで。なぜでしょうか?
■原因①足が上がっていない
お年寄りに多いのが、このタイプです。
私達が歩く時には、足を持ち上げて前に出しますね。この動作を行っているのが、体幹部にある大腰筋と腸骨筋、合わせて腸腰筋と呼ばれます。
この筋肉が弱ってくると、思っているよりも足が上がらず、地面(あるいは、小さな障害物でも)に接触してつまづいてしまいます。
高齢になってからの転倒は、骨折の恐れも高いので、気をつける必要があります。
予防のためには、膝を高く上げる運動がオススメ。テーブルや壁に手をついて膝を上げる足踏みなら、室内でも手軽に行うことができます。
■原因②つま先が上がっていない
比較的、若い人に多いのがこちらの原因です。
膝を持ち上げていても、つま先が下がったままなので、地面に接触してつまづいてしまうのです。
ちょっと試してみましょう。
座った状態で、下腿を垂直に立てて、つま先を持ち上げてみて下さい。つま先が、くるぶしよりも高くなるのが正常です。それより低い場合は、なんらかの理由で足首の動く範囲が狭くなっているものと考えられます。
原因になっている場所は、いわゆるアキレス腱伸ばしの体勢をとると、わかります。
・筋肉が原因の場合
ふくらはぎにつっぱり感がある時には、そこの筋肉が固くなり、伸びていないことが原因。運動不足の人に起こりがちです。
この場合には、一日に一回、アキレス腱伸ばしのストレッチ(実際には、伸ばしているのはふくらはぎの筋肉ですが)を行うと、つま先が上がるようになり、つまづきを防げます。
・関節が原因の場合
足首に固さや違和感がある時には、足首の関節が固くなっています。ねんざの後遺症や、座り仕事での足のむくみが原因になることが多いのです。
足首を柔らかくする方法としては、このホームページの「足の治療」にある体操が有効です。それでも動きが固い場合には、足関節で強い癒着が起きている事が考えられます。専門的な治療をご検討下さい。
マッサージを受けたことのある方はご存知だと思いますが、施術の直後からだるくなったり、眠くなったりすることがありますね。
マッサージで疲れたのか? とお考えの方もいらっしゃると思いますが、心配いりません。
これは、回復の段階に入ったことを示しています。
■眠くなるのは、緊張がとけたから
肩こりや腰痛は、筋肉の緊張が抜けなくなっている状態。固くなった筋肉が血管を圧迫するために血行が悪くなり、その痛みがさらに緊張を悪化させているのです。
そこで筋肉の緊張が抜ける施術を受けると、それまで固かった身体が柔らかくなるので、ぐにゃぐにゃと頼りなく、重く感じます。それが施術後の「だるさ」です。
眠気も、筋肉のゆるみによって生じます。
筋肉にコリや緊張があると、感覚神経から脳に緊張の信号が送られ、脳も緊張状態になります。「身体が疲れているのに眠れない」というのがこのケースです(緊張は、不眠の原因のひとつ)。
施術で筋肉がゆるむと、筋肉からの緊張信号がなくなるので、脳は開放され強い眠気を感じるのです。
つまり、マッサージ後の眠い、だるいは筋肉がゆるんできた証拠です。ほとんどの場合は1~2日で終わりますので心配はいりません。
■いわゆる「もみ返し」は注意
逆に言うと、眠くならず、もまれた部分がひどく痛んだり、腫れたりする場合は、ほとんどが無茶な揉み方をされた場合です。
マッサージは力を入れるほど効くわけではなく、強く押すと細胞が潰されて、腫れてくるのです。それが、もみ返し。
緊張を解く効果がないだけでなく、繰り返すうちに筋肉組織が繊維組織に置き換わって固くなり、揉んでも治らなくなることも。弱いマッサージにするか、施術者を変えることをおすすめします。
・原因からのアプローチも重要
筋肉を傷つけずに緩めるには、緊張の原因を解消するアプローチも重要です。
例えば八起堂なら、筋肉や関節で起こる軽い癒着(貼り付き)が肩こりの原因であると考え、貼り付きをとる施術を行います。
先日、郵便局に行ったら、中で骨密度の測定サービスを行っていて、驚きました。
「歳をとっての骨折は、寝たきりに直結する!」ということで、骨密度の測定サービスが盛んになっているようです。
測定するのは、骨の中のカルシウムの量。カルシウムが多いほど、骨が強くなり、折れにくくなるというのがその理由です。
でも、骨を強くする方法は、カルシウムだけではありません。
骨を強く、しなやかにする簡単な方法をご存知でしょうか?
■骨をしなやかにするのは、コラーゲン
骨というと、カルシウムでできていると考えがちです。しかし、骨の成分でカルシウム(リン酸カルシウム)の割合は、60%程度。残りのほとんどは、水とコラーゲンです。
コラーゲンは、水分を含み、弾力ある組織を作る性質があります。美肌成分として有名ですね。それが骨でも役立っています。
カルシウムは固いのですが、柔軟性がありません。それを補っているのが、水分とコラーゲン。曲がりやねじれに耐え、衝撃を吸収して、骨折から守ってくれるのです。
年齢を重ねると、骨のカルシウムが減るだけでなく、コラーゲンが弱ってくることがあります。そんなときに強い力を受けると、骨は衝撃を受けとめ切れず、ポッキリと折れてしまいます。
骨折を防ぐためには骨のコラーゲン繊維を正常に保つ必要があるのです。
■ビタミンB群で骨の強化!
では、骨のコラーゲンを強くするために何をすればいいのか。実は、その方法は簡単。ビタミンB6、B12、葉酸を摂取するだけです。
これらのビタミンは、コラーゲン繊維を弱くするホモシステインなどの生成を防いで、弾力ある骨にしてくれます。
外国で行われた実験では、これらのビタミンをつづけて摂取することで、骨折する率が8分の1になったそうです。
しかもこのビタミンは、極めて安価な「ビタミンB群」のサプリメントでとる事ができます。どこの薬局でも二ヶ月分を400~500円程度で買えます。また、危険な副作用もありません。
骨のために、カルシウムと一緒にいかがでしょうか?
アニメ監督の宮崎駿氏が、若いアニメーターを評して、
「アニメばっかり見てきたから、アニメが作れない!」
と嘆いているのを見たことがあります。
アニメ慣れしてるとアニメを作れない、と言うのは面白い言葉です。
■体験がないものは感じられない
ここで、宮崎氏が言っているのは「実感の不足」です。
例えば、アニメで木登りをするシーンがあったとします。手足を木に引っ掛けて身体を引き上げるのですが、そこで手足だけが動く絵を描いたら、間違いなのです。
手に強い力を入れるときには、それを支える肩や背中の筋肉も動きます。また、枝の傾きや、手がかりとの距離によって、力の大きさや方向も変わってくるのが、自然な動作。
こういう力の配分は、実際に木登りをしてみないとなかなかわかりません。実体験が不足していると、どこにどれだけの力が入るかの実感が無いので、不自然な映像になってしまうのです。
■身体の知識と体験は、車の両輪
ミラーニューロンがあっても、体験したことがない動作では、外面の形しか写し取ることができません。筋肉や関節の状態を写し取るには、筋肉や関節について、体験的な感覚を持っていることが必要なのです。
私自身の体験でも、古武術を習いだしてしばらくした頃、肩コリや腰の張りを見る力が伸びた、と感じる時期がありました。
治療には、骨や筋肉の解剖学的知識はもちろん必要です。
そして身体を使う経験は、知識を実感として理解させてくれます。
スポーツでも、武道でも、ダンスでもかまわないのですが、自分の身体と向かい合い、筋肉や関節についての感覚を育てること。
治療を上達させる方法の一つとして、有効だといえます。
治療の後はいつも、患者さんに
「動いてみて下さい」
とお願いします。
肩をぐるぐる。腰を曲げる。足踏みをする。
そうした動きを見て、不自然な動きが残っていないかを確認。残っていれば、
「肩の上に、もう少し貼り付きが残ってますね」
と、仕上げの施術をします。
そんなとき、患者さんに、
「なんで見てるだけで、悪いところが分かるんですか?」
と尋ねられることがあります。
慣れもありますが、キーになっているのは、誰でも持っている、ある能力です。
■他人の動作を感じる、ミラーニューロン
脳科学の発展は急速で、毎年のように新しい発見が続いています。
近年の発見の一つが、ミラーニューロン。他人の行動を見るだけで、まるで自分が動いているかのように活動する脳細胞です。
例えば私が、手を挙げている人を見たとします。
すると、ただ見ているだけの私の脳で、手を上げているかのようにミラーニューロンが活動するのです。
他人の動作を、鏡に写すように脳で再現しているところが、ミラーニューロンと呼ばれるゆえんです。
ミラーニューロンが何に役立っているのかについては、諸説あります。有力な候補の一つは、共感能力。
たとえば仲間の体調が悪い時、疲れているな、調子が悪いなといったことを、あたかも自分のことのように感じることで、助け合うことができると考えられています。
■動作の共感で、感じ取る
知っている人がだるそうにしてたら、
「疲れているのかな、しんどいのかな」
と思って、声をかけますね。
私たち治療家も、やっていることは同じ。
患者さんの動作を見て、それを脳内で再現することによって、どこに力が入っているのか、どこが不自然なのか、自分の感覚を通して実感できるわけです。
(治療家によっては、患者さんの痛みを見ているうちに、自分の身体の同じところが痛くなってくることもあるそうですが…)
そんなわけでミラーニューロンは、誰でも持っている「感じ取る」能力です。人によって精度が高かったり低かったりするだけ。
ただし、精度高く感じ取るためには、ある条件が必要です。
その条件については、次回。
音楽をやっている人、パソコンを使っている人の治療をしていると、よく出会うのが、手首が固くなる症状です。
一見、普通に動いているようですが、よく見るとどこか動きがぎこちない。
手首の骨が癒着して動かず、柔軟性がなくなっているためです。
■あまり気づかれない、手根骨の癒着
手首にはサイコロくらいの細かい骨が8個存在します。単純な曲げ伸ばしだけではなく、掌をすぼめたりして柔らかく動かせるのは、この骨が少しずつズレるように動くから。この骨の名前を、手根骨といいます。
この手根骨は、使いすぎの炎症などで隣の骨とくっくことがあります。指の微妙な方向が変えにくくなるので、手先が不器用だと感じるようになります。
肘や肩に力が入りやすく、肩コリを起こしやすいのも問題です。
手首そのものが曲がらない、と感じる方もいらっしゃいますが、「指が動きにくい」という理由で来院されて、初めて手首が固くなっていることに気づかれる方もいます。手首の骨が固いために指の微妙な方向調整ができず、動かしにくくなっているのです。
とくに固くなっていることが多いのは、親指の付け根。腕の骨との間でくっついて曲がりにくい場合と、人差し指の根本とくっついて、広がりにくいケースがあります。
手首を上げにくくなるので、手をついたときなどに痛みがでます。また、指の動きに直結するので、ピアノを弾く方などでは指の回りの悪さに困ることが多いようです。
■手首の治療は、手根骨をほぐす
自分でできる治療法としては、手首・指の関節の上にある皮膚をほぐす方法があります。これだけでも、いくらか動きが改善するはずです。
それでもまだ違和感があれば、手根骨がひとつづつ独立して動けるよう、ほぐしてゆく必要があります。
八起堂では、TAM手技療法による関節リリースで、一つ一つを動かしていきます。上の図にあるように、1センチあるかないかの大きさの骨の集まりなので、かなり精密作業になりますが、その分、効果も大きいです。
多くの方で初回から改善が見られるので、指が動きにくいと感じたら、ご相談ください。
→詳しくは手の精密治療へ
同じ仕事をしている知人から、親指のTAM治療を頼まれました。じっとしていると痛みがないが、力を入れると痛むということ。見たところ、腱鞘炎のような腫れもありません。
これは関節かな、と親指を軽く牽引しながら動かしていると、
「ギュッ」
と音を立てて、関節が回りました。動かしてみると、痛みが取れています。指の関節が捻れた形で癒着していたのです。
■指は、横からの力に弱い
彼がマッサージしているところを見ると、時々、親指を横にして使っているときがありました。
指の関節は、握ったり開いたりという動きに合わせてできています。ものをギュッと握れるよう、前後に強い構造なのですが、横の力や、ねじれの力には弱いのです。
そのため、指に横からの力がかかると、関節がわずかにズレます。もちろん、普通ならすぐに戻ってしまう程度のズレですが、あまり頻繁にズレると、関節に癒着が起きて、ズレたままになってしまうことがあります。
意外なところでは、パソコンの操作。親指でスペースキーを押すときには、大抵の人が横から押しますね。キーボードを強く叩きすぎるクセがあると、親指を傷めがちです。
防ぐ方法は、横から強い力がかからないように使うこと。できるだけ指の正面から力がかかるように、持ち方、手の置き方を工夫して下さい。
■治療は、軽く、軽く
治療は、関節部の癒着をとり、動きを回復すること。
軽く牽引しつつ、曲げ伸ばししながら癒着を取ってゆきます。強すぎるとかえって痛めることもありますので、精密な操作が必要です。気になるところがありましたら、ご相談下さい。
腰からお尻、足にかけて痛みが走る、坐骨神経痛。ひどくなると、歩くだけで足がしびれてしまったりします。
痛みが長引くことも多いですが、逆に、簡単に治る場合もあるのを、ご存知でしょうか?
■坐骨神経痛って?
腰椎(腰の骨)の間から出て、坐骨(骨盤の下部)を通って足に向かう神経だから、坐骨神経。
この神経が、通り道のどこかで圧迫されて、きちんと信号が伝わらなくなったり、痛みを起こすのが、坐骨神経痛です。
病院では椎間板ヘルニアか、脊柱菅狭窄症を疑うのが基本です。
椎間板ヘルニアは、脊椎のクッションがはみ出して、神経を圧迫している状態。脊柱菅狭窄症は脊椎の中の、神経の通り道が狭くなって神経を圧迫している状態です。
どちらも脊椎の問題なので、治療は手術が原則になります(椎間板ヘルニアは、時間が経つと自然に治ってくるので、経過観察することもあります)。
「もう手術をするしかないのか…」と、悩む方も多いのですが、その前に簡単な治療を試してみませんか?
それは、臀筋(お尻の筋肉)の治療です。
■臀筋が原因なら、簡単に改善!
今までに、椎間板ヘルニアや、脊柱管狭窄症と言われた坐骨神経痛の患者さんを何人も見ました。
そんなとき、まず試してみるのがお尻の筋肉を緩める治療。鍼を打ち、仙腸関節を調整し、股関節を動かして、お尻の筋肉をゆるめます。
すると、それだけで痛みが消える場合があるのです。痛みが減るだけのケースも入れれば7,8割の方で症状の改善が見られます。
坐骨神経は臀筋(お尻の筋肉)の間を通るので、臀筋が緊張して固くなると神経を圧迫し、坐骨神経痛を起こすのです。
ヘルニアや狭窄症が原因と思われていても、実際には臀筋が原因というケースが少なくありません。
そんな場合、深い部分に鍼を打ったり、周辺の関節を調整して臀筋をゆるめるだけで、症状が改善するわけです。
■まずは、お近くの鍼灸院へ
この治療は、鍼を使う治療院ならどこでもできます。ただし、東洋医学系の鍼灸師は、深い鍼を打たない方が多いので、トリガーポイント治療を標榜している治療院が良いでしょう。
基本的には、数回の治療で効果の有無がわかりますし、危険もありません。
まずは臀筋の治療を試してみて、それで効果が出ないときに、ヘルニアや狭窄症の治療を考えても遅くありません。坐骨神経痛と言われたら、まずお近くの鍼灸院で試して見られることをおすすめします。
ダイエットがらみで遠回りしましたが、ようやくまた「ナチュラルボーン・ヒーローズ」の読後感想に戻ってきました。
■筋膜で運動する
この本では一章を割いて、筋膜を運動に活かすことについて書いています。
筋膜は、筋肉を包む膜。実際には筋肉だけではなく、皮下組織や靭帯も含め、何重にもなって全身を覆っている弾力性の膜です。
私達が身体を動かすときには、筋肉の力で骨格を動かすのが普通ですが、この本では筋膜の弾力を活かす方法を紹介しています。
例えば、縄跳びをしているときなど、慣れた人はあまり力を使わず、軽く跳んでいるように見えます。これは、筋膜の弾力の助けを借りているので、エネルギーのロスが少ないといいます。
また、指先を強く広げるようにすると、腕の筋膜が緊張します。その状態で腕立て伏せをすると、筋膜がバネとして働くので、楽に腕立て伏せができるといいます。
■ここからは八起堂の感想
八起堂の治療でも、筋膜や靭帯を扱います。くっついたり、縮んだりした筋膜や靭帯を伸ばすことで、身体の構造そのものを変えることができるので、非常に有効な治療法。
ただ、運動に関する考え方では「ナチュラルボーン・ヒーローズ」とは少し異なります。
「ナチュラルボーン・ヒーローズ」では、筋膜の弾力が強調されています。いわば、バネやゴムのような扱い。
私自身はむしろ、力を伝達するロープや歯車のように感じています。ある場所で発生した力を、別の場所に伝える役目です。
古武術の世界では「手をもってせず、足をもってせず」などと言われます。体幹部の筋力や、体重という強力な力を有効に活用する意味です。
例えば刀を振るとき。腕の力で振るのではなく、体幹部で腕を動かすようにすると、軽く使えたりします。
歩くときにも、足の筋肉で蹴る力を主にするのではなく、わざとバランスを崩すようにして進む技法があります。
中国拳法などでは、重力を打撃力に変換する技法があるとか。それも筋膜を通して手足まで力を導いているのではないでしょうか。
筋膜は、全身を覆う多層構造です。
どの筋膜を張り、どの筋膜をゆるめるかの操作に熟達すれば、筋力とはまた別の可能性が見えます。それを研究するのも楽しいものです。
前回、低炭水化物ダイエットの話を書きました。
確かに、炭水化物は肥満の要因の一つではありますが、食べたら必ず太る、というわけではありません。
炭水化物が好きでも、太っていない人はたくさんいるのです。
■大阪人は、「粉もん」を食べて、なぜ太らない?
大阪といえば、たこ焼き、お好み焼きなどの「粉もん」。うどんも好きで、うどんに白飯を添えた「うどん定食」が存在します。
「大阪人にヨウ素液を掛けたら青紫色になる」
と笑いのネタにされるほど、炭水化物好きの大阪人。だから太っている人の比率が高いと思ったのですが…違いました。
肥満が多いのは、まず沖縄。それから、東北と九州の県。
大阪は中間グループで、思ったほど高くはありません(厚生労働省「都道府県別の肥満及び主な生活習慣の状況」より)。
粉もんを好んで食べるのに、なぜそれほど肥満者が増えないのでしょうか? 食生活からヒントを探してみます。
■野菜で炭水化物の吸収を防いでいる?
炭水化物が脂肪になるのは、血糖値が急速に高くなったときです。
炭水化物(ブドウ糖)が一気に吸収されると血糖値が急上昇。これを「血糖値スパイク」といいます。
膵臓からインシュリンが分泌されて、多すぎる糖分を脂肪細胞に取り込みます。
逆にブドウ糖の吸収がゆっくりだと、すぐに消費されるので、血糖値が上がらず太りにくくなります。(糖質スローオン)
この原理を利用したのが「野菜を先に食べるダイエット」。食物繊維が多い野菜を先に食べ、あとから炭水化物を食べることで、消化吸収を遅らせる方法です。
一時期流行した「低GIダイエット」も、ほぼ同じ原理。
粉もんを食べながら太らない大阪人は、食物繊維をたくさん摂っているはず…! と思って調べたら、野菜の摂取量は最下位に近いところでした。食物繊維説、大失敗。
ほかに何かヒントはないかと統計をパラパラ見ていたら、調味料の項目に目が留まりました。大阪は、砂糖と塩の消費量が、どちらも最下位グループなのです。
■料理の砂糖がキー?
関西は薄味文化。塩分を控えめに、ダシの旨味で料理の味を調えます。この場合、砂糖はそれほど必要ありません。
逆に、塩分の多い味付けをする地方では、味のバランスをとるために砂糖を大量に入れなくてはなりません。
砂糖のような糖分、しかも水溶液は吸収されるのが早く、血糖値を上げやすいのです。
料理に大量の砂糖が使われていると、まず砂糖から吸収され、血糖値を上げます。そこにご飯が消化されたブドウ糖がやってくるのですから、血糖値はさらに上昇。血糖値スパイクが起きて、脂肪に変わる量が増えるわけです。
ファストフードと甘いソフトドリンクの組み合わせが太るのと同じ原理ですね。
ということで、大阪で肥満がそれほど増えないのは、砂糖の少ない薄味によるものだと考えられます…確証はありませんけど。
炭水化物が大好きな人(私もそう!)は、ダイエットが必要になったら、まず食事から砂糖を減らして薄味にするところから始めるのはどうでしょうか?
前回、低炭水化物食とアスリートの関係を書きました。
身体に蓄えられるエネルギーの量で言うと、脂肪は炭水化物の70倍。低炭水化物状態に慣れ、「脂肪を使う能力」を高くすれば、長距離をバテず走れる、という話でした。
こういう話が出ると、どうしても低炭水化物ダイエットに触れないわけにはいきませんね。
安全性に対する疑問など諸説ありますが、脂肪を使う能力に着目すると、けっこう合理的なダイエットかもしれません。
■低炭水化物で、燃料を切り替える
身体にとって、炭水化物は非常に使いやすい燃料です。
それに比べると、脂肪は分解に手間がかかる分だけ、使いにくい燃料。
脂肪と炭水化物の両方があれば、身体は炭水化物を優先的に使います。
仮に、脂肪を使う能力が低いまま炭水化物をとると、炭水化物ばかり使って、脂肪は少ししか使われません。
もともと少ない炭水化物を使い切ったところで空腹感が出るので、食欲が出ます。そこで大量に炭水化物をとると、余った炭水化物は、脂肪に変換(以上、繰り返し)。
低炭水化物食を続けると、グルカゴンや、リパーゼがよく働くようになり、脂肪を使う能力が上がってくると考えられます。
血糖値の上下が小さいので、極端な空腹感が出にくいのと、ストレートに脂肪を使える分だけ、体重の落ちが早くなると考えられるのです。
■低炭水化物の方が、健康に良い?
この、脂肪を分解する能力というのは、意外に大事なんじゃないかと思い始めました。
悪玉コレステロールの量は、脂肪を食べる量よりも、炭水化物の量に比例するという説があります(根拠は未確認)。
以前は「脂肪を食うから脂肪が増えるんだろ!」と思っていたのですが「脂肪を使う能力」を考えるようになってから、考えが変わりました。
体内の脂肪を減らすには、使い切るしかありません(実際には、食物繊維で腸から出す方法もありますが、それは次回)。
だったら、脂肪を使う能力が高い人の方が、ちょっとした減食で血管や内臓の脂肪を減らすことができるはず。
低炭水化物食は、結果として内臓脂肪や血管の脂肪も減らせることになります。
■多すぎれば、なんでもダメになる
私は低炭水化物ダイエットには否定的だったのですが、今回書いたようなことを考えた結果、場合によってはアリだなと思うようになりました。
ただ、ダイエットの原則はあくまで「食べた量よりも、使う量が増えると、痩せる」というもの。
低炭水化物ダイエットが「炭水化物だけ抜けば、何をいくら食べても大丈夫」と誤解されることがありますが、さすがにそんなことはありません。あくまで減食が基本です。
脂肪を使う能力が上がったところで減食すれば、効率よく痩せるというくらいに考えておくとよいでしょう。
ただし、前回も書いたように、長期的な安全性は確認されていません。実行する際には、そのことも考えて注意してください。
前回書いた通り、「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ」の感想から。
現在、長距離を走るアスリートは、炭水化物を中心にしたエネルギーで走るのが主流です。
しかしこの本の主張は違います。長距離を走るアスリートは、脂肪を使って走るべきではないか、というのです。
その論拠となるのは、体内の量。
炭水化物は身体に蓄えられる量が限られているので、ある程度走ると使い切ってしまいます。そこでドリンクなどの補給が必要になるのですが、脂肪として蓄えられるエネルギーは、炭水化物に比べると、莫大といっていいほどの大きさ。
「君の身体には、活用できるエネルギーが16万キロカロリーある。約2千が糖質から、2万5千がタンパク質から、そして14万、実に87%が脂肪からだ」(p.362)
著者のマクドゥーガルは、このアドバイスにしたがって、炭水化物抜きで本当に走れるようになるか、実験をしました。
最初の数日は、半マイル(800メートル)も行かないうちに低血糖でフラフラになっていましたが、しばらくすると身体が慣れてきて、元気に走れるようになっていたとのこと。
著者以外にも、何人ものスポーツ選手が、炭水化物抜きの食事によって好成績を出した、と書いています。
・・・ここからは、八起堂の感想です。・・・
■炭水化物を使う方が走れる?
上に書いた通り、現在のアスリートは、炭水化物を使って走るのが主流です。それは、炭水化物がきわめて使いやすい燃料だから。
体内に吸収された炭水化物(糖)は、そのまま筋肉などで使えます。
脂肪は大量に蓄えられますが、そのまま燃やすことはできません。膵臓からのグルカゴン(脂肪の分解を促すホルモン)、脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼ(脂肪分解酵素)などを使って、脂肪酸に分解しなくてはならないのです。
炭水化物と脂肪を使って走る比較も行われていますが、いくつもの実験が炭水化物の方がよく走れるという結論を出しています。
でも確かに、脂質を中心に長距離を走る人がいる…。
それをどう考えるか…?
■脂肪を燃焼させるには準備がいる
私は、この結果の差は「身体の準備」によるものだと考えています。
上に書いたように、マクドゥーガル氏が炭水化物抜きの生活を始めたとき、最初の数日はすぐに低血糖で動けなくなっていました。しかし、慣れると走れるようになり、二週間するとかなり動ける身体になっていました。
脂肪を使う前に分解が必要なのは、上に書いた通り。分解の速度が運動量に追い付かないと、エネルギー切れを起こします。
しかし、意図的に低血糖の状態を続けることで、グルカゴンやリパーゼの働きを高めていたとしたら? 次々と脂肪を分解して燃やし、効率よく走れます。
つまり、ある程度の時間を使って身体を変えていれば、脂肪を使って好成績を出せるというわけです。
■補給ができる条件かどうか
ただ、必ず脂肪の方が良く走れるということもありません。
炭水化物は体内に蓄えられないのが欠点ですが、補給さえあれば、その欠点は補えます。
古い話では、明治期、日本にやってきたベルツ博士の体験談。
博士が出会った人力車夫は、米、芋、麦など炭水化物中心の食事で110キロを14時間半で走っていたとのこと(ちなみに肉を食べればもっとスタミナがつくかと肉を食べさせたら、身体が重くて走れなかったそうです)。
当時の主要な街道には、十数キロごとに宿場町があり、その間にも茶屋などがあったので、カロリー補給ができたんですね。
現在も、ドリンクなどで補給できることを考えれば、かならずしも脂肪に切り替える必要はないように思われます。
■積極的には勧めない。でも、試してみる価値も…
脂肪を使って効率よく走る。長距離ランナーにとって、魅力的な話です。ただ、危険があるという説にも耳を傾ける必要があります。
低炭水化物食は、心臓や肝臓を特殊な状態に置くので、長期的には健康に悪いという説もあるのです。脳が低血糖状態に置かれるので、落ち着かなくなったり、イライラしたりするという説も。
また、脂肪が多すぎる食事は、膵炎の原因にもなります。
個人的には、食べられる食品群が限られることで、栄養素の偏りが心配です。
もう少ししたらはっきりしたデータも出そろうと思うのですが、現時点では、積極的におすすめはできません。
ただ、短期間なら危険がないことはわかっています。長距離を走るスポーツ選手なら、一度試してみる価値はありそうですね。
ここしばらく読んでいた本が面白かったので、その紹介です。
第二次世界大戦中、イギリス軍は対ドイツ戦の一環として、ナチス将軍の誘拐を計画しました。舞台はギリシャのクレタ島。地元レジスタンスの協力を得て、ナチスを出し抜き、道無き道を逃げ切る…。
その実話を軸に、筋膜による運動、炭水化物を排除した食事、ナチュラルムーブメントなどの、身体理論が解説される本です。
正直に言って、読みやすい本ではありません。
文章自体は平易なのですが、第二次大戦中の誘拐劇と、その逃走ルートをたどる現代の視点、関係する身体理論のドキュメンタリーと、3つの視点が秩序なく入り混じって、注意深く読まないと、振り回されます。
ただ、本の内容は非常に面白いものでした。とくに、身体理論に関してはいろいろと考えさせられることも多かったので、次回から何回かに分けて感想を書きます。
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昔から不思議に思っていたことがあります。それは
「年齢が上がるごとに、睡眠時間が短くてすむ」
という説です。
しかし実際は、歳をとるほど、疲れが取れにくいという方が多いです。疲れが取れないのなら、かえって睡眠時間は長くなければおかしいですよね。
疲れているのに睡眠時間が短いのだとしたら、それは「眠れない」のではないでしょうか?
■歳をとるほど眠れない理由
眠れなくなる理由の一つは緊張です。
遠足や、受験の前の日。なかなか眠れなかった経験を持つ人は多いと思います。緊張しすぎると、脳の活動が下がらないために、なかなか睡眠に入れないのです。
これは、精神的な緊張だけでなく、肉体的な緊張でも同じです。
筋肉は、運動神経や感覚神経を通して、脳と情報を交換していますが、緊張が強くなるほど情報交換の量は増えます。つまり、身体が緊張するほど、脳は休めなくなるわけ。
大人は、日常の生活で、身体のあちこちに習慣的な緊張を抱えています(肩コリや腰痛も、その一つ)。癒着もあり、子供ほど身体が柔らかくなくなってしまうので、子供のように眠れないわけです。
逆に言えば、ゆるめれば、眠れるわけです。
■ゆるめれば、健康寿命が伸びる
マッサージ中、肩コリなどがある程度ゆるんでくると、患者さんが眠ってしまうことが少なくありません。帰り際に、
「これで、帰ってぐっすり眠れる…」
とおっしゃる方も少なくありません。
これは、身体の緊張と睡眠の関係を証明するものと言えるでしょう。
ゆっくり眠れるようになると、疲れがとれ、身体が回復してきます。高血圧、心臓疾患などは、疲れを原因とすることが多いので、健康寿命を延ばすにも役立つでしょう。
緊張をゆるめるには、マッサージを受けるのも良い方法です。
それに加えて、自分自身で身体をゆるめる練習を、生活に取り入れたいところ。
簡単な方法としては、横になり、目を閉じて自分の身体の状態を感じる方法があります。力が入っていると感じられると、自然にゆるんできます。
体系だてて知りたい方は「自律神経訓練法」で検索すると、いろんな方が解説してくださっています。
最新の研究で、腰痛の90%以上は、腰椎や椎間板に変形などの原因がないことがわかっています。ですから、大半の腰痛は、腰の緊張を取れば治ります。
■腰が固い!
腰痛を起こしている患者さんにも2タイプあります。
一つは、先ほども書いたように、腰の筋肉が緊張しているだけのタイプ。ぎっくり腰などに多く、動かすと強い痛みが出ます。
この場合の治療は、筋肉をゆるめることで治せます。
もう一つが、腰椎が固まっているタイプ。慢性の腰痛を持っていらっしゃる方が多いです。
もとは筋肉の緊張から始まっているのですが、長い時間、緊張で固まっていたために、腰椎の一つ一つをつなぐ関節(椎間関節)が、くっついてしまっているのです。
腰椎を押すと手ごたえが固く、柔軟性がないのが特徴。
この場合には、筋肉だけを治療しても、またすぐに再発します。動かない腰椎のために生じた歪みを支えるためではないかと推測されます。
■腰椎を柔らかくする
八起堂では、腰椎にも癒着を取るTAM手技療法を行います。といっても、腰椎は肩や足と違い、動きが少ないので、けっこうな精密作業。一つ一つの腰椎の形や動きを理解しつつの治療になります。
腰椎の動きが改善し、柔軟性が出てくると、周辺の筋肉も柔らかくなります。
人によっては、腰椎が柔らかくなる時に音がする場合もあります。
ある患者さんは、3、4回もポン、ポン、という音が聞こえて、患者さんと一緒に笑ってしまいました(音がしてもしなくても、治療効果に差はありません)。
■大事なのは「柔らかい」こと!
一度腰椎が動くようになると、腰痛を起こす回数が大幅に減ります。 実際、1、2回の治療を受けた後、数か月に一度来るだけでいいと言う人が少なくないのです。
癒着であれ、筋肉の過緊張であれ、固まっているものを柔らかくするが、八起堂の治療。
あなたの腰、固まっていませんか?
膝の痛みにもいくつかのパターンがあります。
いわゆる変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ったことによる症状。腫れたり、水が溜まったりすることが多く、病院でレントゲンを取ると診断できます。
その一方で、膝の軟骨には異常がないのに、痛んだり、動きにくかったりするケースがあります。
そんな場合には、膝関節がねじれていることが多いです。
■膝ねじれの原因は?
膝の関節は、まっすぐに前後に滑るようにできています。しかし、膝が痛い方では、少しねじれるようになっている場合が多いのです。
いままで見てきた限りでは、膝のねじれには、足の歪みが関わっています。
捻挫や使いすぎで足関節を傷めたときには、内くるぶしの周辺が固くなることが多いのです。すると足首を伸ばした時に、足先が内側に向いてしまいます(カマ足)。
歩行時に蹴りだしの位置が内側に移動するので、膝関節は外に向かってねじれてしまい、痛むものと考えられます。
足関節を治す際には、セットで膝を調整する必要があります。
治療はTAMによる関節リリースです。靭帯の癒着をとって、正しく動けるように治療を行います。膝関節はシンプルなようでいて、靭帯が厚く強いため、数回の治療を必要とすることが多いです。
施術後は可動域が広がり、膝の重さや痛みがとれるというのが、患者さんの感想。
■バレエのレッスンに、もの申したい
特殊な例として、バレエダンサーの膝故障について。
バレエの場合は、レッスンが原因で膝を故障している人が、少なくありません。
バレエで多用される、つま先を外に向ける動作(ターンアウト)。正しくは股関節を外にねじって、つま先を外に向けるのですが、動作の完成を急ぐあまり、膝から下を外に向けてねじってしまうことが多いのです。
もちろん、膝には大きな負担がかかります。
バレエダンサーのひざ故障の、半分以上はこのねじりが原因です。何年も故障を繰り返しながら練習しているので、重症化していることも多いです。
正しく外旋する習慣をつければ、確実に防げる傷害なのですが、発表会やコンクールを急いでしまう教室が多く、見逃されがち。
親御さんには、こうしたレッスンをしっかりしてくれる教室を選んでいただきたいと思います。
ネットのwiredで、アメリカの「ソイレント」という合成食品のニュースを読みました。(→リンクこちら)
たった一つの食品で、すべての栄養をまかなうことを目指して配合された食品です。
■完全栄養食、ソイレント
栄養食というと、大塚製薬のカロリーメイトを思い出す人が多いと思います。しかしカロリーメイトは脂肪が多く、タンパク質が少ない構成で、食物繊維もほとんど入っていません。これは、お菓子としてのおいしさを追求したためです。
今回話題のソイレントは、カロリーやビタミン、ミネラル、その他多くの栄養素を完全に理想的に合成したもの。本当に、これだけを食べて生きていこうという食品です。
元々は、貧乏な研究者が、食費を浮かせようとして考えたとのこと。必要な35種類の栄養分をそろえるだけなので、一ヶ月あたりの食費が50ドルになったといいます。
ちなみに味は、WIREDの記者によると
「水で薄めたホットケーキ生地のような感触で、不快な味とは思わなかった。まずくはない」
だそうです。
■食事は何のためにある?
開発者は、食事には、二つの目的があると主張します。栄養摂取のための食事と、味やコミュニケーションを楽しむ食事の二種類。
それは一方に限定する必要はなく、使い分ければ良いというのです。
また、環境問題を考え、将来的にはこれを植物性の産物だけで作り上げるとも言います。
ファストフードで欠かせない肉や乳製品は、実は多くの水と穀物を消費します。それをソイレントに置き換えれば、地球環境への影響も少なく、人口が増えても飢餓の可能性を減らせるとしています。
■現実的な方法論の提示
もちろん、この食品を「食文化の破壊」と批判することはできるでしょう。それだけで本当に健康が保てるのかという問題もあります。
すべての人が健康的な食生活に関心を持ち、お金と時間と手間をかけることが、理想的なのは確かです。しかし、それが現実的に難しいのは、身の回りを見れば、わかりますよね。
難しいからこそ、ファストフードやジャンクフード、カロリー過多の食生活で、健康を害する人がでてくるわけで。
人を変えるよりも、方法を変えるほうが簡単です。
この完全栄養食は、現実主義から生まれた策だと言えます。少なくとも、コンビニ弁当やファストフードだけで暮らすよりは、よほど健康を害する人が減るはず。
■治療の世界でも同じ
これは、私たちのような治療の世界でも同じ。
腹八分に食べて、適度に運動して、姿勢や体の使い方に気を付ければ、健康を害する可能性は、かなり少なくなります。
でも、それを世の中の人、全員に意識してもらうのは、無理ですよね?
人によって時間をかけるべき点は異なりますし、健康に関しての知識や技術が不足しているなら、それを別の人間が補う、という方法は、あって良いはずです。
個人的には、ソイレントはあって良い食品だと思います。
とりあえず、一回は食べてみたい。続けて食べるのは無理かもしれないけど。
腰痛を防ぐ器具、いろいろ売られていますね。
代表的なのが、コルセット。腰の周りに巻いて、腰痛を予防する道具です。
ところがコルセットを使っている人に聞くと、効果があるという人ばかりではありません。それどころか、使うことでかえって腰痛がひどくなる人もいます。
■コルセットが逆効果になる場合
コルセットの目的は、腰の周りにまきつけ、その圧迫と支えで、腰の負担を減らすことです。つまりは「腰を固定する道具」。
前回も書いたとおり、ほとんどの腰痛は筋肉の緊張によって起こります。緊張しているところを固定すると、どうなるでしょうか?
そう、ますます緊張します。コルセットで腰の自然な動きを制限すれば、守るどころか、さらに筋肉が緊張してしまうのです。
立ちっぱなし、座りっぱなしでいる人にとっては、コルセットは役に立たず、悪化させる可能性があります。
■コルセットが腰を守る場合
もちろん、コルセットが役に立つ場合もあります。
たとえば、重いものを持ち上げたり、介護などで中腰の姿勢を取ることが多い場合。コルセットは腹圧を上げる事で、腰の負担を減らします。
力仕事をする人には、効果があるといえるでしょう。
正しいコルセットの使い方は、力仕事をするときだけにつけること。ただ座っていたり、立っていたり、まして寝ている時などにつけていてはいけません。
腰をゆるめることが、腰痛の一番の解決方法なのです。
腰痛対策として、昔から言われているのが「腰痛体操」ですね。
昔から言われているのに「腰痛体操で腰痛が治った」という人は、多くありません。なぜでしょうか?
それは、今までの腰痛体操が、古い理論に基づいているからです。
■腰痛の理論が変わった!
何年か前まで、腰痛の原因は、脊椎(背骨)が傷んでいることだと考えられていました。そこで、腰のまわりの筋肉を鍛えて脊椎を守ろう、という腰痛体操が生まれたのです。
しかし近年の研究で、腰痛の9割以上が脊椎に問題がないことがわかってきました。それどころか、多くの腰痛が、筋肉の緊張による痛みであるとわかっています。
筋肉の緊張が原因ですから、緊張をゆるめる体操が必要です。
■緩める感覚を作る腰痛体操
誤解のないように書いておくと、筋肉を鍛える事自体は悪くありません。鍛えた後に、筋肉をゆるめるのがポイントです。
代表的な腰痛体操を元に、解説します。
仰向けに寝転んで、膝を立てます。その状態で、背中を持ち上げるように、背筋にギュッと力を入れます。(この時、お尻を浮かせないように)。
次に、息を吐きながら背中をストンと落とします。ゆっくりと息を吐き続けながら、背中の力が抜けてゆくのを感じます。そのまま、ダラーンとして10秒くらい。
ある程度ゆるんだ感じがしたら、もう一度上げて、落とす。これを、何度か繰り返します。
お尻を浮かせないようにするのは、背筋の緊張をわかりやすくするため。一度、背筋を強く緊張させることで、そのあと力を抜きやすくなります。
脱力すると眠気が出ますので、眠る前が最適です。
人間には本能的な動作は少なく、環境や意思によって後天的に得る動作のほうが多い、というのが、前回の話でした。
今回は、後天的な環境に合わせたはずの動きが、なぜ腰痛や肩こりを起こすのかについて。
■肩こり、腰痛の原因は、体幹が動かないこと
人類の歴史をみると、採集や狩猟で、一日歩き続ける生活を続けてきたようです。立ち続けたり、座り続けたりという現代人の生活は、そもそも不自然で、それが健康をそこなう元になっているわけです。
デスクワークでも立ち仕事でも、使うのは主に肩から先だけですし、足は立っているだけ。体幹部は、手足の土台として動かさないことが多いのです。
動かないままの体幹部は、緊張が解けず痛み出す…これが、肩こり腰痛です。
重労働をしない生活では、体幹部の力を使わなくても、手足を動かすだけで事足りてしまいます。後天的な生活の中で、体幹部を使う方法を身につける機会がないのですね。
■急に話は飛びますが
「站椿(たんとう。別名、立禅)」という稽古があります。もとは中国の武術・健康法ですが、少し膝を曲げ、手はものを抱えるような形にして立ち続け、身体の感覚と向き合う練習です。
練習中、体幹をゆるめ柔らかく保つと、バランスをとる小さな動きの繰り返しで体温が上がり、早足歩きくらいに呼吸が上がってきます。
体幹部が動いて、これだけのエネルギーを使うのが、本来の姿というわけです(余談ですが、この揺れる站椿を毎日続けると、はっきり体重が落ちます)。
「体幹部は動く」というイメージがはっきりしてくると、肩も背中もやわらかくなってくるようです。
■そこで最近の治療では
癒着をとるだけではなく、固まった筋肉に動きをつけてやる操作をしています。
痛みの改善率が上がるだけでなく、何回か通ってくださった方では「腰痛が起こらなくなった」とおっしゃってくださることが増えました。
筋肉が柔らかさを思い出すのでしょうか。
こり、腰痛でお悩みの方。
立ち仕事、座り仕事は減らせないかもしれませんが、体操でもなんでもやってみて、体幹部の動きを思い出すのはいかがでしょうか?
先日いらしたお客さんと、肩こりや腰痛の原因について話している時に、
「人間にとって、本当に自然な動きは、どんなものだろう」
という話になりました。
スポーツ選手が、無理なフォームでプレーして身体を壊したり、悪い姿勢で腰痛や肩こりを起こしたりしますが、自然な動きができれば、防げるのではないか、というのが、その話。
人間にとって、身体の方から出てくるような「自然な動き」があるのでしょうか。人間と動物を比較すると、可能性は薄いように思われます。
■本能は、便利だが不自由
自然な動きといえば、動物。
泳いだことのない犬を、いきなり水に放り込んでも溺れることはまずありません。本能の中に、犬かきの泳ぎ方が入っていて、練習しなくても泳げるのです。
その一方で、犬かき以外の泳ぎをする犬は、見たことがありませんね。
本能というのは、反射のようなもの。
鼻をくすぐるとクシャミをするとか、眠くなったらあくびが出るのと同じで、自動的に働きます。
犬は、水に入った瞬間に「犬かきのスイッチ」が入ってしまいます。
そのスイッチを自分でコントロールすることができないので、別の泳ぎを覚えることができないのです。
■人間にとっての自然は、本能ではない
たとえて言うなら、犬の本能は、家電製品のようなもの。スイッチを入れた瞬間に使えるようになりますが、設計された時の目的以外のことはできません。
比べれば、人間の方はパソコンです。最初からできることはほとんどありませんが、ソフト(今はアプリの方がわかりやすい?)を入れることで、幅広い仕事に対応できます。
そう考えると、人間にとっての自然な動きは、本能から出てくるものではないと言えます。その人の環境や目的に合わせて、学習されたものが、その人にとっての「自然な動き」になってくるのでしょう。
…でも、「自然」なはずなのに、身体を壊す人がいるのは、どうしてでしょうか?
書きたいことがまだあるので、この話、次回に続きます。
腰痛や肩こりの患者さんの治療。
八起堂では、筋肉や関節の引っかかりをとることで治療するのですが、もう一つ大事にしているポイントが有ります。それは、皮膚。
■皮膚と骨とが貼りつく場合
とくに皮膚の動きが悪くなっているのは、骨を触れる場所。
背骨の出っぱり(棘突起)と、肩甲骨の突起(肩甲棘)、あとは骨盤のフチ。この三箇所で皮膚が動かないために、体幹部の動きが制限されている方が多いのです。
肩甲骨が動かなければ、肩こりになりますし、骨盤のフチが突っ張ることは、腰痛の原因にもなります。
背骨の出っ張りは、どちらにも。とくに、首に近い部分での貼り付きは首の疲れに影響しています。
■治療は簡単
治療そのものは、動かない部分の皮膚に手根をあて、すべらせるだけ。うまく癒着が取れる時には、しばしばポンとかバリバリという音がします。
決して難しくはないのですが、場所が場所だけに、自分で行うことができません。信頼できる施術者に頼みましょう。
施術者の方は、勢い余って肋骨に力がかからないように注意して下さい。
デスクワーク時の猫背は、腰痛や肩こりのもと。そんな猫背を防ぐ、努力のいらない工夫を2つ、ご紹介します。
■パソコン画面の位置と角度を変える
私達がパソコン作業をするとき、無意識のうちにディスプレイを正面から見ようとします。ディスプレイが上向きなら顔を上に持っていきますし、下向きにすると画面をのぞき込むために顔を下に動かすわけですね。
そこで、ディスプレイの角度を少し高めにすると、自然に背筋が伸びます。正しい姿勢での顔の位置か、ほんの少し高めがおすすめです。
ノートパソコンを膝において作業する方もいらっしゃいますね。身体に近いところにディスプレイがあると、どんなに努力しても顔が下向きになり、首に負担が。
やむをえない場合を除いて、机などに置いて作業するように心がけましょう。
■椅子の後ろにクッション
背筋を伸ばすには、骨盤を立て、腰が軽く反るようにする必要があります。
実は、骨盤の角度を決めるのは、膝の高さです。膝がお尻より高い位置にあると、殿筋に引っ張られて骨盤が後ろに傾き、猫背になります。なぜか事務用の椅子は後ろに向かって傾斜していることが多く、猫背になりがち。
そこで椅子の後ろ半分にクッションを入れると、膝が少し下がって、自然に背筋が伸びます。
クッションがない場合には、椅子に浅く腰かける方法もありますね。
どちらの工夫もすぐできて、努力もいらない優れもの。一度、お試しください。
「年齢は背中に出る」と言われています。
姿勢が悪いと、肩こりや腰痛の原因になるだけでなく、老けて見えます。逆に、背筋がスッと伸びた立ち姿は若々しく見えるもの。
しかし頑張って背中を伸ばそうとしても、すぐ元通りになってしまう、という人は多いはず。
■背中が丸くなる原因は「かかと体重」
実は、立ち姿は体重の位置で決まります。
背中が丸くなる人は、足のかかとで立っていることが多いのです。かかとに体重がかかると、後ろに倒れるのを防ぐために自然に上半身を前に倒してしまいます。その結果が猫背です。
逆に、つま先側に体重がかかると、上半身は反り、スッと背中が伸びた姿勢になります。
以前も書きましたが、この原理を応用しているのが、女性を美しく見せるというハイヒール。かかとが高くなることで体重が足先にかかり、背筋が伸びるのです。
とはいえ、いつもハイヒールを履いているわけにはいきませんね。男性ならばなおのこと。
■ふくらはぎを伸ばせ!
ハイヒールよりももっと簡単に、体重の位置を変える方法が、ふくらはぎのストレッチ(筋膜リリース)。
ふくらはぎにある腓腹筋、ヒラメ筋が伸びると、足首が深く曲がるようになります。すると体重のかかる位置が前に移動し、背中が伸びてくるのです。
ストレッチ方法は、いわゆる「アキレス腱伸ばし」のポーズです。伸ばした状態を保ったまま、30秒静止、左右で合わせて一分間。
直後から立ち方の変化が実感できます。もちろん、一回だけでは時間とともに戻ってしまいますが、一日に1,2回のストレッチで変化を保つことができます。
なお、しばらく続けても足首が深く曲がらない時は、足関節が固くなっている可能性があります。「足の治療について」で紹介している足首回しを試してみてください。
何回やってもうまくいかない時は…TAMで癒着を開放する方法も。
どうぞ、ご相談下さい。
先日、久しぶりにいらした患者さんが、
「他の治療院に、浮気してませんから」
とおっしゃってくださったのですが…。
良いんじゃないでしょうか。治療院を浮気しても。
■「何にでも効く治療」は、無い!
昔から、「万能薬は何にも効かない」と言われています。
治療家というのは、一人一流と言われています。それくらい、治療家によって持っている技術は違いますし、得意分野も違います。そして、一つの技術を追求すればするほど、専門的になります。
例えば八起堂は、八起堂の得意分野は筋膜や関節の癒着リリース。肩こりや腰痛、足からの身体バランスの改善などで、かなり高度な治療ができると自負してます。
とくに、足のねんざ後遺症に関しては、足根骨の一つ一つまで分解するように調整し、動きを改善することができます。
その一方、リンパマッサージでは、ごく一般的な技術しか持っていません。むくみをとるなら、八起堂より優れた治療院はたくさんあります。
さらに言えば、東洋医学は完全に専門外。「気の流れを整えて下さい!」と言われても、期待には応えられません。
■治療院は使い分けましょう!
病院に行くとき、目が悪い時は眼科、鼻が悪い時は耳鼻科に行きますね。治療院も同じように、
「この痛みにはこの治療院、この不調はあっちの治療院」
と使い分けて良いのです。
だから、治療院は大いに浮気して下さい。ちょっと通って、合わなければやめてもいいし、気が向いたら戻っても構いません。治療院の側もそれはわかっていますから、しばらく通わなかった人が来ても、気を悪くしたりしません(逆に、それで怒るような治療院なら、お山の大将です)。
ただ、一つだけ避けてほしいのが、力任せに揉む店。
コリが強いからと言って、強く押しても、効きません。筋肉は、防御反応でかえって固くなってしまうからです。それでも押し込むと、筋肉がつぶれ、挫滅して繊維化を起こしてしまいます。
使い分けていい。でも、信頼できる治療院を選んでほしい。
それが、お願いしたいことです。
ハイヒールが外反母趾を起こすのは、足先の締め付けによるものとされています。親指が、外側に向かって押しつけられるからです。しかし実際には、もう少し複雑なメカニズムがあります。
■指の筋力が、関節を変形させる
足の親指を曲げる筋肉は、主に足の裏にあります。この筋肉が、腱を引っ張り、その先にある指を曲げるのです。
この腱は、正常な状態では、指の真下を通っていて、まっすぐに指を曲げます。
さて、ここで先のとがったハイヒールを履くとどうなるか。
足の親指は、根本から大きく外側に曲げられ、腱の付着部も外側にズレます。こうなると、指を曲げるはずの筋肉の力は、ズレた腱によって指を内側に向けて引っ張ることになります。
とくにハイヒールは、普通の靴にくらべて指先の加重が大きくなっています。普段より強い力が、足指を外側に曲げるために使われるのです。外側に引っ張る力は、曲がれば曲がるほど大きくなるので、外反がある程度まで進むと、一気に進行します。
■外反母趾を防ぐ歩き方
それでも、ハイヒールを履きたいという方は、いくつかのことに気をつければ予防することができます。
まずは、できるだけ先の丸い靴にして、つま先が締め付けられないようにすること。これは絶対。
もう一つは、歩き方です。
つま先を少し外に向け、足の内側を押し出すように一直線上を歩きます。
足の親指は、全ての指の中で、もっとも強く体重を支える指です。そのため、体重のかかる場所を支えるように動きます。
つま先を外に向けた状態では、体重はかかとから足の親指側に抜けてゆきます。親指は、地面を強く蹴り出すために内側に向かって(指を開く方向へ)踏ん張る力が働きます。この力は、外反母趾を防ぐ方向に働くので、予防に効果的です。
この歩き方の効用は、それだけではありません。つま先を少し外に向ける歩き方は、ハイヒールを履いた足を、最も美しく見せる歩き方とされているのです。
キレイに見えて、しかも健康。この歩き方、練習して損はありませんよ。
確定申告も終わって、ようやく一息つきました。忙しいのと重なって、ブログ更新が遅れてしまいました。来年は早く始めようと思います…と毎年言っていますが、毎年こんな調子ですね。
さて。
街のリラクゼーションマッサージなどで、事故が多い、というニュースがネットで出ています。多いのは、骨折と頚椎損傷。
こうした事故の原因は、ひとえに「強すぎる」ことにあります。
■「強さ」の誘惑
施術をしていて、うまく効果が出ない時、施術者は「もっと強くしたら効くのではないか?」と、つい考えてしまいます。ここで、強さの誘惑にのってしまうと、事故を起こします。
効果が出ないときには、力を強くするのではなく、別の方法を試すことです。
例えば指圧なら、押している場所や方向、速度、持続時間などを変えます。それでダメならリンパマッサージや、筋膜リリース、鍼灸、あるいはTAM(笑)にと、施術方法を変更する。それでもダメなら施術をやめて病院などを紹介することも。
大事なのは、多くの選択肢を持っていることです。一つの症状をさまざまな面から見られることは、治療をする上でも、事故を避けるためにも必要。
施術中の事故が、リラクゼーションやボディケアなどで多いのは、アルバイトスタッフが「一つの技術しか教えられていない」からではないかと考えられます。選択肢がないので、強くする以外の方法を思いつかず、事故に至ってしまう可能性が高くなるのでしょう。
■重要なのは「選択肢をもっていること」
ここまで書いてきて、ふと思ったのですが、児童虐待もこれと同じ構図ではないでしょうか。
虐待をした親の多くが「しつけのつもりだった」と言います。
しつけにも、褒めたり、ルールを作ったり、ノせたりと、いろいろな方法があります。また、ある程度は理解して諦めることもあるはず。
ところが、怒鳴る、叩くなどの罰を与える方法しか知らないと、子供が思い通りに動かないときに、罰を強くすることしか思いつけなくなります。エスカレートした罰は、やがて虐待に至ります。
選択肢を複数持っていることは、とても重要なのです。
八起堂治療院でも、鍼治療は行います。
メインになるのはトリガーポイント鍼治療。筋肉の中にできるコリの固まりに鍼を打ち、緩める治療です。
腰痛の患者さんなどには極めて有効で、あっという間に痛みを減少させることができます。
トリガーポイント鍼治療では、筋肉の中にあるポイントに鍼を届かせる必要があるので、3~5センチと深く鍼を打ちます。そうでなければ、効きません。
■鍼は浅く打っても効く
しかし、場所によっては、鍼を浅く打つこともあります。それも、切皮という2~3ミリしか刺さない打ち方。
狙うのは、皮膚に違和感を感じるところ。緊張しているというか、動きが少ないというか、他とはちょっと違う感触の場所に浅く打つと、周辺の筋肉が緩みます。
痛みもリスクもほとんどないので、主に上半身で便利に使っていますが、困っていることが一つ。こんな浅い鍼がなぜ効くのか、理論がわからないのです。
■体壁内臓反射という説
3ミリといえば、皮下組織を通っているかどうかの浅さです。筋肉には全く届いていないのに、筋肉に作用する不思議。トリガーポイントの理論では説明できません。
「体壁内臓反射」と言われる説があります。
神経は脳から手足の末端まで、枝分かれしながらつながっています。近い神経枝との間で混線が起こると、内臓の異常が皮膚に伝わったり、皮膚の刺激が内臓に伝わったりするというのが、体壁内臓反射説のあらまし。鍼灸や指圧を現代医学的に考える際に、使われる理論の一つです。
私の見ている皮膚の感触も、筋肉の緊張が皮膚に伝わり、立毛筋などを緊張させて異常な感触を生じると考えれば、納得がいきますね。
■説明不足!
ただしこの説には、致命的な欠陥があります。
内臓(筋肉)の緊張が皮膚に伝わるところまではわかります。皮膚の刺激が内臓に伝わることも理解できます。しかし、鍼の刺激がプラスに作用する理由がわかりません。
普通に考えれば、より緊張しても良さそうなものではありませんか?
そんなわけで、なぜこの鍼が効くのかは今でもわからないまま。はっきりすれば、さらに効果的に使えると思うのですが…。
前回は、子供の身体で癒着が生じて固くなることについてお話しました。しかし、固くなる原因は他にもあります。むしろ、こちらのほうが深刻かもしれません。
■ストレスが身体を固くする
子供の頃、声の大きな先生が怒ると、緊張して体が固くなったりしませんでしたか? また、失敗してはいけない状況で、肩に力が入ったり。恐怖や、プレッシャーのかかる状況になると、筋肉に力が入ってしまうものです。
ストレスがかかるのが短時間だと、すぐに筋肉が緩んで解消します。しかし、長時間ストレスが続くと、力が入っているのが習慣になって、戻りません。大人の肩こりや腰痛と同じです。
■固いと実力が出せない
緊張した子供の動きは固く、ぎこちなくなります。
別のところにも書きましたが、コーチが怒鳴りちらす人だったため、けが人だらけだった野球チームを見たことがあります。成績も振るわないままでした。
強いストレスは、一時的には気持ちを引き締める効果があるかもしれません。しかし、気持ちだけではなく筋肉も引き締まって、固くなってしまいます。長期的に見れば、ケガが増えます。
また、後ろから追い立てられるようなストレス下では、自分で考えて工夫する余裕がありません。優秀な選手にマイペースな人が多い理由は、こんなところにあるのでしょう。
子供の身体が固い、動きがぎこちない時には、何かストレスがかかっていないかを考えてみても良いかもしれません。
小3の娘は、なかなか眠らない子供です。赤ちゃんの頃から、ほとんど寝落ちしたことがないという本格派。
あまりにも寝付きが悪い時には、緊張を解く施術で、寝付かせることがあります。先日も背中を軽くなでてやったら、
「あー、気持ちいい」
って、仕事疲れのOLか!
ついでにTAMの要領で肩を動かしてみたら、意外にもパリパリ音がして、軽く動くようになりました。ということは、子供の関節でもすでに軽い癒着が生じているということ。
関節で癒着が生じる原因は、繊維タンパク質の沈着によるもの。この原理は、大人でも子供でも変わりないので、癒着が生じてもおかしくいないわけです。
というよりも大人になるにつれて身体が固くなってゆく要因の一つは、こうして使わない部分に沈着してゆくタンパク質によって構造が完成してゆくからではないかとも思われます(もう一つは、筋肉の使い方が決まって動く範囲が決まってくるから)。
ときどき癒着をとってやることは、子供の成長の上で役に立つと思われます。
…ただ、人によるとは思います。
私が子供の頃は身体がバリバリに固くて、前かがみで指先が床につきませんでした。今の方が柔らかいくらい。
身体の使い方次第で、リカバリーもきくのです。
少し前に「マッサージでダイエットできるか?」という一般公募実験をしまして、何人かの勇者が名乗りを上げてくださいました。
生活は何も変えないという条件で、週一回、三回マッサージする実験の結果は、増えたり減ったり。個人差があって、効果があるとはいえませんでした(筋膜リリ-スを毎日10分、6ヶ月で10キロ痩せた、という報告があるので、回数が少なかったのかも。しかし半年間、毎日施術は無理!)。
しかしその中でお一人、面白い体験をした方がいらっしゃいました。
マッサージを受けるたびに、トイレで出るもの(大小とも)の色、匂いが、いつもとぜんぜん違ったというのです。三回ともそうだったというので、偶然ではなさそう。
「毒が出た感じがする!」
というのが、感想でした。
マッサージで、「小」が増えるのはよくあることです。リンパ液の流れが良くなるので、筋肉の間や皮下組織に溜まっていた水分が出てくるのです。また、組織間にあった老廃物が動かされ、一度に排出されるため、尿の色が変わることもあります。
「大」の方は、短時間のマッサージで成分が変わることは考えにくいです。しいて言えば、マッサージにより自律神経が刺激され、腸が活発に動き出したため、普段と状態が変わった可能性がありますね。
構造に働きかけるマッサージは、血液や神経の状態を変え、不要なものの排出を促す可能性があります。
とはいえ、ここまで極端に反応するのは稀なケース。めったに起こることではないので、その点ご了承下さい。
このところ健康番組などで話題なのが、筋膜リリースなどの筋膜治療。筋膜とは、筋肉の表面を覆っている膜です。
■筋膜とは?
筋肉は、筋繊維と言われる細長い細胞で出来ています。たくさんの筋繊維のまとまりを包んでいる膜が、筋膜。フィルムで包んだソーセージを想像してもらうと、わかりやすいかもしれません。
筋肉を包んでいる筋膜の他に、内臓を包んでいる胸膜や腹膜、皮膚の下で、ひとつながりに全身を包んでいる皮下組織の膜も、まとめて筋膜と呼ばれます。
さてこの筋膜、状況によっては縮んで固くなったり、膜どうしがくっついたりします。そうなると姿勢を歪めたり、動きを妨げて痛みや疲れの原因になります。
こうした筋膜を正常に戻そうとするのが、現在言われる筋膜治療なのです。
■筋膜の治療法は?
筋膜の治療にも、いろいろな方法があります。
・のばす
最もメジャーな方法で、いわゆる筋膜リリースの中心となる技術です。縮んだ筋膜に連続的な力をかけてストレッチします。
・分離する
筋膜どうしがくっついているときに、隙間を開いたり、ずらすように動かすことで分離し、自由に動けるようにします。
・その他
鍼で刺し、壊して新しく再生させる方法や、お灸の熱で血行を増やし、伸ばしてゆくという方法をとる人も。
八起堂の筋膜治療は、TAM手技療法でくっついた筋膜を分離する方法が中心。あとは要所要所をピンポイントで伸ばす方法を併用します。ごくまれに、鍼を使ってほぐす場合もありますね。
筋膜治療は、一見簡単そうに見えます。しかし、深部の筋膜や、関節の周辺の筋膜などは、人体の構造を知らなければ施術を届かせることができず、癒着や短縮が残ってしまいます。入りやすく、奥が深い治療法だといえます。
以前は病院でも治療院でも、筋肉や骨、神経だけが治療対象とされ、筋膜・靭帯はほとんど無視される存在でした。筋膜治療が一般に行われるようになって選択肢が広がり、これまで治らなかった不調も治せるようになってきています。
これまで何年も筋膜や靭帯の癒着を治療してきた者としては、世間の認知度が広がってくれて、ようやく肩身が狭い時代が終わった気分です(笑)。
呼吸は胸式呼吸と腹式呼吸に分けられます。腹部を動かすのが腹式呼吸で、肋骨を動かして呼吸するのが胸式呼吸。
今回の話では、肋骨を動かす胸式呼吸がポイント。
■姿勢と肩こり
筋肉や筋膜は、使わないと短縮して固くなります。それは、肋骨を取り巻く筋肉も同じ。筋肉が固くなると肋骨の間が広がりにくくなります。
呼吸がしにくくなるのはもちろんですが、胸が膨らまないので、姿勢が前かがみになり、背中が丸くなってしまいます。
肩こりにも影響します。首の筋肉には、肋骨から始まる筋肉が何本もありますし、肩甲骨を動かす筋肉も、肋骨についています。肋骨の動きが固くなると、首や肩甲骨を動かす筋肉も緊張しがち。肩・首がコリやすくなります。
■深呼吸で美しく、楽に!
ではどうするかというと、一番簡単な方法が深呼吸。
背中をそらすように大きく息を吸い込んで、10秒くらい止めます。止めるのは、筋肉にストレッチの時間を与えるため。
TAMの理論で言えば、胸の筋肉などにテンションを掛けた方が効果が上がるので、両肘を後方に引くようにした状態で、深呼吸します。
首、肩コリを感じた時に、試してみてください。緊張した筋肉が緩み、胸が広がるのがわかります。首のコリも軽減しますよ。
付記
名古屋の治療家C先生から、背中が丸くなった高齢の方でも、深呼吸が有効だったというご連絡を頂きました。
脊椎の可動性改善と脊柱起立筋マッサージの後、両腕を後ろに引き胸を広げる形で深呼吸を深く行うことで、丸くなった背中に改善が見られ、体幹のバランスがよくなったとのことです。
他にも使ってみた方がおられましたら、ご感想などをいただけると幸いです。
前回書いた「世界一寒さに強い男」ヴィム・ホフさんの、寒さ対策の秘訣は、精神のコントロールと呼吸法だとのことでした。
その呼吸法は、ゆっくり大きな深呼吸を15回、素早い深呼吸を30回、大きく吸って息を止めるのを2回(詳しく知りたい方は、「ヴィム・ホフ」で検索してみてください)。
試しにやってみると、すぐに足先の温かさを感じました。ヴィムさんの言うような精神のコントロールはできてないので、深呼吸の作用だと思われます。考えられる可能性は三つ。
ひとつは、深呼吸で十分に酸素を取り込んだことで、発熱が起こっている可能性。それにしては少し早すぎる気がしましたが…。
ふたつ目は、深呼吸でリラックスしたことで、手足の血管が開いた可能性。手足の毛細血管は自律神経にコントロールされていて、リラックスすると血流量が増えます。
三つめの可能性は、深呼吸で内臓が大きく動いて、その圧力変化で血液が手足に送り出された可能性。
深呼吸は別名「内臓のマッサージ」と言われています。圧力の変化でも血流が増えますし、とくに腹式呼吸では大きく上下することで位置も変わります。
ヨガ、太極拳、気功など、呼吸を大事にする健康法が多いのは、この内臓マッサージ効果もあると考えられます。
どれが理由であるかはわかりませんが、少なくとも深呼吸をして悪い理由はありません。おすすめです。
なお、深呼吸にはもう一つ効果があることがわかったので、それは次回に。
前回、身体は、カロリー消費を減らす方向へ進化してきたという話を書きました。その関連で雑談をいろいろ。
■寒さダイエット
南極越冬隊の消費カロリーは、一日4000キロカロリー。常人の二倍という話は前回書いたとおりです。寒いと、寒さに耐える発熱で、カロリーを消費します。
ということで「寒さを我慢して痩せよう」というダイエットがあるそうです。理論的には効果があるはずですね。ただし、食欲という問題があります。
南極越冬隊や冬山登山では、極端に脂肪の多い食料を持ってゆくことがあります。普通なら気分が悪くなりそうな脂量でも、寒さで味覚が変わり美味しく食べられるとのこと。つまり、寒いほど高カロリーのものを食べたくなるというのが本能なのです。その食欲に耐えきれれば、結果を出せるかもしれません。
なお、低温を我慢すると血圧が上がりやすいので、血圧や心臓に問題のある方は注意して下さい。
■寒くても平気な人
生まれつきなのか、訓練なのか。寒くてもしもやけにも凍傷にもならない人がいます。
オランダ人のヴィム・ホフさんは、世界一寒さに強い男として、ギネスブックの記録をいくつも持っています。氷の中に1時間以上座っていたり、パンツ一丁で冬のキリマンジャロに登ったりと、寒さ冷たさに影響を受けない特技の持ち主です。
「呼吸法と精神のコントロールで体温を上げることができる」と言うのが、ヴィム・ホフさんの主張。
科学者が調べた所、褐色脂肪細胞という細胞が、普通の人よりも活発に働いて熱をつくっているということがわかっています。呼吸法による酸素の取り込みが、発熱を可能にしているのでしょうか。いずれにせよ、発熱には燃料が必要。どれだけ食べるのか、気になります。
■太りやすさは、生まれる前に決まる?
太りやすい人の身体では、エネルギー消費を節約する倹約遺伝子が作用しています。を作用させるためのスイッチが、飢餓状態です。極端なダイエットなどで飢餓状態になるとこの遺伝子にスイッチが入り、エネルギーを節約。リバウンドを起こしやすくなります。
実はこのスイッチ、生まれる前から入ることがあります。
生まれた時の体重と、その後の健康状態を長期間観察したところ、母親が食事制限をして生まれた低体重児(2500グラム以下)は太りやすく、生活習慣病を発症しやすいことがわかってきました。
胎児の時に飢餓状態を感じて、倹約遺伝子のスイッチが入るらしいのです。
少し前まで、妊婦に関しては徹底した体重管理が行われていました。難産や、妊娠中毒症を防ぐためです。しかし、この研究を受けて、体重管理の基準が変わってきたようです。
先週からしばらく、今年一番の冷え込みと言われましたが、奈良はそれほど冷えませんでした。足の小指がしもやけになってしまったのが唯一の被害。まだ少し腫れています。
■しもやけとは
しもやけは、難しい言葉で言うと「凍瘡」。冷えて血行が悪くなることで、組織が腫れたものです(いわゆる凍傷は、組織が凍ったことによるもので、別物)。
私達の身体は、寒くなると脳や内臓を冷やさないため、身体の中央に血液を集めるようになっています。その結果、手足の先に血液が行き渡らず、しもやけになるのです。
■しもやけの原因は、人類の生き残り戦略!
現代人の感覚からすれば、しもやけにならないようにどんどん体温を上げて血液を送ればいいのに、と考える所。しかし、これは厳しい自然環境の中、生き残りをかけて獲得したメカニズムだそうです。
体温を上げるには、大量のカロリーが必要です。例えば、南極越冬隊では普通の大人の二倍のカロリーを食べているとのこと。
食料が乏しい冬、どんどん体温をあげたら、しもやけにならない代わりに餓死してしまいます。死ぬよりは手足をしもやけにするほうがマシ、という方向に人類は進化してきたのです。
■人体は、いまでも飢餓に備えている
生き残るためには、カロリーを節約しなくてはならない。人体は、この命題を再優先にしています。それは、体温だけの話ではありません。
例えば、一日寝て過ごすと、筋力が5%低下します。筋肉は存在するだけでカロリーを消費しますので、必要がない状況ではすぐに分解されてしまうというわけ。
脳も同じ。頭を使わないと、脳の萎縮が早くなることが知られています。脳は全身で使われるエネルギーの20%を消費するほどの大食漢。使わないなら脳も減らしたい、と人体のメカニズムは考えるでしょう。
個人的には、身体が固くなるのも、ムダに大きい動きを減らそうというメカニズムの働きではないかと考えています。
進化の過程で出来上がったシステム。それに抵抗して、いかに機能を取り戻すか、柔軟に自由に動けるようにするか。それが、私たち治療家の仕事なのです。
早期発見、早期治療とは、医療の世界でよく言われることです。私たち治療家の間でも、早期治療が大事とされる症状が、いくつかあります。その一つが、ヒザ痛。
■痛みの軽い初期は、長く続く
通常、膝の痛みは違和感や軽い痛みとして始まります。この段階では、膝関節で起こっているのは軽い炎症で、関節の変形はほとんど見られません。
ときどき痛い、歩き出しだけ痛い、なんとなく重く、曲がりにくいという段階が、わりあいに長く続きます。
多くのヒザ痛の原因は関節のズレ、足の歪みなどで、この間に足などを調整して荷重を平均化すると、痛みが消えるケースが多いです。
■関節が変形し始めると、進行が速い
変化が加速するのは、関節の軟骨が、ある程度減ったところ。とくに、内側の軟骨が減って、O脚が目立ち始める頃です。
関節面が摩耗するほど体重の集中もひどくなるので、摩耗が一気に進み始めます。ある程度以上変形すると、鍼灸マッサージなどの手技療法では、痛みを減らすことしかできません。根治するには、手術が選択肢になります。
こうしたことを考えると、ヒザ痛は、できるだけ早い治療と保存が必要。まずは足を調整し、歩くなどして筋力を鍛えることが望ましいといえます。
■サプリメントの効き目は、人それぞれ
なお、膝関節に良いというサプリメントも売っていますが、今のところ医学的に効果を証明するデータはないようです。
患者さんに聞いても「効いた」という人と「効かなかった」という人がいましたので、まずは少量から試してみて、様子をみるのが良いかと思います。
このところ、トリガーポイント鍼療法のことで、お問い合わせを頂くことが増えました。
■トリガーポイント鍼治療とは
鍼治療といえば東洋医学、という印象ですが、トリガーポイント鍼療法は、現代医学の理論によるものです。
トリガーポイントを簡単に説明すると、筋肉のコリが極端に強くなった部分。血液の流れが悪くなったため自然には回復できない塊(硬結)となって、動いたり、圧迫が加わると、痛みを発します。痛みの引き金(トリガー)になる場所(ポイント)ということで、この名前がつきました。
そこで、このトリガーポイントを治せば痛みが消える、というのがトリガーポイント治療の基礎理論です。
治療としてはマッサージや指圧、病院なら注射による方法もあるのですが、なんといってもメインは鍼治療です。
痛みの引き金となる筋肉のコリに鍼を打ち(刺し)、数分おいて、筋肉を緩ませます。
■トリガーポイント治療の長所と短所
長所は、即効性と確実性です。筋肉のコリという物理的な対象を治療するので、治療した分だけ症状が改善します。仕事など、日常で生じる痛みの定期的メンテナンスとして、優れた力を発揮します。
つぎに短所…というよりも、使い方の問題について。
トリガーポイントは習慣や歪みによって生じたコリの強くなったもの。「原因か結果か」といえば、結果だと言えます。つまり、原因となる歪みなどを一緒に治す必要があります。
八起堂では、特に腰痛の治療でトリガーポイント鍼治療を多用します。合わせて骨盤(仙腸関節)の調整、足の歪み調整、腰椎の可動性を回復させる治療などを行い、ほとんどの場合、その場で痛みが軽減します。
首のコリ、それも頭と首の境目のコリで、悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。苦しいし、頭痛を起こすこともありますし。
■首と頭の境目は、どこ?
私たちは、自分の身体を動かすとき、どう動いているかというイメージを持っています。このイメージにズレがあると、コリや痛みの原因になることがあります。
たとえば、首と頭の境目はどこにあるでしょうか?
いろんな人に聞いてみると、アゴの高さよりも少し上くらいをイメージする人が多いのです。しかし、実際の境目は、もっと上!
耳の下を触ると、少し出っ張った骨があるのがわかりますね。実は、その高さが首と頭の境目。ついでに言うと、前後の位置も、この左右の骨の間。思ったより前にあるな、と思いませんか?
この部分、靭帯や筋肉の層が厚く、あまり動くイメージがありません。しかし、実際には首を左右に回すなどの動きで、重要な働きをします。
首を左右に回すのも、前後に曲げるのも、この位置から動かせると思うと、動き方がかわります。
左右の耳の下に手を当てながら、境目を意識して首を動かしてみましょう。普通の時よりも大きく動かせませんか?
■動かすだけで、コリは減る!
このように首と頭の境目のイメージを変えると、動きが増えて緊張がとけます。
先日いらした、患者さんでは、この動きを少し練習していただくだけで、みるみるうちに首が柔らかくなってゆくのが分かったほど。
とはいうものの、この部分は、靭帯が厚く、筋肉層の重なりも多いので、組織の部分が貼りつきやすいところでもあります。とくに第一頚椎周辺は、固くなりやすい傾向がありますね。
何度か試して、それでもコリや痛みが残る場合には、頚椎が貼り付いたまま、固まっていることがあります。
首の後をなでてみて、骨の凸凹が不揃いな場合は、頚椎の関節か、周りの筋肉が固まって、動かなくなっている可能性があります。そこを中心として首のコリが発生するので、癒着をとる治療をしたほうが良いでしょう。お気軽にご相談ください。
※関連記事 「ストレートネックを自分で治す方法②」
膝関節、股関節などの関節がすり減って、痛みが出る変形性関節症。多くの治療法のあと、最後の手段が人工関節置換術。セラミックやチタンで出来た人工関節を埋め込む手術です。
すり減った関節がまるごと入れ替わるので、もう関節が痛むことはないはず。
ところが、人工関節の手術後も、痛みが続く方がいらっしゃいます。どうしてでしょうか?
■続く痛みは、傷跡が原因
人工関節の手術では、関節の周りの筋肉や、靭帯を切断し、そこから関節の入れ替えを行います。何重にも重なった組織を切り、元通りにつなぎ合わせるのですが、切った傷跡が固くなったり、くっついたりしてしまうことが。
つまり、痛んでいるのは関節ではなく、傷跡なのです。
予防のためには、手術の後のリハビリが重要。固くなる前に動かすことで、ある程度予防することができます。
では、すでに痛みが出るようになってしまった場合は?
■治療には、ストレッチとマッサージ、鍼
痛みを治すには、この固くなった組織を柔らかくすることが必要。手軽な方法は、ストレッチとマッサージ、そして鍼です。
自分でやりやすいのは、ストレッチ。縮んで固くなった組織を伸ばすことで、痛みの発生を抑えられます。大事なのは、弱く、時間をかけること。
軟部組織は、時間をかければ弱い力でも伸びます。痛みが出る寸前くらいの軽い負荷で、1~2分くらいかけてストレッチします。
マッサージは、何層にも重なった筋肉や皮下組織どうしの癒着を解消します。少しコツが必要なので、治療院で。
それでも取れない、深いところの組織の固さをとるには、鍼が有効です。邪魔している場所に何度も打つことで、繊維の固さがとれてきます。
手術後の痛みも、我慢する必要はありません。まずはストレッチを試して、それでも痛みが残る場合には、間接リリースの施術をお試し下さい。
膝関節痛は、年齢とともに増えてくる症状です。
一般的に、膝痛といえば、すぐに変形性膝関節症かと言われますね。膝の軟骨がすり減って変形する症状です。
しかし、膝痛の原因はそれだけではないようです。
あまり変形していないし、水も溜まっていないのに膝が痛む人も少なくありません。そうした方の治療は、どのようにすれば良いのでしょうか。
■治療は、膝関節の正常な動きを回復すること!
膝関節は、実はかなり特殊な関節です。二つの骨が向き合うという単純な構造ながら、180度近くの屈伸範囲、滑りと転がりを同時に行うという動きは、この関節だけのもの。滑り移動する距離の大きさも、全身の関節で最大です。
問題は、この滑り移動の障害で発生します。
膝関節の曲がりは、すねの骨(脛骨)が後ろに向かって滑ることによって実現されています。
しかし膝の痛む方では、すねの骨が十分に移動せず、途中で止まったり、抵抗が強くなる方が多いのです。これは関節周辺の癒着によるもので、関節が不自然な動きを起こすことで、痛みを発生します。
また、関節の内側や外側の一方だけが移動せず、すねが微妙にねじれて痛みをだしているケースも。
このような症状は、膝関節周辺の癒着を取り、正常に動くようにすることで改善されます。不思議な事に、変形性膝関節症と言われた方でも、関節の動きを改善することで、痛みが軽減したケースは少なくありません。
■自分に合った治療を続けましょう
膝痛には、様々な治療法があります。
いわゆる膝強化運動や、サポーター。整形外科の治療では、痛みを起こしている膝にヒアルロン酸を注射する方法などがあります。
自分なりに試してみて、効果のなかったものはやめ、効果のあったものを続けて使うことをおすすめします。
もし、納得のゆく治療に出会えない時には、膝関節の癒着が原因かもしれません。膝関節の動きを回復させる治療も、選択肢に入れてみて下さい。
「健康を考えるなら、寝る前にはモノを食べないほうがいい」というのは、昔からよく言われること。この根拠として、寝ているときは内臓も休ませる方が良い、というのですが、私はあまり納得していませんでいた。
もし、寝ている時に内臓を休ませるべきなら、食べた後で眠くなったり、空腹で眠れなくなったりするはずがないじゃないか、というのが私の考え。そんなわけで、私はけっこう時間無視で食べてすぐに寝たり、ということをやっていました。
ところが先日NHKの番組「カラダのヒミツ」を見ていたら、寝ている時に食べないほうが良いという説の、根拠になる話が出てきました。
それは、胃から出るグレリンというホルモン。
胃が空になり、エネルギーが足りない状態になると、胃からこのグレリンが出て脳に空腹を伝え、食欲を起こさせる働きをもっているそうです。
このホルモン、空腹感にだけ関わっているわけではありません。実はグレリンが出ると、成長ホルモンが分泌されるという働きも。
成長ホルモンは、言わずと知れた成長に関わるホルモン。子供の場合には身長を伸ばすなど成長に関わりますが、大人の場合には新陳代謝を促進し、回復させる働きをするのです。
一日のうちで、もっとも身体を回復させようとするのは、寝ている時。つまり、寝ている時に空腹であるほうが、成長ホルモンが多くでて、疲れが取れるという考えが成り立つわけです。
ということで、寝ている間に十分に回復するには空腹のほうが都合がいい。
だからって、夜に食べるものの美味しさが変わるわけではないのですが…。
このところ、専門的な話ばかりやっていて良いのかなと思いながらも、続けて仙腸関節の話です。
最近は、仙腸関節の調整をする治療院も増えてきました。もう少ししたら、どこの治療院でも当たりまえに治療するようになるでしょう。
仙腸関節の治療を学ぶ人が、まず困るのが、動きの触知です。
体表から5センチの深さにある仙腸関節が対象ですから、正常に動いているのかいないのか、どの方向への動きが阻害されているのか触知できなければ、治療のはじめようもありません。
この触知、あるコツを意識しているかどうかで、上達の速度に差がでます。そのコツとは「腸骨に幅広く手を当てる」こと。
仙腸関節の動きは、前後、上下の直線だけではなく、縦横の回転も加わった立体的なものです。指先で触れているだけだと、その動きが直線移動によるものなのか、回転によるものなのかわからず、正確な動きが把握できません。
動きを把握するには、情報量が必要です。
携帯にもついているGPS。正確な位置を把握するには、最低でも三つの座標測定が必要とされています。
一つの測定では「円周のどこかにいる」ことしかわからず、二つだと「円周上の二点のどちらか」がわかります。3つの測定結果を付きあわせて、ようやく正確な一点が算出できるのだそうです。
仙腸関節の触知も同じで、腸骨を幅広く(三点以上)触れていれば、立体的な動きの変化がわかります。つまり移動も回転も把握しやすくなるのです。
触れる点は、筋肉・脂肪の少ない腸骨の縁部がいいでしょう。下肢が安定している肢位なら大転子も使えます。
仙骨側も、なるべく広く掌を当てるようにします。両方の骨の動きを立体的に感じられれば、仙腸関節の動きを把握できるようになるのは、すぐです。
前回、身体の下から上に向かって影響が及ぶという話を書きました。この話は、仙腸関節でも有効です。
仙腸関節の動きが、極端に悪い人に出会うことがありますね。また、ある程度、仙腸関節の動きを感じ取れるようになると、仙腸関節の一部だけ(とくに前の部分!)がうまく動かないケースにも、出会うことがあります。
このような時、力任せに動かすのはリスクが大きく危険です。仙腸関節の形状を考え、動きを触知しながら方向を変えて操作することで、こうした場合でも治療を行うことができます。
ところが、方法によっては、もっと短時間で動きを回復することもできます。
その方法とは、股関節を徹底して調整すること。
股関節の可動域を拡げ、周辺の筋肉の癒着・緊張をとると、急に仙腸関節が動き出すことが多いのです。
股関節を動かす筋肉は多くが腸骨から起始していますし、大腰筋のように仙骨の上から起始するものもあります。これも、筋肉を通した連鎖の一つであると考えています。
前回の続きです。
④筋膜、皮下組織の動きによる連鎖
このところメディアでも注目の筋膜。
人間の全身には、筋膜という膜状の組織があります。筋肉一本一本を包む個別の筋膜から、全身を包む、全身タイツのような筋膜まで。
また、皮膚・皮下組織も全身を包んでいます。
この筋膜や皮膚は、身体の動きに合わせて伸びたり動いたりします。例えば肘を曲げると、腕の外側の皮膚や筋膜は、曲がった分だけ伸びたり動いたりしなくてはなりません。
そこで、一箇所の動きが悪くなると、その部分とつながっているところは動きにくくなるのです。
⑤神経の走行による連鎖
前回も書いたとおり、神経は脳から全身の末端までを結んでいます。その途中のどこかで神経に障害が発生すれば、その部分から先の全部が影響を受けます。
当然ですが、この影響は中枢から末端に向かい、その逆はありません。
⑥自律神経を通した連鎖
これは、厳密には連鎖とは少し違いますが…。
前述したとおり、AKA(関節運動学的アプローチ)は、仙腸関節を非常に重視しており、この部分を調整することで、全身の痛みや動きに改善が見られるとしています。
私自身も見たことがありますが、確かに仙腸関節の調整だけで別個所の痛みが減少し、可動性が改善するケースがあります。
その一方で、痛みは減少しても、その場所の癒着などは残っていました。構造にまでは作用していないようです。
とすれば、考えられるのは神経の作用。仙腸関節の痛みや緊張の緩和が自律神経に働き、全身の筋緊張を下げている、または痛みの閾値を上げている(知覚過敏を抑えている)のではないかという推論ができます。
自律神経の作用なら、キーは仙腸関節だけではないはず。どこの治療であれ、痛みや歪みが消えれば、効果は全身に波及することになります。
例えば、八起堂では足の調整であちこちの痛みを減らすことをやります。自分では①の「積み木の原理」のつもりですが、この自律神経の問題もいくらかは作用しているのかもしれません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こうして二回にわたって書いてきましたが、関連を追求するにも、いろんな方法があるわけです。
私がいつも意識しているのは①、②、④。ときどき利用するのが③と⑤で、⑥を意識して使うことはありません。この辺りは、治療する人の感覚や方針、価値観によります。
治療の選択肢は多彩で、自由度があります。あの手この手を使って、より効果の高い治療を模索するのも、治療家の楽しみの一つですね。
どこかが痛い時、痛い部分だけを治療しても、なかなか治りません。身体の各部にはつながりがあり、痛い部分と原因が別の場所にあることが少なくないからです。
こうした現象が起こる理由は、いくつか考えられます。
①「積み木の原理」
下においてある積み木が傾いていたら、どんなに注意して重ねても、上の積み木は傾きますね。同じように、足などに歪みがあると、上にある部分も歪みます。
例えば、足関節の癒着で足裏が傾いてしまっている場合、内外の膝関節の一方に偏った荷重がかかって、膝を痛めることが多いのです。
また、つま先の上がりが悪い人は体重が後ろに偏り、バランスをとるために上体を前に移動、猫背になって腰痛を起こす、というような関連もあります。
こうした膝痛、腰痛の治療には、足関節の調整が欠かせません。
②筋肉を通した連鎖
筋肉は、骨を引っ張ることで関節を動かしています。ところが筋肉は、単一の動きだけをするわけではありません。
例えば母指を動かす長母指伸筋は、尺骨と母指をつないでいます。母指を背屈する時には、親指を尺骨側に引っ張る…手首を外旋させる力も発生しているわけですね。
母指の根元が不調でこの筋肉が強く緊張すると、前腕外旋の力が連続して発生します。それを打ち消すためには、前腕を内旋する筋肉を緊張させてバランスを取らなければなりません。
つまり、一つの場所の不調は筋肉の緊張を作り出し、その筋肉とバランスをとる筋肉、さらにその筋肉とバランスをとる筋肉と、連鎖して不調が伝わると考えられます。
この連鎖は、末節から体幹部に向かうことが多いです。
理由の一つは、体幹部に近い筋肉の方が微妙な調節が不得意で、歪みに適応しきれないからではないかと考えています。
もう一つ。筋肉の末端側は骨と一点で接していますが、体幹側は幅広く、あるいは二頭筋、三頭筋のように複数の骨にまたがっていることが多いです。その骨の間で不均衡が起こっている可能性もあります。
③神経の混線による連鎖
私達の身体は、神経を通して脳とつながり、感覚を伝えたり、運動の司令を受け取ったりしています。ところがこの神経、混線することもあります。
ある場所に不調があったとして、感覚神経の伝えてくる場所と、運動神経の向かう場所がズレていれば、当然おかしな位置が緊張したりしますね。混線の起こりやすい、神経の枝が近いところで不調が連鎖することになります。
人間の感覚は場所によって精度が違います。指先ではミリ単位かそれ以下の精度でわかりますが、肩や背中は鈍く、5,6センチのズレがわからないことも。肩こりや腰痛が発生する理由の一つは、こうした感覚の鈍さが、感覚・運動神経のズレを多発させるからではないかとも考えられます。
太極拳やヨガなどが健康に良いのは、動作を通してこうした感覚のズレを修正してくれるからではないかと思うのですが、どうでしょうか?
先日いらした患者さん。足の付根に強い痛みを訴えて、来院されました。股関節に痛みといえば、まずは変形性股関節症を疑います。
股関節をいろいろ動かして、音を確認。これで骨に響くような摩擦音があると、変形性関節症の可能性もありますが、そうした音は聞こえませんでした。
動かしているうちに、股関節よりも下、膝関節に違和感を感じました。動きが鈍く、完全伸展しても僅かに曲がりが残って、一直線にならないのです。
これは膝の狂いが股関節に及んでいるか、と膝関節をTAMで治療しました。
膝関節周辺の皮下組織の癒着を解消、ついでずらし法、ねじり法で関節包・靭帯の癒着を解消して、伸びるようにしました。もちろん、足関節の歪みも治療します。すると、その場で痛みが軽減しました。
二週間後の再来院でも「股関節の痛みは楽になった」と、普通に歩いていらっしゃいました。
■影響の向かう方向
痛みや不調の原因は、いつも痛みのある部分にあるとは限りません。別の部分からの影響で、痛みが出ていることが多いのです。ですから、治療も一部だけではなく、関連する部分から治療することで効果を上げることができます。
八起堂治療院では、膝の治療をする時には、足関節を治療します。肩を治療するには肘や、手首を治療します。末端から中心へ向かう方向で影響が及ぶことが多いからです。
東洋医学でもこうした傾向はあって、手首周辺に重要なツボ(原穴)があったりします。
その一方、私が昔学んでいたAKA(関節運動学的アプローチ)では、仙腸関節(骨盤)から、全身に影響が及ぶとして、仙腸関節の治療を再優先にしていました。
筋肉の硬結を狙って鍼を打つ、トリガーポイントアプローチでも、トリガーポイントは、痛みの場所より上にあることが多いとしています。
次回、こうした上から・下からの影響について、もう少し書きます。
かのアインシュタインは言ったそうです。
「同じことを繰り返しながら、違う結果を求める。これが狂気だ」
同じことをやれば、同じ結果が出る。一度やってみてダメだったことは繰り返さず、どこが悪かったのかを考えて試行錯誤すべき、という意味です。
なんでこんなことを言ったかというと、時々患者さんからこんな話を聞くからです。
「◯◯の治療に、週3回、1ヶ月通ったけど、何の変化もなかった。でも、根気よく通って下さいと言われた」
…よく我慢されたと思います。
適切な治療なら一回目、遅くとも三回目までには、何らかの効果が出るものです。三回やっても全く効果が見られない場合は、その治療を続けても治る可能性はきわめて低い。
言いにくい話ですが、漫然と同じ治療をしながら、自然に治るのを待っているだけ(時間がたてば、勝手に治る症状もあるから)の治療院もあります。だから、三回通ってダメなら見切りをつけて、新しい治療院を探すのが、正しい方法。
長く通い続けて欲しいというのは、治療院の営業上の問題。患者がそれに付き合う必要はないのです。
先日の、WHOの発表
「一日に50グラムの加工肉は、大腸ガンの可能性を18%増やす」
は、あちこちで波紋を呼んでいますね。「もうソーセージやベーコンを食べられなくなる!」と嘆く人もいるとか。
肉食の過多がガンを増やすことは、昔から知られている事実です。今回の統計も、おそらく事実でしょう。
事実ですが、それほど気にしなくてもいいと、私は思っています。
■肉食が増えて寿命が伸びている?
例えば、日本人の食生活は、戦後一貫して肉食が増えてきています。その一方で、寿命はどんどん伸びている…。おかしいですよね? これは、人間の死因はガンだけではないからです。
江戸時代や明治、大正時代、ハシカやインフルエンザが流行すると、万単位の死者が出たものでした。それほど怖い病気だったのです。
ところが、高度経済成長の頃から、ハシカやインフルエンザで死ぬ人は、急に少なくなりました。
もちろん、予防接種や薬の進歩もあるでしょう。しかし一番の要因は、タンパク質の摂取量が増加して免疫力が上がったことによるものだと言われています。食生活に肉が増えるに従い、病気で死亡する率が下がったのです。
また、タンパク質は筋肉の元でもあります。不足すれば当然体力が下がり、寝たきりのリスクが増えます。現在でも、肉の摂取量が多い高齢者の方が活動性が高く、衰えにくいことが知られています。
つまり寿命への影響を全体的に見ると、手軽なタンパク質の摂取源である加工肉が、リスクばかりでないことがわかります。
■それでもリスクを減らすなら、他の方法で!
もちろん、同じだけのタンパク質を魚や大豆で摂るほうが、全体としてガンのリスクは下がるはず。でも簡単ではありませんよね。
それなら、他の方法でリスクを下げればいいのです。
例えば、野菜や食物繊維を多く摂ることで、ガン全体の発生率が下がることはよく知られています。合わせて塩分を減らせば、ガンだけでなく、高血圧も減らせます。
また、日常的に軽い運動をしているとガン・高血圧だけでなく、糖尿病のリスクや認知症のリスクまで減らせることがわかっているのです。
こうした方法を1つか2つ始めるだけで、充分に加工肉のリスクを打ち消すことができるでしょう。
あれを避ける、これを避けるよりも、こうした方法で、トータルのリスクを管理する方が、結果として楽しみが多く、元気で長生きできるのではないでしょうか。
イラストは「かわいいフリー素材集いらすとや」から
お風呂や水泳の時、耳に水が入ったらどうしますか? 昔は、水が入った方の耳を下にして、ジャンプしろなどと言われていました。この方法、手間がかかるわりに、効果はイマイチ。
ところが先日、そんな耳の水を簡単にとる方法を知りました。
それによると、耳に入った水が抜けないのは、少ない量の水が、表面張力で張り付いているからだというのです。つまり、ある程度以上の量になれば、簡単に流れ出してくるとのこと。
シャンプー時に、耳に水が入ったのでためしてみました。
水音がする方の耳を上にして、お湯を流し込む。いっぱいになったら、下に向けて、水を流し出す…と、見事に水が抜けました!
あまりにも簡単なので、嬉しくてわざと何度も水を入れては抜きを繰り返したくらい。
本当に便利です。
さて、その数日後、妻が
「耳に水が入った…」
と言い出しました。私は先日の話を大威張りで語って聞かせ、すぐに治してやると豪語しました。水道から汲んできた水を耳に…すると
「うわっ、めまい、めまいがする!」(@_@)
と慌てる妻。
おかしい。おかしいけど、どこかでこんな話を聞いたような気が…。
「そういえば、耳に冷水を入れると、めまいがするって、学校で習ったな」
「それを先に言ってよ!(怒)」
怒られてしまいました。 (^^ゞ
ちなみにこの検査、温度刺激検査と言います。耳に冷水を入れて、内耳の機能を調べる検査で、強いめまいが出るほうが正常(継続時間は二分以内)。
みなさんは、お湯でどうぞ。
「腰痛は、二本足で歩く人間の宿命だ」と言われることがあります。もともと4本足で歩いていた動物が、立ち上がったために内臓や骨格に負担がかかっているというのです。
ただ、この言葉は事実ではないようです。
以前、NHKが腰痛について調査した番組で、アフリカの草原に住む狩猟民族には、日本で言うような腰痛の人はいませんでした。たまに腰が痛いという人に会うと「木から落ちて、腰を打ったよ」だったり。
この人達は、一日に数十kmも歩くような狩猟生活を行っていました。二足歩行の時間は我々よりもずっと多いのですから、二足歩行自体が、腰痛の原因ではないことを示しています。
■立っている時の、腰の負担は少ない
腰の椎間板にかかる負担を計測した結果も、それを肯定しています。椎間板にかかる負担が一番少ないのは、寝ている時でした。これは当たり前ですね。
次に負担が少ないのは、なんと立っている時。腰椎が直立しているために、筋力を使う必要が少なくなり、椅子に座っているよりも楽だったのです。
現代の我々の生活は、座っていることだらけ。のみならず、もっとも腰に負担がかかる前かがみで作業することも少なくありません。つまり腰痛は進化の失敗ではなく、文明病だといえるのです。
■腰痛の予防には、足を鍛えよ!
もう一つ、腰痛を防ぐ上で必要なのは、足の力。
骨盤は、3つの骨で出来ていて、その柔軟性で歩くときの衝撃を吸収します。足の筋力が骨盤の両側で働いて、体重を支えているのです(図上)。
しかし足の筋力が弱ると、骨盤を引く力が弱まり、体重を支えきれなくなります。骨盤の中央が下がり、全体の形も狭くなってしまいます(図下)。全体が四角い形になることから、四角骨盤と呼ぶ人もいます。
この場合、左右の腸骨に支えられている仙骨は下がり、ズレやすくなります。これも、腰痛の一つの原因(私が腰痛の方を治療するときにも、まず下がった仙骨を持ち上げる作業をします)。
こうした骨盤の不調を予防するために、必要なのが足の力。
前述の狩猟民族の方々も、毎日長い距離を歩いているからこそ、腰痛と無縁でいられるのです。
一般的に腰痛体操というと、腹筋や背筋を鍛えることがメインになっています。それも間違いではありませんが、同時に足を鍛えることを忘れてはなりません。ウォーキングなど、足の筋肉を鍛える習慣も、腰痛対策には必要です。
まさに、足は健康の要、なのです。
今回の表題、一般の人にとっては
「腰がねじれるなんて、アタリマエじゃないか?」
と思われるかもしれません。
でも腰の骨、腰椎を見たら、きっと疑問に思うはず。
腰椎の棘突起(背中から触れる出っ張り)は、右の図のような構造になっています。下の腰椎に、左右から挟み込まれていて、横への動きは制限されています。人体の動きで言うと、前後左右に曲げることはできても、ねじりは制限を受けます。動けるのは、椎間板がわずかにズレる分だけ。
私も何年か前は、そう考えていました(八起堂通信「腰はねじれない」)。 しかし、実際に人が腰をひねるのを見ていると、もっとねじれているように見えますね。では、どうしてそうなるのでしょうか?
答えは、脊椎のカーブにあります。
腰椎は下方に行くほど前に傾いています。つまり、斜めになっているわけで、この腰椎を左右に曲げると、斜めに動く分だけ上半身の方向が変わるのです。
傾きの分を他の腰椎と骨盤で相殺すれば、回転運動だけが残って外見上は捻れの動きが発生することになります。
実際のねじれは少なくても、脊椎のカーブと運動の組み合わせで、大きな見かけのねじれを作っているわけですね。
もしも脊椎が一直線だと、このようなねじれは作れないわけで、人体というのは本当に良く出来ていると思います。
これに気づいてから、腰痛などの治療手技がより効果的になりました。人体への理解が一歩進むと、その分だけ治療も進みます。まさに、知識は力です。
先日、ブログを読んだ方から捻挫についての相談メールを頂きました。ご相談は「捻挫のあと、一ヶ月しても痛みが残っているが、どうしたらよいか」というものでした。
・捻挫とは?
捻挫とは、靭帯が無理に引き伸ばされて傷ついた状態。
一般的には、数週間で痛みが消えることが多いのですが、痛みが長引く場合には、いろいろな原因が考えられます。
①まだ修復途中の可能性
まず、まだ完全に治っていない可能性。
傷めた個所に、腫れ・むくみなどが残っていないかを確認します。腫れ・むくみは、損傷した組織を修復するために血液・リンパ液が集まっている状態です。
腫れたりむくんだりしていれば、まだ治っていないと考えて、安静にして治るのを待つべきです。
この段階で動かし続けると、何度も損傷と修復を繰り返すので、ずっと腫れて痛みが続くことになります。また、次に説明する、緩みや癒着の原因にもなります。
②緩んでいる・固くなっていることで出る痛み
腫れがなく、動かしたときだけ痛むのは、関節が固くなっていたり、緩んでぐらつくことが原因になっていることが多いです。
捻挫が治るときに動かし過ぎると、組織が伸びたままになり、関節がグラグラすることがあります。
逆に、靭帯が癒着(貼り付き)を起こした場合などは、動く範囲が狭まるために、引きつれて痛みます。
左右で動きを比べ、動きの大きさを確認して下さい。
捻挫側の方が明らかに動きが大きかったり、グラグラして安定が悪い場合は、伸びた靭帯がまだ締まってきていないと考えます。
その場合は、動かすと靭帯が引き締まるのを妨げることがあるので、しばらく安静にして、靭帯が落ち着くのを待つことになります。
動きが小さかったり、動きに固さを感じる場合には、靭帯が固くなっているか貼り付いているかなので、TAMストレッチを行うか、通常のストレッチで可動域を確保することになります。
それでも回復できない場合には、治療が必要です。ご相談下さい。
腰痛は、腰の痛み。しかし、その原因が腰以外にあることも少なくありません。
先日、慢性腰痛の患者さんの治療をしました。腰の右側に、強い痛みがあるとのこと。試しに動いてもらうと、上体を右に倒すことが出来ません。右側の仙腸関節が、全く動いていないのです。
腰痛治療の基本は、腰の可動性を改善して、腰部筋肉の緊張を減らすこと。腰椎と仙腸関節の固定をゆるめ、足の各部を調整したところ、曲げられる範囲が広がり、痛みもかなり減りました。
ところが、動いてもらいながら観察すると、右足のふくらはぎあたりに、妙な緊張感が見えます。足を調べたところ、外くるぶしの周辺に癒着を発見。治療をしました。
腰を動かすと、曲げられる範囲が大幅に拡大。左右の差が、殆ど見られないほどで、ご本人も驚いていらっしゃいました。もちろん、痛みも大幅に減少しました。
どうやら、足関節が、腰痛の原因の一つだったようです。
外踝周辺の癒着によって、下肢外側の皮膚・関節の動きが悪くなり、膝関節の運動を制限。バランスを保つために、股関節周辺の筋肉が過緊張を起こして、仙腸関節を止めていたものと思われます。
八起堂治療院
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