治療と「感じる力」①

 治療の後はいつも、患者さんに
「動いてみて下さい」
 とお願いします。

 肩をぐるぐる。腰を曲げる。足踏みをする。
 そうした動きを見て、不自然な動きが残っていないかを確認。残っていれば、

「肩の上に、もう少し貼り付きが残ってますね」

 と、仕上げの施術をします。

 

 そんなとき、患者さんに、
「なんで見てるだけで、悪いところが分かるんですか?」
 と尋ねられることがあります。

 慣れもありますが、キーになっているのは、誰でも持っている、ある能力です。

■他人の動作を感じる、ミラーニューロン

 脳科学の発展は急速で、毎年のように新しい発見が続いています。
 近年の発見の一つが、ミラーニューロン。他人の行動を見るだけで、まるで自分が動いているかのように活動する脳細胞です。

 例えば私が、手を挙げている人を見たとします。
 すると、ただ見ているだけの私の脳で、手を上げているかのようにミラーニューロンが活動するのです。

 他人の動作を、鏡に写すように脳で再現しているところが、ミラーニューロンと呼ばれるゆえんです。

 

 ミラーニューロンが何に役立っているのかについては、諸説あります。有力な候補の一つは、共感能力。

 たとえば仲間の体調が悪い時、疲れているな、調子が悪いなといったことを、あたかも自分のことのように感じることで、助け合うことができると考えられています。

 

■動作の共感で、感じ取る

 知っている人がだるそうにしてたら、
「疲れているのかな、しんどいのかな」
 と思って、声をかけますね。

 私たち治療家も、やっていることは同じ。
 患者さんの動作を見て、それを脳内で再現することによって、どこに力が入っているのか、どこが不自然なのか、自分の感覚を通して実感できるわけです。
(治療家によっては、患者さんの痛みを見ているうちに、自分の身体の同じところが痛くなってくることもあるそうですが…)

 そんなわけでミラーニューロンは、誰でも持っている「感じ取る」能力です。人によって精度が高かったり低かったりするだけ。

 

 ただし、精度高く感じ取るためには、ある条件が必要です。
 その条件については、次回。

お知らせ

今年はお盆休みを取らず、カレンダー通りの営業をします。

院長 池浦誠

1969年生まれ。
2003年に鍼灸師・マッサージ師の国家資格取得。
2005年に開業。同年関節リリース技法、TAM手技療法を発表。
2017年に技術指導DVD、「関節リリース5テクニック」を上梓、指導にあたっている。

八起堂連絡先

奈良市西大寺新池町3-10
電話 080-3112-8738
hakkidou.tam@gmail.com

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ブログ最新記事

2018年

7月

25日

AIから見る上達論

 少し前、NHKで「人間って何だ?」というAI(人工知能)関連の番組をやっていました。その中で出てきた「過学習」の概念が面白かったんですよ。

 AIに学習させるときにはディープラーニングという方法が用いられます。これは、AIに大量のデータを読み込ませ、分析させることで、学習をさせる方法。複雑な状況から結論を引き出すのが得意で、ものによっては人間以上の能力を発揮することもあります。

 例えばAIに「イヌとは何か」を認識させるためには、たくさんの犬の写真を読み込ませ、判断させます。それに対して正解・間違いのフィードバック(結果を見ての修正)を何百万回も繰り返すうち、AIは自分で必要な条件を覚え、犬の画像を見分けられるようになります。

・過学習…丸覚えは使えない
 AIに学習させる上で問題になるのが「過学習」です。わかりやすく言うと、データを丸暗記しすぎて、応用力がなくなること。

 例えば、データの中に黒い柴犬の画像があったとします。AIはその画像を分析し、「毛が生えている」とか「牙がある」といった犬の判断に重要な特徴を読み込みます。しかし同時に「色が黒い」とか「耳が立っている」というような、重要でない特徴をも読み込むでしょう。

 もしAIが、重要でない情報まですべて使って判断したら、ゴールデンレトリバーは、黒くない、耳が立っていない、という理由で「犬ではない」と判断されてしまいます。

 ディープラーニングを成功させるには、どの情報が重要で、どの情報が重要でないか、AIがわかるようにプログラムすることが必要。研究者は、その対策に頭を絞るのだそうです。

・正解率を高める試行錯誤
 では、どうやって重要性を認識させるか。代表的な方法の一つが「ドロップアウト」です。大まかに言うと、判断に使っている特徴のうち、いくつかをわざと使わなくすること。

 たとえばA、B、C、Dという4つの特徴を判定に使っているとします。Aを使うのをやめて、B、C、Dだけで判断を行い、それでも正解率が高ければ、Aは重要ではないとわかります。逆にAを使わずに判断を行って正解率が下がれば、Aが重要だとわかりますね。

 こうして使う情報、使わない情報をランダムに入れ替えながら試行錯誤することで、より正確な判断ができるようになってくるというわけです。

・上達のための試行錯誤とフィードバック
 ディープラーニングは人間の学習をもとにしたものですから、こうした原則は人間でも同じです。丸覚えルーチンワークでは、何年繰り返しても上達しませんし、試行錯誤していても、結果が出るまでの間隔が長ければ、学びは遅くなります。
 これは技術側の問題でもあって、技術を要素分解しやすい技術ほど、またフィードバックが早い技術ほど、学びやすいことを示しています。

 ちなみに、TAM関節リリースは、要素の分解が明確で、結果がすぐ出る技術です。…と最後に我田引水(笑)

2018年

7月

08日

オスグッド病の発生・再発予防のコツは…尻で跳ぶ!

オスグッド病を起こしやすい膝関節の構造

 

 オスグッド病の正式名称は、オスグッド・シュラッター病。スポーツをする十代の少年少女に多く発生する、軟骨の炎症です。

 ちょっと膝の構造を見てみましょう。長い骨を動かすのは、端についた一本の腱だけ。この腱を引っ張って、骨を動かすところを想像してみてください。すごく大きな力が必要な感じがしませんか? 長い棒の一番端っこを持って動かしている感じ。かなり大きな力が必要です。

 その大きな力が、腱と骨の接続部に繰り返しかかることで、成長期の軟骨が損傷し、炎症を起こすのがオスグッド病なのです。

 

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2018年

4月

06日

肩甲骨を上手につかうには、鎖骨を意識するといい

先日、水泳をしている方が、足の治療でいらっしゃいました。
足の方は関節リリースで治療したのですが、その際、水泳で肩甲骨をうまく使えないとおっしゃいます。

■肩甲骨の動きは、鎖骨で意識する。

肩甲骨は肩にある平たく大きな骨です。
上下左右、回転運動を行って、腕の動きを補助しますので、上手に使えるかどうかで腕の可動範囲は大きく変わってきます。とはいえ、見えにくい場所にあるため動きを意識しにくい骨でもあります。

そこで、鎖骨。肩甲骨は鎖骨によって胴体につながっているので、鎖骨を意識すれば、肩甲骨の動きをイメージしやすいのです。

例えば、右の肩甲骨を動かすとしましょうか。
首のすぐ下にある骨のへこみ。これが鎖骨の始まりです。その部分に左手の親指を当て、人差し指で右側の鎖骨に触れます。これで、指先で鎖骨の動きを感じることができます。
そのまま、右肩を上下や前後に動かしてみましょう。鎖骨が動いているのがわかると思います。

■鎖骨から先が、腕だと考えてみる

鎖骨の動きがわかったら、次は腕を動かします。ただし、腕と一緒に鎖骨が動くように意識してみてください。腕と鎖骨が一緒にうごくことで、腕の動く範囲が大きく広がっているのがわかると思います。
もっと言えば、鎖骨から先が腕だと思ってください。始まりの場所が首の下だ、と思うだけで腕の動きが変わってくるはずです。

 …というようなことを、お客様に語って、動かしていただくと
「そうですね、ほんとに大きく動きますよ!」
 と喜んでいただけました。

「そうでしょう、そうでしょう」
 と言いながら、自分でもやってみたら、私の腕も、いつもより大きく動きます。偉そうに言っていながら、私も肩甲骨が使えていなかったようです。
 思ったより使えていないのが、肩甲骨。一度試してみてください。