今、奈良の国立博物館で「快慶展」をやっています。
奈良には国宝・重文級の仏像がゴロゴロしていますが、その中で一番好きなのを選べと言われたら、迷わず東大寺南大門の金剛力士像を選びます。この像を作った中心人物の1人が快慶です。
快慶の特徴は、写実とデフォルメの融合した迫力。
今回の快慶展では、様々なバリエーションの像を比べることが出来て、興味深いものでした。
ある高僧をモデルにした像など、顔のシワから口元の微妙な歪みまで、モデルの性格がはっきりわかるほどの描写力。いかに観察力に優れた仏師だったかがわかりました。
いくつもの像を見ているときに、妻が言いました。
「仏様って、前のめりだね」
なるほど、横から見ると直立していません。角度にして10度くらい、前に傾いて立っています。
体の傾きで姿勢が変わる
もともと仏像は高い場所に置くことが多く、低いところから見る人に視線を合わせてあると言われています。しかし、それなら顔だけ下に向けても良さそうなものですね。
安易にそうしないのが、快慶の描写力。
実際にやってみるとわかるのですが、直立した状態で顔だけを下に向けるのは、不自然です。一緒に胸が凹み、肩が閉じてしまうのが自然。
そのリアルに合わせて作ると、仏像の姿勢が崩れ、ゆったりした感じが失われてしまいます。
不自然でない形で目線を下に、それでいて身体は伸びやかにしようとすれば、全体を前に軽く傾けるのが正解なのです。
つま先重心で、美しい姿勢に
これはもちろん、人間にも言えることです。
胸や背中を伸びやかにしようと思えば、全身を少し前に傾けるのが正解。かかとに重心をかけず、つま先に近いところに重心を持ってゆくだけで、腰が伸び、胸が開いてキレイな姿勢になります。
足の治療を終えたときに
「目の前が開けた気がする!」
とおっしゃる方が多いのですが、それはこの姿勢の変化によるものです。足の歪みがとれることで、自然に軽い前かがみの姿勢になるので、視界が変わるのです。
猫背になりにくくなるので、腰痛や肩こりの予防にも有効です。
快慶展は、今週いっぱい。お近くの方は、ぜひ御覧ください。